カノン大戦α
〜戦場を駆ける奇跡〜
第九話
〜夕日の中の死闘〜前編
アーガマ部隊と離れ一路ジャブローへと向かう祐一達
「暇だ…」
俺はブリッジで暇を持て余していた
艦長とはいえ、さすがに暇なのか美汐も眠そうだ
眠いなら寝ればいいと思うのだが食事等以外はここにいるようだ。
一応オートパイロット(あらかじめ決められた航路を通るプログラム)
なのでいなくてもいいのだがいつ敵襲があるかわからないためだろう
しかし…
正直、海上でそうそう敵に出会うわけもなく
二日目の昼を海の上で迎えていた
「ん? 何の音だ?」
何気なく修練用区画(舞が欲しがったため施設や器具を整えた)を
通りかかった俺の耳に金属の撃ち合う音が聞こえた
舞が練習をしているのだろうか?
俺はそう思い寄ってみた
「お〜い舞? ってマサキ?」
俺が見たのは舞とマサキが鋭い剣技の応酬をしているところだった
言葉を失った俺と近くにいたみんなの前で
二人の剣の舞は続く
所詮我流だった舞もちゃんとした教えを受け、
持ち前の正直さで腕もちゃんとしている
マサキはその舞と打ち合っているのだ
試合というよりなにかの芸のように美しい動きだった
しばらくして二人が離れた
「…休憩」
「ああ、おっ、祐一も来てたのか?」
タオルで汗をふくマサキがこちらを見る
「暇でな…にしても剣がうまいんだな」
俺は感心して聞いた
俺は十分ぐらいしか舞相手では持たない
「一応ゼオルートのおっちゃんの手ほどきはたっぷり受けたんでね…」
さすがにマサキも少し表情を曇らせる
彼の師匠であり第2の父親のような人…
会って見たかった、俺は心から思った
「ところで祐一、一つ聞きたいんだが…」
「なんだ?」
マサキが目を合わせる
「舞はなにか不思議な力でも持ってるのか?」
「へっ? どうして?」
マサキは頭をぽりぽりと掻いて
「いや、剣を交えてるときに舞の回りになにか
ぼんやり光を見たような気がするんだが…」
「はぁ…舞、心当たりはあるか?」
「…無い」
さっさと着替えて隣にいた舞はつぶやいた
「だそうだ」
「そうか、気のせいか…」
「ねえ祐一、まだつかないの?」
真琴もさすがに暇そうに聞いてくる
「あと四時間もすればつくはずだが」
「確かジャブローって南米でしたよね?」
俺の言葉に続いて佐祐理さん
「ええ、自然の洞窟を利用した堅固な要塞ですよ」
俺は知っていることを答える
「果物とかは近くにあるのかな?」
「さあな、ジャングルにはあるんじゃないか?」
名雪を見て言う
「もしあったらお母さんにジャムにしてもらおうっ♪」
既に見つけたかのように名雪は笑顔になる
「珍しいアイス、無いでしょうか?」
「あるわけ無いでしょ…軍事施設なのよ?」
栞の発言に香里の冷静な突っ込みが飛ぶ
「うー、そんなこと言うお姉ちゃん嫌いです…」
すねる栞
「あっ、じゃあたい焼きも無いんだ…」
「アイスはともかく、たい焼きがあるかっ!」
いつものボケにいつもの突っ込み、おおむねここは平和だった
〜ジャブロー〜
『極東支部の部隊が向かっているだと?』
「そのようです」
ジャブローの一角、ティターンズ専用区画
その場所ではモニター越しに二人の男が密談をしていた
『到着予定の部隊はこれで間違いはないのだな?』
「はい、水瀬少将の甥を隊長とする独立部隊です」
男、ベン=ウッダーはそう言った
『ちょうど良いではないか』
「はっ? と言いますと?」
ウッダーはモニターの向こうに聞き返す
宇宙から降下予定のバスク大佐は笑みを浮かべながら答える
『反乱を起こした部隊の鎮圧と再発防止のための措置、
きわめて自然に我々がジャブローを制圧できる』
「…ジャブローの駐屯部隊はいかがしますか?」
『数時間後にジュピトリアンの部隊が降下する。
それに先んじて行動を開始、合流し虫けらどもは始末しろ』
