サンタクロースが多くは両親であることに気がついたのはいつだっただろうか?

人それぞれだとは思うが、寂しいようなほっとしたような…

そんな気分になったのは覚えている

数々の中でもどうしてもサンタさんがかなえてくれなかったプレゼントがあったのをふと思い出した

それは…

 

 

 

 

 

〜くつしたのぷれぜんと〜

 

それは普段とは少し違えどそれでも日常からははみ出ない日のはずだった

クリスマスの朝、とはいえいつものように起き、いつものように…

(眠い…)

いつものように布団でまどろむのであった

(…ん…)

寝返りを打ち、視界が少し開いたところで何かを見つけた

…靴下だ

しかも、でかい

アニメやらで欲張りな子供が一杯プレゼントをもらうとでもいいそうなでかさだ

口が少し開いている

「…よくわからんが閉めておくか」

手を伸ばし、我ながら手早く靴下のクセについていた口の紐で縛る

どうやらリュックっぽい使い方ができるらしいとおぼろげながらに感じた

当然…中で何かがもぞもぞ動いている事には気が付くほど覚醒していなかった

 

 

 

そして、しばし後

『うぐぅ〜。さむいよぉ…つめたいよぉ…』

どこからか声が聞こえてきた

目覚まし代わりにしては妙な現象だ

薄っすらと目を開くと枕に近いところに巨大な靴下、
いや、靴下の形をした袋があった

しかも中身がもこもこうごめいている

「…は?」

『うぐぅ〜、たすけてぇ…』

中から聞こえてくる声に覚えのあった俺は寝起きでふらつく足元に注意しながら
靴下を模したそれの口を開く

「うぐぅ…」

靴下の中で寒そうに震えるのはなぜか赤いリボンを体中に巻きつけただけで
後は子供らしいくるぶしまでの靴下以外、素っ裸の従兄妹のあゆだった(現在小学生…のはず)

…って

「あゆっ!?」

「うぐぅ、祐一お兄ちゃんっ」

俺が靴下から引っ張り出すのと飛び出してくるのとどっちが先だっただろうか

混乱しつつも、とりあえず暖房をONにする

俺の服を適当にかぶせつつ、落ち着くのを待つ

…状況的に、寝ぼけつつ俺が口を閉じたせいで靴下から出られなかったに違いない

…むぅ

1:あゆの服を探す

2:俺が暖めてやろう

…1だろ

周囲を見渡せば部屋のわきに隠れるようにして
あゆが着ていたと思しき下着や服があった

…下着か

俺が持つのもどうかと思ったが、致し方なく
白のまだまだお子様雰囲気ただようそれらをあゆの元に持っていく

そして着替えさせる事3分

 

「で?」

「え?」

にぱにぱと手のひらを閉じたり開いたりしていたあゆが不思議そうな顔で俺を見る

「どうして靴下っぽいアレに入ってたのかを聞きたいのだが?」

「うぐぅ…えっとね、今日はクリスマスだから…」

確かにそうだが…

「それはわかるが、どうしてあゆがこんな中に、しかも半裸なんだ?」

実際はもう半裸というより裸同然だが

「えーと、…プレゼント…」

「プレゼント? クリスマスのか?」

コクっとうなずくあゆ…

…ん?

「もしかして、あゆがプレゼント、って言いたいのか?」

「…うん。ダメ?」

ダメっていうか…

「俺はあゆは物じゃないから少し違うと思うが…」

「うぐぅっ、ボクはお兄ちゃんのものだもんっ! むぐっ」

危険な事を口走るあゆの口を慌ててふさぎ、抱きかかえる

…近所に聞こえてないだろうな…

「理由はわかった…と思う。で、なんで裸なんだ?」

「うぐぅ…女の子は自分をプレゼントするときはこうするものじゃないの?」

どこでそんなことを知った…幼き従兄妹よ

幼いって言っても10も離れてないが…

俺の腕の中でもごもごうめくのはあゆ、月宮あゆ

俺の前住んでいた土地にいた世界の遺産研究をする両親を持つ可愛い親戚…そう

「それは置いておいて、一番の問題だが、あゆがなんでこっちにいるんだ?」

ここは俺の引越し先、親の都合で土地を離れて居候しているのだ

あゆがここにいるはずはないのだが…

「うぐぅ、えーと…えーと…」

あゆはなにやらごそごそと服のポケットを探し始め、
一通の封筒を俺に手渡した

なになに…

『祐一君へ。娘を頼む。私たちは研究のための旅行に行くので。
追伸。昔君の両親が、妹が欲しいとクリスマスに頼まれた、と困っていたのを
思い出したので娘をプレゼントだ。メリークリスマス!』

…はぁ?

