*警告

本文章は原作至上主義、主人公達の性格が何かずれているものが嫌いな方、
青い果実に嫌悪感がある方、キャラが暴走するのが嫌いな方などにはお薦めしません。
また、ネタがわからない、古いなどと後でそのように文句を言われてもこちらは応対しかねます。


−年上の彼氏に対する対処法

そのノートの表紙にはそう銘打ってあった

「で、これを実行したらいいの?」

私は軽い口調で目の前にいる幼女、
名前は…七瀬…苗字は春原だったっけ?

なのはの話だと近くに住むおませな幼女、らしい

普通ならそれで終わるところだけど、本当に歳の差がすごい恋人がいるみたい

そんな彼女に呼び出された駅近くの喧騒の中

…ああ、恭也お兄様…

はっ、トリップしてる場合じゃないわよね

「うんうん。しょうぶすべきはわかさをこえたおさなさよっ!」

歳の割りに言葉はしっかりしていて、たまに舌足らずな喋り方だけど
なぜか知識は豊富みたい。私みたいにIQ高いのかしら?

「お、幼さ…やっぱりおにーちゃんって…」

私の横でなのはがなにやら呆然としている

どうしたんだろう?

「えーと何々・・・一番。『こねこのようにあまえろ』?」

「そうよっ。えーと、しんいちろー? しんいちろー?」

すると七瀬ちゃんはどこかに向かって叫んだ

「ん? お、いたいた。どこ行ったかと思ったよ」

すると童顔で、一見女の子に間違えてもおかしくない男性が近寄ってきた

もしかしてこの人が…?

「ふたりとも、しょーかいするわね。これがわたしのだーりんのしんいちろーよ」

七瀬ちゃんはもうこれ以上ないぐらい小悪魔な顔をしてそう紹介してくれた

回りに一応人がいる状態のこれはしんいちろうさんも辛いんじゃないだろうか?

七瀬ちゃんに抱きつかれてる彼はどこか疲れた、でも嫌っていない表情だった

「おいおい、これはないだろ? っと、 七瀬の友達かな? 
初めまして、相川真一郎っていうんだ。まあその…こいつの恋人」

つんつんと七瀬ちゃんの頭を相川さんはつついた

「う〜、こどもあつかいしないでっていってるでしょー」

どこをどう見てもこどもなのだから仕方ないんじゃないかと私は思うのだけれども、
どうやら七瀬ちゃんには何か事情でもあるのか、随分必死だ

「悪かった悪かった」

相川さんは機嫌を取るためか、七瀬ちゃんを抱きかかえつつその頭を撫でていた

あーいいなあ…私もお兄様にああして……ん?

七瀬ちゃんはしてやったりというように見えないように微笑みつつ撫でられていた

ごろごろと喉を鳴らしていそうなぐらい気持ちよさそうに撫でられているその様子は…

「はにゃ、そーいう意味なんだね」

なのはも私もこくこくと頷いた

なるほど、子猫のように時には理不尽に退き、時には無駄なぐらい甘えてじゃれる…なるほど

私の理性がそれは間違える第一歩などと言っているような気もしないでもないのだけれど、
恋する乙女にそのような理性は必要ないとどこかの偉い人も言っていたと思う(誰だよ

「よーし、さっそくお兄様にアタックよっ!」

「おー!…ってなのはは別に…」

なにやらもじもじするなのはの腕を掴んで私は笑顔の七瀬ちゃんと不思議顔の相川さんと別れて高町家に向かう

手には借り受けたノートを手にして…

 

〜射止めた王子は朴念仁〜第五話

-限りなく広がる彼の性癖の噂

 

 