表情を変えずに言い放つバスク
「…了解しました」
『ぬかるなよ』
それを最後に通信は切れる
「これが仮にも連邦のすることか?…」
ウッダーはうめきながらもジャブローに
待機しているティターンズの部隊に召集をかける
到着予定まであと二時間…
〜グレイファントムサイド〜
「わあ〜っ!」
「祐一、綺麗だね…」
「まるで燃えてるみたい…」
あゆ、名雪、真琴がそろって感嘆の声を漏らす
俺達は肉眼でジャブロー本部のある地点を見れるところまで来ていた
「確かに…っ!? 美汐、なにか嫌な予感がする…
総員を第一種戦闘配置につかしてくれ」
俺の言葉にブリッジにいた全ての人間が表情を変える
それはあゆや栞、舞も例外ではない
「祐一さんを信じます。香里さん、通信を」
香里が艦内に通信を繋ぐ
「総員に告ぎます。これより本艦は第一種戦闘配置につきます。
各員戦闘配置についてください。恐らく相手はティターンズです」
この艦のクルーは全て岡長官の意見に賛同するものだけが
乗っている。すぐに納得し、配置につく
「香里さん、栞さん、二人もMSの準備をして戴けますか?」
「そうね、ジャブローで何かをしようとする人達が相手、となれば」
「敵の数は3桁を超えるでしょう」
冷静な二人がそう分析する
「さあ行くか、みんな」
駆け出す俺に続いてみなもMSデッキに向かう
「森を染めるのは夕焼けか血の色かってか?」
つぶやく俺の耳にブリッジから回された通信が聞こえる
『若いな、まあ関係無いがな。すまんが
ここから先に行かせるわけにはいかん』
「なぜです?」
『君達は謀反者としてここで死ぬからだ』
「なっ!?」
絶句する美汐をよそにジャブローに轟音が響く
「ジャブロー各地で戦闘を確認っ!!」
オペレーターの声が響く
「来たかっ! 相沢祐一、ゼロ、出るっ!!」
地形の問題で俺達はドダイに乗っている
とにかく平地にたどり着かなければ空中戦は不利だ
「キャニーっ、敵の索敵頼むっ!」
俺を先頭に編隊を組み直進する
「了解っ!」
キャニーは俺に答えグレイファントムと共同で索敵を始める
「…判明しました。敵性行動を取っている部隊は、ガルダ級スードリ1機、マラサイ28機
可変MSアッシマー12機、同可変MSギャプラン8機、ハイザック40機、計89機です」
「ぐはっ、これまた凄いな。防衛側のほうは?」
「ミデア12機、ジム�Uが10、ジェガンが20、ガンタンク�Uが8、圧倒的ですね…
特に母艦が出ていないところを見ると直接のジャブロー制圧が目標のようです」
この戦力差じゃあ時間の問題か…
「とにかくやるっきゃ無いっ! マサキっ、舞っ、一緒に来てくれ。
あゆと名雪は左、香里と佐祐理さんは右を、栞と真琴は後ろを頼む」
『了解っ!』
激しい戦闘の真っ只中に進入を試みる
「美汐、とにかく敵の数を減らしてくれっ!」
「わかりました。砲撃主、メガ粒子砲の出力調整、施設を削り過ぎないようにしてください。
メイン、サブ、全砲門開けっ! 発射っ!!」
号令に答え光の奔流が敵に襲いかかる
ハイザックやマラサイを巻き込み爆音を上げる
「生きて帰るぞっ!」
俺は叫んで二人と一緒に前方へ突っ込む
「いけっ、チャクラム・ソードっ!」
俺は脳裏に軌道を描く
両肩から飛び出した戦輪はこちらを振りかえるまもなく
ハイザックの3機を切り裂く
「はあっ!」
動揺する敵を尻目に舞が俺のわきをすりぬけ
生い茂る大木ごと1機のマラサイを仕留める
切り裂かれ倒れる大木
すでに平地のため、ドダイから降りていた
俺は仕留めた機体の爆発を確認した
その瞬間木々の間から赤いビームが迫る
とっさに避けるがいくつかはゼロの装甲を削っていった
「くっ、かすっただけだ。まだ行けるっ!」
手早く相手をモニターに収める
ハイザック…ライフル装備型かっ!