旅行でうんぬん、はわかった

あゆさえ了承すればそれはいいだろう

…だが、いいのか、おじさん…そんな気軽に…

あゆに視線を移せば『お兄ちゃんだよ〜』と目をキラキラさせている

「とりあえず秋子さんに挨拶だな…」

あゆを引き連れ、部屋を出る

 

 

 

「…うぐぅ」

「ボクの真似してどうしたの?」

「いや…少し…な」

秋子さんは悩む様子もなくあゆの滞在を了承し、
しかも話しによればわざわざおじさんたちが
あゆをここまで車で運んできたあとの事であり、
秋子さんに挨拶してから俺の部屋で服を脱いだ上、
アレに入っていたというのだから世の中わからない

しかも…

「…幼な妻…か」

「うぐぅ、そーみたいだねぇ…」

あゆはまんざらでもない、というかすっごい嬉しそうである

そう、文字通りプレゼントだったのだ

おじさんたちの旅行、年単位らしい

その上、あゆが前前から…ということで俺に預けに来たのだ

妹というより一女性として

「気晴らしに散歩にでも行くか…」

「うんっ」

ぱたぱたとあゆは俺に駆け寄り、はいっと手を差し出す

「ん…」

ここに来るまではほぼ毎日そうしていたのだから
俺も今更照れたりなどはしない

…周りの人々はそうではなかったようだが

家を出るときの秋子さんや、その娘である名雪の微笑みはどこか違った

 

 

「うぐぅ、こっちは寒いんだね〜」

あゆが俺とつないでいないほうの手に息をはぁーとふきかける

「ああ、雪も積もってる時期が長いみたいだぞ」

あゆと一緒に歩く道もすでに一面銀世界だ

俺たちの地元ではこうはいかない

「でも、雪だるまさん一杯作れるね♪」

腰からみぞおち程度しかない背のあゆが見上げるようにして笑う

「寒いから遠慮する」

「…お兄ちゃん変わってない…いつもの祐一お兄ちゃんだね」

何がおかしいのか、くすくすと笑いながらあゆは珍しそうに雪景色を眺めていた

「荷物は明日届くのか?」

「うん。今日の分はリュックに入れてきたんだよ」

あゆの声につられるようにしてその背中を見る

今は背負っていないその背は、俺から見てもまだ幼くて、
親の温かみというものが今も必要なんじゃないかと感じさせる

でも、あゆはあゆなりに成長していたのだった

「胸と背丈はまだまだだけどな…」

「え? なに、お兄ちゃん?」

「いや…なんでもない。あゆは今、いくつになったんだっけか…」

ごまかすようにして放った言葉が衝撃を産むとは俺はそのとき想像もしなかった

「え、もう中学生だよ?」

な…

「なにぃっ!?」

「…うぐぅ、なーんで驚くのかなあ〜。お兄ちゃ〜ん?」

う”…

「い、いや…ずいぶん大きくなったと思ったらそういうことかぁ…しばらく会ってなかったからなあ」

とにかくごまかすべきである

いまだに小学生と思っていたなどということは…

「うぐぅ、気になるけどお兄ちゃんがそう言うなら…」

が、目は笑っておらず、結局到着したての商店街でたい焼きを購入する事になった

 


