*警告

本文章は原作至上主義、主人公達の性格が何かずれているものが嫌いな方、
青い果実に嫌悪感がある方、キャラが暴走するのが嫌いな方などにはお薦めしません。
また、ネタがわからない、古いなどと後でそのように文句を言われてもこちらは応対しかねます。


 

見事に少女(幼女寄り)は王子様に想いを伝えました

王子もまた、自分の気持ちに気がつきました

邪魔の無い二人は…

 

 

「座りなさい。二人とも」

 

 

…まだ大きな壁が存在したようです

 

 

〜射止めた王子は朴念仁〜第六話

-愛に生きるか愛ゆえに死ぬか!?

 

 

「座ったぞ。母さん」

風呂上り、一騒動あった後に俺とアリサは母さんに呼ばれた

美由希たちもこようとしたが母さんに一蹴された

アリサは母さんの出す覇気に押されて先ほどから無言だ

「何を話したいかわかるかしら?」

「…ああ。アリサのことだろう?」

俺がそう言うとアリサがつないだ手をぴくっと震わせた

「そうね…。恭也、状況は把握してるの?」

「…確証はないが、俺がアリサを選んだことで美由希達はなにやら混乱しているな」

はっきり言うと、母さんは頭を抱えた

「はぁ…結局変わってないのね。アリサちゃんを選べたことがものすごい奇跡だわ」

「なにやら馬鹿にされたような気がするのだが?」

「多分…恭也さんが女性の好意に疎い、と言いたいんだと思いますけど」

いつのまにか呼び方や口調まで変えたアリサがそう助言してきた

「…なるほど。で、何ゆえ美由希やフィアッセまで?」

…空気が重くなった

「先は辛いわよ?」

「…なんとか覚悟しています」

俺の預かり知らぬところでアリサと母さんは分かり合っていた

「で、俺はどうすれば?」

苦い表情で聞いてみる

「簡単といえば簡単ね。自分がちょっと特殊な趣味で、アリサちゃんを選んだ。
ってみなの前で宣言すればいいのよ。ちょっとごたごたするけどそれが終われば終わるわ」

「ちょっとまってくれ。特殊な趣味? なんことだ? もしかして剣のことか?」

俺が言葉を返すと、母さんは指をちっちっちと振った

「いい、恭也? アリサちゃんのような子を選ぶことを世ではロリコン、というのよ」

「なっ」

俺は言葉を失う。そんな…

「そ、そうだったのか!」

俺が叫ぶと二人がこけた

「きょ、恭也?」

「やっぱりお兄様はお兄様だ…」

ショックで惚けたままの母さんとまたまた口調の変わるアリサ

どうやら呼び方をどちらにするかで悩んでいるらしい

とまあそれはいい

「だがアリサはそこいらの天才も多分かなわないぞ?」

何せIQ200以上だしな

「あのね、そういうことじゃないの。体がこう…余りふくよかでなかったり、
年齢的に幼い子に手を出すことを言うのよ?」

「同じ返し方だがちょっとまってくれ、まだそんなことしてないぞ!?」

「まだ…ということはお兄様も私のことを意識してくれているんですね!」

「なるほど…秒読みなのね」

突然色めきだすアリサと悟りきったような母さん

「いいわ。愛に年の差なんて関係ないわね」

「ありがとうございます。お義母様!」

がしっと母さんの手をもつアリサ

はて・・・?