「ねえ〜?」

「ん、なんだい?」

七瀬の唐突なお願いにも慣れたもの

なにせ元は高校生の姿で付き合っていたのだから…

「今日こそさ〜、しよ?」

その瞳はその年齢とは絶対に信じてもらえない媚びを秘めていた

「そんなこと言ったって、今の七瀬は…それに親御さんだっているだろ?」

何を、とは野暮であろうが説明しよう

先ほども言ったとおり二人は元々高校生状態でのお付き合い

色々あってこんな姿の七瀬ではあるが、
中身は高校生どころか幽霊状態の記憶もばっちりである

アリサが不思議に思ったのも無理はない

ごたごたしたもののすることはしてきた二人

だが転生という形で七瀬が復活してからはまだお手つきになっていないのである

さすがの真一郎も出せといわれて出せる手ではない

今の七瀬はどう見ても幼女であり、事情を知らなければ真一郎は
自分の娘に手をだす性犯罪者以外の何者でもないはずである

そんなわけで欲求不満を抱えつつも理性でがんばっている真一郎君であった

「だいじょーぶだいじょーぶ、おとーさんいないしおかーさんはしってるから」

「はっ?」

唐突だがこの街には神咲という退魔の系列の血が存在する

それは分家や養子縁組などを含めれば多彩な家系を持ち、
今も現役の戦闘要員もいればほぼ一般人で、
有事には情報統制や用立てを行うだけの分家もいるのである

七瀬が転生したのはたまたまそんな分家の夫婦だった

自分の娘が何の因果か転生体だと知った夫婦の夫のほうは
まったくの一般人であったため、その心労で帰らぬ人となっていた

残った妻のほうは夫の情けなさを嘆きつつもこう言った

−愛に生きろ、園児だろうがABまでは問題無し!

ABって?とはなのはやアリサには少々早い知識、と言っておこう

追記としては−本番は・・・なんかあったらひどいからね、彼氏君

であったらしい

「…なんか頭痛くなってきた」

全てを七瀬から聞き終えた真一郎は頭を抱えてそう唸った

無理もない。親公認の性犯罪者になっても嬉しいはずがない

「えー、しんいちろーはわたしといっしょじゃいや?」

「そうは言ってないじゃないか」

泣き出す七瀬に慌てて弁解する真一郎

早くしないと園児を泣かす変態さんというレッテルが背中に貼られてしまうという恐怖が彼を動かす

「だったら…」

「だったら?」

んっと顔を突き出す七瀬

一瞬でその意図を悟りつつも場所が場所なだけに真一郎はきょろきょろした後、
近くの路地へと七瀬を抱えたまま移動した

「これも道か…んぐっ」

「ぷはっ、つべこべいってないであいしあうのよっ!」

素早く口をふさいで、すぐ離した後畳み掛けるようにして七瀬は真一郎のくちびるに自分の小さい口を押し付ける

ちろりと小さく控えめな舌が真一郎の口内を動き、半ば開かれた瞳はすでに快楽に染まる女の子だった

街の喧騒を尻目に幼女と少年(もうすぐ青年と呼ばれそう)なカップルのディープキスは幸いにも
警察には目撃されずにしばらく水音を従えて続いたのだった

 

 

−一方高町家

誤解も一部解け、とりあえず襲われつづけるという状況は脱した恭也

(平和は大事だな…)

パチンパチンと静かに盆栽の手入れをする彼のもとになにやら気配が近づく

「む?」

振り向くとミニスカートの二匹のネコがいた

 

 

 

 

 

「に、にゃ?」

あれ、おにーちゃん硬直しちゃったよ、なんでだろう?

なのはの服装そんなにおかしいかなあ?

首をかしげると頭につけた耳さんがくすぐったいです

それに…しっぽさんはアリサちゃんのこだわりでスカートではなく…
その…下着の後ろにくっついています

恥ずかしいってなのはは言ったんだけど、我慢しなさい!って…強引だよう…

あ、なのはは白猫さんでアリサちゃんは黒猫なの

アリサちゃんはとてとてとおにーちゃんの下へと向かいます

なのはには…無理です

だって…しっぽさんが少し重さがあるから動くと…その、落ちちゃいそうなのです

だから恥ずかしくってもじもじしちゃうの

あ、おにーちゃんまだ硬直してる

もうすぐアリサちゃんが到着しちゃうよ?