「トナカイさんだ〜」

「鹿だな」

ぶらぶらと歩く商店街

どこの店もクリスマス商戦で急がしそうである

道を行く人々もどこか浮かれて、騒々しい

やはりというか、なんというか…カップルも目立つ

あゆはと言えば、ファンシーショップの店頭にある大きな鹿の、
やはり赤鼻のトナカイぬいぐるみを前に目を輝かせている

小雪のちらつき始めた中、道を駆けるあゆはとても幻想的で、目を奪われそうになる

「あゆはクリスマスプレゼントはもらったのか?」

「え? お父さんたちから?」

ぱっと振り向き俺を見上げるあゆ

「ああ、そうだ」

旅行に行ってしまうのだ。奮発したに違いない

「うぐぅ、もらうにはもらったよ…。物じゃないけど」

「物じゃない? 風情なく現金でももらったのか?」

少しうつむき気味のあゆを見つつ、伸ばされた手を握る

「えーと…お兄ちゃんのお嫁さんになっても良い権」

「…は?」

「うぐぅ、だからぁ…その…お兄ちゃんと一緒に暮らしたい、って言ったから…」

「そうしたら、長期旅行に置いていかれた、と」

コクッとあゆは頷く

…なんてこった

「あゆはそれがプレゼントでよかったのか?」

「うん。夢だったもんっ」

正面からきっぱりと言われては何も言えなかった

「…風邪、引くぞ」

あゆの頭に少し積もった雪を払ってやり、散歩を終えるべく歩き出す

 

 

お嫁さん…か

俺は地元にいた頃を思い出しながら歩いていた

小さい頃から、というよりはあゆが産まれた時には
すでにあゆの両親とは付き合いがあった

旅行がちなあゆの両親はよくあゆを預けにきていた

結果的にあゆが俺になつくのは当然だったのかもしれない

恋に恋する…とはよく言ったもので、あゆが本当に俺を…想ってくれてるのかはわからない

しっとりと湿るつないだ手が冷えるように
あゆとの関係が冷える事はないといいな、と何とはなしに考えるのだった

 

 

〜水瀬家〜

「じゃあこれからよろしくね、あゆちゃん」

「うんっ、名雪お姉ちゃんっ♪」

名雪にしてみれば妹ができたのと同じなのだろう

それはあゆにとっても同じだった

そんな二人を横目に俺は秋子さんに話し掛ける

「あの…あゆのことですが…」

「ええ、本気みたいですよ?」

どうやら秋子さん宛てにも手紙はきていたらしく、
ざっと見た中身には本気で俺とあゆをくっつけるつもりらしいことが書いてあった

とんだクリスマスプレゼントなわけだ

今日は歓迎とクリスマスが一緒ですね、とにこやかに秋子さんは笑い、
その日の夕食のテーブルには豪華な料理が並ぶ

…く、俺の腹よ…生き残れよ

ここで男手は俺一人、自然と料理も多くは俺が処理するのだ

良い事なのか悪いことなのか、秋子さんの料理がおいしいために
ついつい食べ過ぎてしまうのだ

 

 

 