「いーえ、もしかしたらお義母様と呼べない、そういう趣味かもしれないわよ?」

「それでも大丈夫です! 私、今は少女ですから!」

またまた俺の預かり知らぬところで二人は分かり合っていた

「おーい…」

何か阻害されてる気がしたので声をかけてみた

「恭也、ちょっといい?」

「なんだ、母さん」

俺は母さんに誘われるままに耳を寄せた

囁かれた言葉は俺を驚愕させるに事足りた

なぜなら…

 

 

 

 

−次の日の朝

「はい、どうぞ」

「う、うむ」

俺は視線に耐えていた。どれがどれだがわからないが、
美由希は悲しそうにみているし、フィアッセは楽しそうに、
レンや晶は不思議そうに、なのはにいたってはうらやましそうに…

母さんが言ってきた内容は「アリサと正しく交際すること」だった

どんな交際かはアリサに一任することになった

そして朝、まずすることはどうやら一緒に朝食、しかも「あーん」と差し出されたら食べなければならないという

さすがにこれはどうも恥ずかしい

だがアリサは随分と嬉しそうだ

一応恋人として交際するということに決まったのだから、
こうしたことも乗り越えなければならないのだろう

俺はそんな風に覚悟していた

「ふむ。俺だけでは不公平だな、アリサも食べるか?」

「え? ええっ!?」

俺がふとそう言うとなぜかアリサは慌てた

む…?

「どうした。何かあったのか?」

「い、いえっ。どうぞっ」

なぜか気合を入れた様子でアリサは俺のほうを向いた

「そうか? ほら、あーんだったか?」

箸で晶作の卵焼きを一切れつまんで差し出す

俺がそう言うとアリサはなにやら真っ赤な顔をしながらも口にした

つややかな唇がなぜか俺の心を刺激した

それがなんなのかはわからない、だがアリサのことを気にしたのは事実だった

朝食の後はなにやら一緒に買い物に行くという事になった

 

これがいわゆる【デート】であると認識し始めたのはブティックに入ってからだった

どうも周囲の視線が俺に向くのだ

(そんなにデートとは珍しいものだろうか?)

フィアッセなどから教えられた情報から推測するに皆やっていることだということなのだが…

そうこうしていると試着室のカーテンがわずかに開いた

「ど、どうでしょう?」

「アリサなら何を着ても大丈夫だろう」

仕入れた知識で無難そうなセリフを選ぶ

アリサはきょとんとした後、笑顔で答えてきた

うむ。これでいい。自然体が身を守るには一番だからな

「ああ。良く似合ってるぞ。それならすぐ走ったりできるだろう?」

「え? はい。でもなんで…?」

試着室から出てきたアリサに近づきながら俺はアリサを見下ろした

長すぎず短すぎず、本人の希望もあって結局スカートだ

本当ならズボンタイプがいいのだが、女の子となれば仕方ない

「これなら自分ひとりで出掛けても痴漢から無事に逃げきれると思ったからだが?」

俺は意外なことを聞かれたので正直に答えた

「「……」」

なぜか会話が途切れた

そこで俺が口を開こうとしたとき、アリサの気配が爆発した

「デートに来て選ぶのが痴漢対策ですかっ!?」

アリサが叫ぶと周囲の女性陣が頷きながら俺を睨んできた

…何故だ

「他に俺に何を選べと言うのだ?」

自慢じゃないが一般的なセンスは恐らく無いぞ

「…はぁ。そうですね、お兄様はそういう人ですよね」

アリサは俺の心のうちを読んだかのようにため息をついてうつむいた

「でも…可愛いからいいです」

「む、それならよかった」

どうやら許してもらえたようだ

「埋め合わせに腕でも組んで歩いてくれませんか?」

「そのぐらいでいいなら喜んで」

俺が言うとアリサは左腕に絡ませてきた

まだ発展途上のアリサの胸が腕に押し当てられることで一緒にいるのだということが意識される

(状況が違うとこうも人間の認識とは違うのだな。勉強になった)