 

 

「お・に・い・さ・ま♪ あなたのネコアリサでーす」

俺の目の前にきたアリサ、彼女曰くネコアリサ、はそう微笑んだ

随分と元気になったようだ…よかったよかった

「で、どうしたんだ?」

若干上ずった声になるのが自分でもわかる

その…余りにも可愛らしかったし、
あまりなかったことだったからな…今まで

最近はやっと自分が世間と少しだけ認識の仕方や
考え方が違ったり、世間に疎いということが分かってきた

「この私を見てそれだけですか?」

「む…なんだ、似合ってると思うぞ」

俺がそう言うとアリサは嬉しそうな顔をした

よかった、これで対応は間違っていなかったようだ

アリサが身を動かすと耳らしきものやしっぽらしきものも、
まるで連動してるかのように動く

(あの動き…新しい暗器の使い方に使えそうだな)

俺がそんなことを考えているとアリサはすりすりと身を寄せつつ俺を縁側へとひっぱっていく

そちらを見ればなぜかなのはが珍しくミニスカート姿でもじもじとなにやら恥ずかしそうに立っていた

「どうしたなのは、何かあったのか?」

俺が心配して言うとなのははびくっと体を揺らして困ったような表情をする

「な、なんでもないよおにーちゃん」

ぺたんとなのははそのまま座り込み、アリサのほうを見たようだった

「ふむ。ならいいがなのは、スカートがめくれているぞ、直しておきなさい」

−ババッ

一瞬そんな音が聞こえたような気がしたが、気にするまもなくなのはは自分の足を閉じるようにしてスカートを直した

「おにーちゃん、み…見た?」

「ん?…まあ不可抗力だ、許せ」

俺がそう答えるとぼんっと音を立てるようにして真っ赤になったなのはが再びもじもじし始めた

「一緒に御昼寝しませんか?」

少し不機嫌そうなアリサがそう言ってきた

「なんだ、眠いのかアリサ?」

俺が答えるとアリサはなにやらショックを受けたような顔になって動きを止めた

…?

「お兄様、ネコなんですよネコ。しかも私やなのはのようなかわいらしー幼女が
猫耳としっぽまでつけてコスプレしているのに、こう…むらむらっとこないんですか!?」

急に怒った顔になってアリサが叫び始めた。
その勢いに押されて情けなくその場にしりもちをつく

「ア、アリサちゃんそんなストレートな…なんでもないですっ」

なのはのつっこみらしき言葉は途中でさえぎられた

「気になるのだが、アリサ。もう少し常識的じゃあなかったか?」

「恋する乙女は別の人種なんです!」

俺が場を収めようと言うとアリサはそう言った

「なんだ、好きな人がいるのか?」

「くーーーーー、なんとなくそうなんじゃないかと思ってたけど、やっぱりー!
お兄様、いいえ恭也さん、私はっ…?」

縁側に仁王立ちになり、勢いに押されて仰向けに倒れこんでいる俺をまたぐようになっていた

当然俺の視線は下から見上げる形になっている…が、今その先には…

(注意すべきか、だが今注意するとさらに怒りそうだし)

と俺が悩んだ光景が広がっていた

「アリサちゃん、パンツパンツ」

なのはの指摘どおり、あまりにも激しく動いたためかひっかけていたらしいパンツごと
アリサの黒いしっぽがズレ落ちていた

当然…ミニスカートの上に下着まで落ちたのだから隠すものは何もない

なのはの声にアリサは自分を見下ろし、そして硬直した

「き…」

「き?」

俺が聞き返すと(後で考えれば相当間抜けな聞き方だ)アリサはぶるぶる震えた

「キャーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

「つっ」

俺をもってして近距離の悲鳴は鼓膜に響いた

アリサは飛び跳ねるようにして与えられた自室の方向へと走って逃げていった

「…とりあえずどうする、これ」

「んっと…男の人は手を離したほうがいいんじゃないかなとなのはは思うよおにーちゃん」

その指摘に握っていたしっぽつきアリサの純白パンツをなのはに手渡した

しばらくしてアリサらしき足音が玄関のほうへと駆け抜けていった

「追いかけてあげて、おにーちゃん。アリサちゃんきっとおにーちゃんに
来て欲しくないけどやっぱり来て欲しいと思ってると思う」

「??? よくわからんがなのはの頼みだ。引き受けよう」

俺の答えに微笑むネコなのはの笑顔は輝いていた

 

