あの日、あの時、もしも…と思ったことはあるだろうか?

誰しもが1度はそんな後悔と叶えられない空想を抱いたことがあるんじゃないだろうか?

もう戻れないあの日

戻って何ができるだろう?

不毛な…Ifのお話

「なあ…あの時、お前は何が伝えたかったんだろうな?」

小さく、そして冷たくなった手を……握る

その主は…月宮あゆ

過去俺がこの街で出会い、そして約束したはずの相手

俺の記憶は自分が壊れないための嘘の記憶だった

ならなぜあのあゆは…という考えに答えは無い

確かなのは、あゆが栞を助けたということ

−彼女の言葉を借りれば奇跡で

確証となる証拠は何も無い

ただ…俺と栞がそう信じている

それで十分だった

栞の病気がほぼ完治し、ちょうどそれと入れ替わるようにして
病院の1室で病状が悪化した一人の少女

学校で再会した時、栞は勝手に抜け出していたようで病院に戻っていた

そんな栞を見舞いに行ったあの日

騒がしくなった病院

栞が顔見知りのナースから聞いた言葉は二人を驚愕させた

あゆが…ここに入院していて今容態が悪化しているというのだ

栞は今まで他の患者のことなど気にするような状況でもなく、
また、あゆの状態が特殊だっただけに関わることが無かったようだった

ナースや医師でごった返す一室

部屋のプレートには間違えようの無い4文字

医師たちの隙間から見えるベッドのふくらみ

そして部屋に響く無機質な音たち

「君達は?」

俺と栞に気がついた医師の一人が険しい視線を向けてくる

当然だろう、一目で状態は芳しくないことが分かる

そして、俺たちが普通は部外者であろうことも自覚している

「私は、私たちはあゆさんのお友達です」

「本当かね?」

「この街に他に月宮あゆがいないならそうです」

俺たちの言葉を医師は何かを考えるように受け取り、そして道を譲った

「突然の悪化だ。元々ここまで無事だったことそのものが奇跡。
身内は…誰もが関心を失っている。友達だというのなら酷だとは思うが是非…看とってやってもらいたい」

そして医師はこれは個人的なお願いであるが、と付け加えた

だが俺たちにそれを断る理由は無かった

やせ細った体

例え目覚めたとしても厳しいリハビリが待っていたであろう状態

そんな中、あゆは、間違いなく月宮あゆは眠っていた

ナース達は俺たちを気にしながらも様様な処置を行っていた

だが…

−ピーーーーー……

単調な音

それがあゆの最後の叫びのようで俺は栞の手をじっと握ったままだった

医師たちの会話もどこか遠くのようだった

その顔は安らかで、まるで俺たちがここに来ることがわかっていたかのような笑顔で

「あゆさん…」

栞が俺の手の上からあゆの手を握る

このやり取りが終われば火葬されるということだった

最後の…別れだ

「私はあゆさんに救ってもらいました。あゆさんは違うって言うかもしれません。
でも、私がそう思った。これが大切なことだと思います」

そしてそばにあゆがいるかのように栞は部屋の天井を見上げながら目を閉じた

それが…数ヶ月前のこと

 

 

 

 

-噴水のある公園

「今日も熱心だな」

長袖では大分汗ばんでくるようになった時期

俺は何時ものように公園に来ていた

彼女、栞の様子を見るために

あの日から栞は趣味だけでやっていた絵を真面目に習い始めた

下手だったのは当然、単に描き方を知らなかっただけだったのだから…

そして栞は驚くべきスピードで習得していった

「あ、祐一さん。ほら、ちょうど出来ましたよ。やっと完成です」

そういって栞が見せようとしているのは本人曰く『このために絵の勉強を始めたんです』
と言い切った題材である。俺はそれがなんなのか今まで知らなかった、というか見せてくれなかった

「どれどれ…栞!?」

栞が見せてくれた絵、それは…

その瞬間突風が吹き、その絵を栞の体を揺らしながら一度空中へと飛び立たせた

翼の、天使の白き翼をもって微笑むあゆの姿を…

栞は機敏な動きでそれをキャッチし、胸元に抱えて俺に見せた

「笑って欲しい、そして…見ていて欲しい。だから描きました」

色鉛筆だけの、しかしどこかリアルさを感じさせる色使い

そんな中であゆは微笑み、両手を前に出して飛び出してくるようだった

「ああ、きっと天国でもたい焼きを探して走り回ってるさ」

そのうち間違って落ちてきたりして、と栞が言って俺は笑い出した

あゆなら…あいつならありそうだったからだ

なああゆ? 俺たちはお前のおかげで今生きている

見ていて…くれるかな? 微笑みながら…

「さあ、行きましょうか祐一さん」

「ああ」

栞の微笑み、あゆの微笑み

向けられる二つの微笑みの中、俺は生きていく

託された願いと奇跡の産んだ道の先へと…

 

 

 

終わり

 


あとがき

 

何が言いたかったんだろうなあ・・・

よくわかりません(。。

でも栞ラスト、私はふとこんなことを思いました

あゆは栞ENDでは栞に託したのだと

自分の代わりに祐一を笑顔にさせ、生きて行くことを…

 

少しでも共感していただけたら幸いです

 

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