ふと先日までのアリサとの暮らし振りを思い出して、
自分の意識の変化に戸惑いを覚えていた

ブティックを出て、しばらく歩いているとアリサがくいくいと袖を引っ張ってきた

「どうした?」

「あれ…なんの集まりなんでしょう?」

アリサが指差す先には商店街の一角に集まる人だかりがあった

なにやらステージもあるようで、垂れ幕がかかっている

目を凝らすと…【二倍三倍当たり前! 海鳴年の差カップルコンテスト】と銘打ってあった

すでに始まっているらしいステージ上にはにこやかに笑うお年寄りや
やや恥ずかしそうによりそう中年夫婦などがいた

共通しているのはどちらかは確かに多少若く、年の差があることがわかるところだった

どうやらある程度年齢を重ねた付き合いのカップルを中心にエントリーされているらしい

以上のことを背丈の都合で見えないアリサに伝えると、なぜかアリサが叫んだ

「こ、これです!」

「…は?」

俺が惚けた瞬間にアリサはなぜか次の参加者の準備時間として
休憩に入ったステージ脇にいる司会の女性へと駆け寄った

そしてなにやらぼそぼそと耳打ちしている

 

 

 

-一方少し前

「七瀬、あれは例の二人じゃないのか?」

「え? あ、ほんとだ〜」

手をつないでにこやかに歩いていた二人は人だかりへと進んでいく恭也とアリサを見つけていた

「向かう先は…なるほど。い〜ことおもいついちゃった♪」

「な、なんだい?」

さすがの真一郎も唐突にイイ笑顔をされては少々驚く

「ふふ〜ん、な・い・しょ。といいたいところだけどきょうりょくしてね?」

子悪魔のように微笑まれては真一郎にあらがう術はなく、引っ張られるままにステージ脇へと向かっていた

そして海鳴市の黒歴史に残る騒動までのカウントダウンは静かに始まった

 

 

 

-戻って恭也達

「あっさりOKでした。行きますよお兄様」

「行くって…もしかしてステージになのか?」

司会の女性となにやら話をつけたらしいアリサは、
興奮した様子で戻ってくるなり俺を引っ張っていく

「ええ! 若くてもいいのか?って聞いたら快くOKしてくれました」

アリサが振り向かずに放った言葉に俺は内心焦っていた

(ま、まずい…。母さんの言うとおりなら俺は表を歩けなくなるぞ)

出かけ際、母さんが自分とアリサの関係は世間的には禁じられた関係であり、
なかなか理解ある人間を見つけるのは難しいということを聞いていた

そのとおりならば、このように堂々と恋人であると宣言する場に出てしまっては
明日からお隣さんたちに顔向けができなくなってしまう

「なあ、アリサ。出るのはやめ…る気はないようだな」

アリサから立ち上る気合は並々ならぬものだった

落ち着いて考えればすでに駅前で一騒動起こしている

そうなれば…もう覚悟したほうがいいのだろうか?

悩むうちにすでにステージに近づいていた

司会の女性はこちら、正しくはアリサを見るとにこやかに微笑んだ

「あ、さっきの…お話は聞いています。なるほど、年の差ですね」

俺を見ると女性はこれ以上ないぐらい爽やか過ぎる笑みを浮かべた

そしてこちらです、と案内されるままにステージ脇に俺はアリサと入った

控えている出場者らしきカップルの中に同じような男女を見かけた俺は思わず視線を向ける

「あ、七瀬ちゃん!?」

アリサの叫びに少女、いや幼女が手を振った

俺がアリサに知り合いかと問いかけようとしたとき、周囲にマイクによる音声が響き始めた

「さー、司会は同じく、井上ななかでお送りしております。海鳴年の差カップルコンテスト!
熟年カップルは毎年恒例ですが今年は特別に若年の部を行います! こんな日本に誰がした! 
世間の荒波に負けずに愛に生きる少女と、青田前の土地買いとでもいいましょうか、
男性側に責任がのしかかる中よくぞ決断したというべき間柄でしょうっ! 
2組の年の差ラブラブカップルのご登場です! 皆さん拍手で出迎えください!!」

(ら、らぶらぶ!?)