 

 

恭也が去った後の縁側

「にゃ…下着を脱ぐなんてアリサちゃんだいた〜ん♪ なのはもアタックしようかな〜」

やはり兄妹、どこか同じようにずれていた

 

 

 

 

-駅前

「ふぅ…どこだ?」

聞き込みと気配を頼りにここまで来たが、人ごみにまぎれてしまった

「やめてください・・・しつこいですね」

「いた…む?」

アリサを発見したのはいいが、状況が妙だった

耳を外すのを忘れたのか、黒耳をつけたままのアリサが
サングラスをかけた人物に話し掛けられている

これがナンパという奴だろうか?

「アリサ、ここにいたのか」

「あ、恭也お兄様っ」

慌てて俺に抱きついてくるアリサ

その体は小刻みに震えている

「なんだ、お相手がいたんだ。じゃあね、お嬢ちゃん」

俺が声をかけるより早くその人物は去っていった

ふむ、危ないところだったのだろうか

「大丈夫か、アリサ」

少し周囲の視線を集めているがまあ問題はないだろう

「は、はい。来てくださったんですね」

「なのはが行けって言ったからな」

俺が言うとぴくっと体を震わせた

「じゃあ来なかったかもしれないんですか?」

「いや…来た」

アリサの声に俺は答えた

「よかった…あの、私のことを好きですか?」

 

 

 

「いや…来た」

お兄様のその答えを聞いて私の決心は固まった

今が告白のときだ!

「よかった…あの、私のことを好きですか?」

勇気を振り絞った告白

それに対するお兄様の表情は少し不思議そうな顔をした後は笑顔だった

「ああ、好きだぞ」

その一言に私の全身が喜びに染まる

歓喜が駆け抜け、世の中の全てが輝いて見えた

…が

「なのはの大事な友達だしな」

……

………ブチッ

「お兄様っ! 今のセリフに対してその返答はひどいんじゃないんですか!?
女の子が必死に勇気を振り絞った告白にそんな返答、酷過ぎますっ!」

私の剣幕に慌てふためいた様子のお兄様にさらに畳み掛ける

周囲にたまたまいた女学生や主婦の皆様方もうんうんと頷いてくださっている

当然です!

「出会ったそのときから、助けていただいたあの瞬間から好きでしたっ!
だからなのはちゃんも巻き込んでこの若さ、いえ幼さを武器に虜にしようと
一生懸命がんばって青い果実の魅力をアピールしてきたのにっ!
美由希さんみたいなライバルをやっと蹴落として、
後はこの青いぺどーな私を味わってもらうだけ!だと思ったのにあんまりですっ!」

なぜか私の叫びに周囲が引いて行く

でも私の叫びは止まらない

「もう素肌もみーんな、お風呂では見られなかった部分も先ほど視線に晒されちゃいましたっ。
だからお兄様が望むならタチでもネコでも、むしろお兄様にアリサの全s…むぐぅっ!」

 

 

周囲の視線が恭也を非難する物からなにやら同情めいたものに変わっていく

「もう素肌もみーんな、お風呂では見られなかった部分も先ほど視線に晒されちゃいましたっ。
だからお兄様が望むならタチでもネコでも、むしろお兄様にアリサの全s…むぐぅっ!」

恭也は片手で口を塞ぎ、もう片方で小脇に抱えてその場を全力で離れる

後に残されるのは事態についていけなくなった人々とこのきっかけを作った二人

「あちゃー・・・思ったより激しいなあ」

「七瀬、一体あの子に何を渡したんだ?」

予想以上の結果に苦笑する七瀬と引きつった表情のサングラスをかけた真一郎

そう、さきほどアリサをナンパしていたのはアリサから手早く事情を聞いた七瀬に指令を受けた真一郎であった

「んー、ろりこんおにーさんを虜にする方法本」

「はぁ? ってもしかして実戦済みってわけ?」

「さあーそれはどうかな〜♪」

疑問を浮かべた後、慌てて聞いてくる真一郎を受け流しながら七瀬は歩き出した

 