「うぷ…」

予想通り、かなり限界である

まあ…しばらくぼけっとしてれば多少はいいだろう

ノックの音はそんな俺の耳に届いた

誰だろうか…

「あゆじゃないか、どうしたんだ?」

「うぐぅ、今…いい?」

「ああ、かまわないぞ」

あゆを部屋に迎え入れ、ドアを閉める

適当に座るように言って、俺はまた楽な姿勢に戻る

「うぐぅ、大きなおなか〜」

笑いながらあゆは俺の腹をすりすりと撫でる

「こら、くすぐったいぞ…」

「うぐぅ、おもしろいんだも〜ん」

何度も撫でてくるあゆを少しムキになって捕まえるために抱きかかえる

「うぐぅ…」

「でも、見ない間に大きくなったな、あゆ」

「…うん」

あゆと最後に会ったのは一年以上前

こちらに来てから1年はたったのだから当たり前だが…

「ちゃんと食べてるのか? まだ所々幼そうだが」

などと意地悪な発言をしてみる

「うぐぅ、ちゃんと育ってるもんっ」

恥ずかしそうに抱きかかえている俺の手を自分の胸元に持っていくあゆ

「あゆ、そういうことは簡単にする事じゃないぞ…?」

「うぐぅ、お兄ちゃんだからいいんだもん」

顔を真っ赤にしながらそう俺にあゆはつぶやいた

「…あゆ、プレゼント…本当にいいのか?」

手を離し、あゆに向かい合う

「…ボクがプレゼントじゃ嫌…かな?」

あゆの言葉は俺の想像とは違った

どうやら俺があゆをプレゼントとしたのを気に入らないのか、と考えたらしい

「いや、俺はあゆがおじさんたちからのプレゼントはそれでよかったのかと心配になってな」

「うぐぅ、それは大丈夫だよ…ずっと…夢見てた。
こっちに引っ越しちゃってからも、同じ空を見て、同じ時間を一緒に生きてる
でも…一緒にいたいなって…後ろについていくだけじゃなくて…いつか、
近くになって手をつないで…そしてお兄ちゃんの横に立っていたい。大切な人として」

しょうが…いや、中学生にここまで言わせる想いとはなんだろうか?

「横に立つのがボクじゃ…ダメ?」

「ダメ…じゃないさ…」

時には子供で…でも今のようにふっと大人への道を歩むあゆ

俺はあゆにそう答えながら部屋のドアをあけてベランダに出る

 

「静かだろ?」

夜の街は静寂が支配する

「うん…」

寒さに体を震わせたあゆをそっと抱き寄せてやる

小さな体…思い出の中のあゆとは一回り違う…

「プレゼントに返品はあるのか?」

「うぐぅ、あるわけないよぅ…」

胸に顔をうずめるようにしてあゆが小さくつぶやいた

「でも…お兄ちゃんがボクの事を嫌いになったら…かな」

「じゃあ大丈夫だな」

俺の声に顔を上げるあゆの頭を撫でてやる

「受け取ったぞ」

「え?」

「あゆを…だ」

「あ…」

しっかり言ってやると、あゆは俺の胸に顔を押し付けて押し黙った

少し遅れて泣き声が静かに聞こえる

「…」

無言で抱く手に力を入れ、あゆをなだめてやる

 

「リボンはやめとけよ?」

「うぐぅ、どうして?」

お風呂の後、今日は、と一緒に寝ることになったあゆが俺に不思議そうに答える

「あー…んー…受け取ったんだからもういいだろ?」

「うぐぅ…でも」

あゆは納得していない様子だ

とはいえ…

「とにかく、だ」

言って、もう寝ろとばかりにあゆの背中を軽く叩いてやる

あゆも押し黙り、部屋に静寂が訪れる

 

 

 

次の日

 

(なんでまたあるんだ…?)

朝のまどろみの中、視界に俺は先日と同じアレを見つける

覚醒しない頭は同じように口を縛ってしまったのだった

もちろんの事…

「うぐぅ、ひどいよお兄ちゃんっ」

「いや、昨日納得したんじゃなかったのか?」

中のあゆに後で怒られる羽目になったのだが…
しかもリボン装備の…あゆに

 

「うぐぅ、お兄ちゃんがボクをちゃんと受け取ってくれるまで止めないもんっ」

着替えだけはしてくれたがあゆは本気のようだ

(ぐは…どうする…?)

1:朝の運動だ。さあベッドに

2:キスでこの場を収める

…2だろ

「あゆ、目を瞑れ」

「え、え?」

いいから、と念を押してあゆを抱き寄せる

手早くおでこにキスをしようとしたが、
驚いて上を向いたあゆのせいで位置がずれた

「…うぐぅ」

離れたあゆが目を開けて信じられないように自分の口元に手をやる

「…これじゃ証拠にならないか?」

予定外の状況に戸惑いつつも、俺はそれだけは口にした

「ううん…大丈夫…だよ」

飛びついてきたあゆを抱きとめ、考える

…二人にどう伝えようか、と…

 

 

〜一方〜

「ふふふ…16歳と同時にゴールインですかね、あゆちゃん…」

階下では本人達の知らない場所で着々と何かが進行しているのであった

 

 

終わり(ぉ

 

あとがき

 

 

中あゆです、以上(爆

 

だと悲しいのでつらつらと…

現在新ジャンル?中あゆ(中学生ほど、140cm代)を模索中です

というわけでの本作ですが、
読者の方は自由に選択を選んでください(何

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