俺が司会、ななかさんの語りに違和感を覚えたときにはすでにステージは歓声につつまれていた

これで出て行かなければ大ブーイングだろう

「よ、よし…行くぞ」

「はい♪」

ここまで緊張したのはいつ以来だろうか?

俺は冷や汗をかきながらステージへと進んでいた

「審査方法は簡単! お手元の投票用紙をABどちらのカップルがラブラブか見学者の皆さんが
投票箱に入れることで判定されます。それではパフォーマンスに移って頂きましょう!」

「パフォーマンス? 一体何をすればいいんだ?」

小声でアリサに聞くと、アリサも悩んでいるようだった

「おおーっとB組アリサ*恭也組はパフォーマンスを何にするかで悩んでいるようです。
これはどれを披露するかと言う余裕の現れでしょうか!? おっと、ここでA組の
七瀬*真一郎組が動きます。一体何を…おおーーーーーーーっ!?」

司会と周囲の歓声に視線を向けると二人は堂々と口付けをかわしていた

「うわぁ…大胆…すごいなー」

アリサは手のひらで覆い隠すようにしながらも指の隙間からしっかり見ていた

(これに勝つのか…? ん?)

俺の視線はステージの脇に設置されたあるものに注がれていた

 

そしてきっかり10秒、歓声につつまれたまま七瀬と真一郎のキスは終わる

「なんと大胆不敵! 公衆の面前で愛の印を示しました!
彼女への世間体何するものぞ!という気迫が伝わってまいります!!(う〜、相川先輩睨んでるよう…)」

表面上は笑顔で、しかし内心真一郎からの無言のプレッシャーに押されそうになるななか

(うわー…相川先輩から凄まじい怒気と殺気が…終わったら捕まる前に逃げなきゃ…
協力する代わりに先輩は抑えてくれるって言ったじゃないですか七瀬ちゃ〜ん)

アイコンタクトで七瀬にななかが視線を送ると、了解したかのように七瀬が壇上で頷く

くいくいと真一郎の袖を引っ張り、振り向いたところで身軽に昇り始める

よじよじと擬音が立ちそうなのぼり方と仕草に真一郎の頬も緩んだ

「おーっとここでA組は抱っこちゃん人形だー! ネタがわかる年齢層が分かれるぞ作者ー! 
ともあれ(偽)天使の笑顔に彼氏ともども会場のおじさまおばさま方もほんわかしているぞー!?(ありがとうございます七瀬ちゃんっ!)」

内心涙を流しつつななかは盛り上げるべく叫びを上げた

「さあ! 強敵に対してB組はどう対抗を…おや? 彼氏が手に持っているのは
設置されているりんごです。あれをどうするというのでしょうか!」

 

 

-恭也視点

「アリサ、頭の上に乗せてくれるか?」

「え? もしかして…」

俺がりんごを手渡しつつそう言うとアリサは何かを悟ったように見上げてきた

「ああ。俺にはどうやったらカップルらしく見えるかはわからん。
だが、アリサが俺を信じてくれるなら相応のことはせねばな」

コートをめくり、胸元で本来なら威嚇用に使う目に映える銀色のままの飛針を見せる

「…やりましょう!」

アリサは俺の意図を汲み、手早く離れると自分の頭の上にりんごを置いた

「まさかっ! 手に持った串のようなもので彼女のりんごを射抜くというのでしょうか!?
主催者としてはけが人は…OKです。イベント主催者からOKが出ました!
彼女の自信満々、かつ彼氏を信用する輝きに満ちた瞳が背中を押したようです!」