 

「なあアリサ…お前は、俺を犯罪者にしたいのか…?」

口を塞がれたまま首をふるふると左右に振る私

冷静になって考えてみると随分大胆すぎるセリフを叫んでいたような気がする

あ…暖かい…でも

お兄様の手が…その、自分でも大きさは自信がないけど形はいいと思う−
な私の胸をほとんど握るようにして体を支えているのに気がついた

「むーむー」

「ん? ああ、すまん」

手を離され、吐いた息は自分でもわかるほど甘い物だった

「はぁ…あふ…お兄様」

多分紅潮してるであろう顔をお兄様に向けて息を吐いた

ああ…このままもしかして…

私の思考は果てしなく動き出す

人気のない廃ビル群、音といえば風と瓦礫の欠ける音のみ

そんな中私はお兄様の手に抱かれているの…

しかも二人の体はとても熱くて、たくましい手が私の大事な胸を鷲づかみに…

ああっ、いっそのことこのまま私を食べちゃってくださいお兄様っ

「で、そこに隠れてるのは誰と誰だ?」

 

 

恭也の殺気にあてられ、出てきたのは二つ

片方は妙に小さい

「あ、あのっ。覗き見してたわけじゃっ」

「なんだ、那美さんですか。こんなところでどうしたんですか?」

恭也は相手を確認すると警戒を解く

那美の足元にはとことこと久遠が子供Verでついてきていた

「仕事を一つ終わらせてさあ帰ろうかというところで駅前で恭也さんを見かけたもので、
一体何をしてるのかとついあとを・・・必死に走っちゃいました」

よほど疲れたのか、今も少し息が荒い那美

「なんといったらいいのか…その」

恭也が返答に苦しんでいるとアリサが口を開いた

それまでアリサはぼうっとしていただけに油断していた恭也はふさぐことが出来なかった

「お兄様ぁ…続きをしてくださいぃ〜」

「「・・・」」

未だに妄想の中なのか、惚けたような甘い声でため息をつくようにつぶやくアリサ

同じ無言でも胸中はまったく違った

(またか…どうしたというんだ、アリサは…)

(続き…真っ赤な幼女と恭也さんが続き…甘い声…続き)

−ぷちっ

なにやらコミカルな切れ方をして那美のまとう雰囲気が一瞬で入れ替わる

「っ!?」

慌てて恭也がアリサを抱えて間合いを取るぐらい強烈な殺気であった

 

 

「どーいうことですかーきょょょーうぅぅぅぅやーぁぁぁぁさぁぁーぁん〜…」

何時もの温厚でドジ(失礼)な那美さんとは想像もつかない強烈、
かつどす黒い殺気が俺に押し寄せる

「はえ?」

それにあてられたのか、アリサも正気に戻ったようだった

きょろきょろと周囲を見渡し、那美さんを見るとなぜか面白そうに俺に抱きついてきた

ビビクッ

那美さんはそれを見ると余計にこめかみを引きつらせ、
俺をびしっと指差した

「美由希さんから愚痴を聞いたときはまさかと思いました。信じていました。
今のだってただのこどもの面倒を見てるだけだと思ってましたっ!」

くぅん?と首をかしげて、おどおどと後ずさりする久遠の首根っこを捕らえて抱えつつ那美さんは叫ぶ

「でも愚かでしたっ! 幼女とお付き合いしてるばかりかすでにABを通ってその…お手つきにしようとしていたなんてっ!!!」

なにやらヒートアップしていく那美さん

久遠は腕の中ですでに恐怖に震えている

「敢えてどじっこのイメージを意識させて優しく虜にしようとしてたのにっ! 久遠、やっちゃいなさいっ!!!」

「く、くぅん?」

怯える久遠に一発で言ってる意味が通用するはずもなく(というか俺もよくわからん)
久遠は怯えて見上げるだけだった

「いいからっ! 最大で電撃っ! お仕置きするわよっ!?」

「くぅん!? きょうや・・・ごめんなさい・・・おしおき・・・こわい」

涙目で久遠は俺に向かって指を突き出した

とっさに回避をすると轟音とともに周囲をプラズマの光が満たす

「ちょっ、無茶です。那美さんっ!」

「大丈夫です。このあたりは再開発のための廃ビル群ですから壊れたって文句は出ません!」

俺の説得にも那美さんは叫び返し、久遠に攻撃をさせつつ自分も霊剣を構える

やばいっ!?