ななかさんのナレーションどおり、アリサは曇りなく俺を信用する目つきで見つめる

一瞬の静寂、そして俺とアリサは
ステージの端と端で見詰め合い、俺は手を振り下ろす

かつんっと静かな音とともに、アリサの頭の上には飛針の貫通したりんごが現れる

「やりました!!! 成功です!」

マイクで響く声と共に怒号のような歓声が響く

いつのまにか見渡せば、人だかりは倍以上になっていた

「お兄様っ!」

「良くがんばったな。怖かっただろう?」

抱きついてくるアリサをしっかりと抱きとめ、頭を撫でながらそう言ってやる

「いーえ、信じてました!」

満面の笑顔で、アリサはななかさんから差し出されるマイクに向かって言い切った

「お聞きになりましたか? この歳にしてこの信頼感! 今後の絆の固さを我々に示してくれた二人に拍手を!」

そして投票のタイミングになった

投票箱の色は俺達は赤、そして片方は黄色だ

続々と箱に用紙が投入され、スタッフらしき人物達によって即座に集計されていった

 

−数分後

「それでは発表します! A組投票数…256票!
そしてB組…250…8票! 優勝はB…」

「ちょっとまってーーーー!!!!」

あがりかけた歓声、それをさえぎったのは一人の少女の声だった

壇上の4人と、司会、そして人々の視線が集まる先には…

息を切らせて走ってきた様子のなのはが立っていた

「おにーちゃんの横には私だって立ちたいです!」

びしっと指をステージの恭也に向け、なのははそう言いきった

 

 

−恭也視点

今、なのははなんて言ったんだ?

「アリサ、何が…」

「簡単です。なのはちゃんも恋人候補に名乗りを上げたってことですよ。
最大の…ライバル登場です。どうしますか?」

アリサはそう言って笑みを向けてきた

「どうするといっても…なのはは妹だ」

俺がかぶりを振ると、なのははそれを聞きつけたのか
勢い良く壇上へと駆け上がってきた

「本日のイベントはただでは終わりません! 特別に若年の部を設けれたどころか、
優勝宣言にちょっと待ったコールです! しかもお相手は彼氏さんの妹さんです!
さあ、一体どうなるのか、主催者さーん? え、OK? 面白いから良し?
主催者からまたまた許可が出ました! では二人とも、存分にアピールしてください!」

無責任なあおりがなにやらアリサとなのはの気配を変えたことに俺はそのとき運良く気がつけた。
視線を向ければすでにA組である二人はそそくさと騒ぎから逃げていた

…逃げられたか

「ついにこのときが来た様ね。自分の心に気がつけたのね、なのは」

そしてアリサが妙に真剣な表情でなのはに話し掛ける

「本当はいけないことだってわかってるし、もうおにーちゃんが一応の答えを出したのもわかってる!
だけど…だけど実妹という最強の立場的にはこればっかりは譲れないよ!」

…世界がどこかずれているのを俺はそのとき痛感した

「手元の資料によりますと、年長の少女がアリサ・ローウェルさん。
先日暴漢に襲われそうになったところを彼氏さんに助けられたそうです。
まさにボーイミーツガール! 助けたときの彼は輝いて見えたことでしょう!
そして対するは異母兄妹たる高町なのはさん。ホームステイしてきた
同年代の男の子の告白を蹴ってまでひそかにお兄さんへの愛を暖めていたようです!
禁断の感情に染まっていく自分の心、その苦しみは想像するだけで胸が締め付けられそうです」

どこから仕入れたのか非常に気になる情報を
読み上げる司会の声に周囲はますますヒートアップしていく

「ふふん…なのは。勝負は最初からついているも同然よ?」

「そんなことない! なのはだって!えと…その…旧スク水とか着れるもんっ!」

真っ赤な顔をして言い放ったセリフは俺の予想を越えていた

すでにこの状況そのものが俺の予想外であるのだが…

そして口を挟む余地のない戦いはしばらく続いた

 

「総じて、カップの大きさなんて飾りです! 偉い人にはそれがわからんのです!と言った所でしょうか。
素晴らしく盛り上がったところでそれでは観客の皆さんに改めて投票をしていただきましょう!」

気がつくとどちらがふさわしいかで投票をすることになっていた

ぞろぞろと箱に群がる観客達

アリサとなのははそれを真剣な表情で見つめている

やってくる開票の時間

「それでは結果発表を…おや? こ、これはっ!!」

動揺した声が周囲に響き、そして静寂が訪れる

「投票数同一。引き分けです!」

宣言と共に、からかいとも祝福ともつかない叫びが辺りを満たした

「なんという幕切れでしょう。中には【羨ましいぞ恭也君!】という
なにやら身内の方らしきコメントの書かれた用紙もありましたが、
少女漫画家草薙まゆこ主催歳の差カップルコンテストはこれにて閉幕です!」

両方から抱きついてくるアリサとなのはに
どう対応すべきか悩む間になにやらあっさりとイベントは終わった

というかあの人主催だったのか…どうりでハプニングに強いはずである。
真雪さんが主催だと知っていたらもう少し落ち着けたのだが…

 

「あー…なんというか、なのは?」

ステージから降りた俺はなのはに恐る恐る話し掛ける

「にゃ?」

憑き物が落ちたかのようにイベントが終わった後のなのはは、
いつもどおりの甘えん坊だった

「先ほどのは一体…?」

もしや本当に本気なのか?

「やだな〜お兄様。本気にしたんですか?」

「そうだよ〜、おにーちゃん騙されやすいな〜」

少女二人の笑い声に、俺は首をかしげた

「おにーちゃんのことは大好きだけど、もうアリサちゃんがいるもん」

「いつの間に打ち合わせたんだ?」

やっと事情が飲み込めてきた俺は、二人が昨日の内に
今回のイベントが開催されることを知って考えていたらしいことを知った。
ここまでの騒ぎになるとは思っていなかったようだが…

「それにしても二人とも迫真の演技だったな。思わず本気で動揺してしまったぞ」

我が妹ながらたいした演技力である。
アリサも事前に考えていたとは思えない行動だったな

もし種明かしをされなければどう説得するか頭を悩ませていたところだ

「あ、うん。そうじゃないと意味がないもん」

「? はしゃいで疲れたのか?」

一瞬なのはがつらそうな表情をした気がした俺はそう声をかけた

「ううん、大丈夫だよ。じゃあ先に帰ってるね〜」

「あ、ああ…」

なのはは言い終わるやいなやすぐに駆け出してしまった

「むぅ?」

「気を使ってくれたんですよ、きっと」

そう答えるアリサもなにやら寂しそうな、疲れたような表情だった

「そうか。じゃあゆっくり散歩をしながら帰宅するとしよう」

言って、アリサの小さな手を引いて俺は海岸のほうへと足を向けた

 

 

 

夕日が辺りを赤く染め、静かな風が二人の間を流れていく

「やはり気持ちがいいな」

「本当です…お兄様。後悔してませんか?」

手すりに手をかけ、アリサはそんなことを聞いてきた

「その問いには意味が無いな。後悔しない選択肢は世の中に無いし、
それすらも想い出に変えていくものだと俺は思っている」

選択しなければならないならどちらを選んでも片方を選べなかった後悔は残るはずである

「それで十分です。今後とも宜しくお願いしますね」

意味を理解した様子のアリサがこのときばかりは
歳相応の表情を浮かべて俺の腕の中に飛び込んでくる

「うむ。問題は明日からをどう乗り切るかだな」

「はい?」

分かっていない様子のアリサを撫でつつ、
俺は忍をどうあしらうかに意識を集中させていた

 

 

父さん、この町は今のところ平和です

…俺はどうやら騒動に生きる運命にあるようですけれど…

 

 

終わり

 


あとがき

…石投げられないかな(びくびくおどおど

い、いかがだったでしょうか。四話辺りからなにやら
ほのぼのから一点ギャグ交じりの騒動となりました本作。

いくつか謎は残しつつ、閉幕となります。

読者の方々にはきになる点があると思いますが、
随時解決ということで(謎

よろしかったら感想やらお待ちしています