「神気はっしょーーーーーーーーー、あひゃぁっ!?」

高ぶったままの行使は問題があったのか、突然周囲に光が散り、ビルに突き刺さった

そして…

−ズゥゥーーーーンン

「く、くおーんっ」

「!?!?!?」

崩れ落ちるビル、那美さんを守るようにして大人になる久遠

もうもうとあたりに煙が満ちる

収まってきたかと周囲を監察するとすでに遠くからサイレンが鳴っている

「…遺憾ながら戦略撤退を行う。すまん那美さんっ」

今の那美さんは普通ではない

普段なら一応助けるところだが今は久遠も一緒だし大丈夫だろうと
冷や汗をたらす自分を納得させてその場を去る

 

 

 

 

「今日はなにやら散々な1日だったな…」

湯船に体を沈めて俺はため息と共に吐き出す

「美由希といい那美さんといい、一体どうしたんだ? 今日はアリサもなにやら変だったし」

一人悩んでいるとガラス戸に人影が写る

「聞こえてますか?」

アリサの声だった。どうしたのだろう

「ああ、どうした?」

俺が返すと、しばらく無言があった

「その…私のこと好きですか?」

「…ああ、好きだぞ? 昼間も言ったじゃないか」

答えるとガラス戸の向こうのアリサが震えた

「そうじゃないん…です。私はお兄様のことが、好きです。
なのはのお兄さんではなく、一人の男性として」

「なっ…」

湯船の中で俺は固まった

アリサの答えが想像の範疇にあるものではなかったからだ

だがようやく納得がいく

最近周囲の女性陣に叩き込まれたせけんのじょ−しきとやらに
当てはめていけば状況は大げさすぎるが該当するものがあった

「ませてますよね? まだ私は子供なのに…。
でもこの気持ちは本物です。もう一度聞きます」

ガラっとガラス戸が開き、バスタオルで体をつつんだアリサが真剣な表情で俺を見ていた

「私を、アリサを好きですか?」

揺れる瞳、目じりにはすでに涙がたまっている

鈍感な俺でもこれに間違った答えを返してはいけないと分かった

俺は…どうなのだろう

昼間アリサに好きかといわれた時すぐにああ答えた

だが本当にそうだろうか?

子供だからと最初からそういう勘定に入れていなかったつもりになっていただけではないのか?

そのつもりで実は…

そして思い出す

『じゃあ来なかったかもしれないんですか?』

俺はあの時なんて答えた?

そう…答えは自分ではわかっていたはずだ

ザバッ

「ああ、なのはの友達としてではなく。アリサが好きだ」

そして俺は覚悟を決めて少々情けない姿ではあるがそう答えた

と、アリサが泣き出すかと思いきや何かを凝視するように固まっていた

一体どこを…しまったっ

「いや…すまん。つい…な」

「あは…はは…その、たくましいです」

「む、ありがとう…でいいのか?」

我ながら的外れな応対をしつつその時間は過ぎた

その後は二人してあったまった後、出てきたところを家族に見つかり騒動があったことは言うまでもない

 

 

 

−一方

 

「ううっ…恭也さんがろりこんだったなんて…しくしく…さすがに縮むことはできませんよう…」

まだ瓦礫の中で那美は泣いていた

「くぅん…くおんも…あそぶ…なのはと…あそぶ」

方や事情を理解しないままみんなでなにやら遊んでいるのだと考えた久遠は
明日にでもなのはと自分も遊ぶのだとうきうきするのだった

 

 

 

 

続くってか今回はおしまい

 

 


あとがき

 

いやー…まともにラブコメできませんでした(´Д⊂)

ファンの人ごめんなさいっ

楽しんでくれた方がいたらそれで最高です(w;

 

よろしかったら感想やら展開の希望等、お待ちしています