「そこで落ちてろっ!」
俺は叫んでライフルを放つが木々に阻まれて思うようには当たらない
「祐一っ、避けろっ!」
マサキの叫びに俺はとっさに回避行動を取った
避けたあとに太いビームが突き刺さり地面をえぐる
「上空よりアッシマーの大型ビームライフルです。
ちょっとやばいですね…」
「…祐一、飛んで」
「わかったっ!」
俺は舞の考えを悟りブースターを吹かせ上空へと舞いあがる
アッシマーからのビームがゼロに迫る
「シールド起動っ!」
イメージを読み取りゼロはピンクの膜に包まれる
「私の剣は大事なものを守るためのもの、祐一はやらせないっ!」
舞は手早く外部ユニットのサーベルを伸ばす
気づいた敵からとび来るビームがそばを通り装甲を溶かす
「あなた達は戦うことの意味がわかっているの?…斬っ!!」
安定した長い刃を構え、確実にビームをかわしまとめて相手を切り裂く
「…生きる理由、私にはそれがある…」
舞は上を見上げる
円盤のようなアッシマーを見据えミサイルのロックをする
「避けきれるか?」
俺はつぶやき発射する
さすがに可変型MS,予想以上の機動力でかわそうとする
追いすがるミサイルを次々と避けるアッシマー
「こっちにも気をつけなきゃなっ! ブレードっ!」
チャクラムはブレード状態となりゼロの手に収まる
アッシマーが気づいたときには目の前にいた
「悪く思うな、せいっ!」
緑の刃は二つに敵を切っていた
マサキもまた、1機のアッシマーを撃墜していた
「次だっ、行くぞっ!」
俺は着地し、前へ進む
舞は頷き、マサキは機体を空中へと躍らせる
〜あゆ&名雪サイド〜
「あゆちゃん、無理はだめだよ?」
「うぐぅ、名雪さんもね?」
二人は吹き出し、すぐに表情を改める
「レーダーに反応、行こう」
「うんっ!」
あゆは敵を確認するとすばやくライフルを放つ
木々に遮られるものの、相手を驚かせるには十分だ
「止まらないでっ、動きながらだよっ!」
あゆは名雪に叫びながらもめまぐるしくその位置を変える
「わかったよ。…はずさないよ」
名雪は左右に機体を動かしながらも正確に敵を狙う
「今っ!」
名雪のライフルは4機の緑のハイザックを連続で貫く
気づいた敵が乱射してくる
むちゃくちゃだが確実に何回か当たってしまう
「うー、栞ちゃんの改造してくれた機体に傷つけちゃったよ…。お返しっ!」
名雪はグレネードを放ち、モニターに映るマラサイと
ギャプランにねらいを定める
それをかわす2体
「後ろががら空きだよっ!!」
あゆの声が響きマラサイは後ろからあゆのライフルに撃ちぬかれる
爆音、衝撃波
名雪はその動きを一瞬止めてしまった
ギャプランからメガ粒子砲の輝きが名雪に迫る
辛くもかわしたもののシールドが融解する
「うっ、まだだよ。こんなことじゃ祐一を守れないもんっ!」
少なからずダメージを負ってしまったようだ
「ボクの友達を傷つける人は許せないっ!」
あゆのサーベルと名雪の反撃の一撃が上昇しようとした
ギャプランに当たったのはほぼ同時だった
光を失い崩れ落ちるギャプラン
「敵はまだいるんだ。行こう?」
「そうだね、がんばらなきゃっ!」
頷きあい、さらに進む
〜佐祐理&香里サイド〜
「サポートは任せてくださいね?」
「お願いします」
香里は汗ばむ手元をぬぐいながら答える
「っ!! 香里さん、避けてっ!!」
香里はその場を飛びのく
一瞬後、太いビームが通りすぎる
「来ましたよ。敵さんです」
佐祐理はつぶやき顔つきも真剣なものになる
モニターにはアッシマーとハイザックが映っていた
「ここからさきは行かせませんよ」
ライフルを撃ちながら自分に近いMS状態のアッシマーに迫る
うろたえる相手を一閃の元に切り裂く
「香里さん、援護をお願いします」
佐祐理は言い放ってハイザックに迫る
「はいっ!…当たってっ!」
香里は必死にねらいを定め撃つがなかなか当たらない
「落ちついてよく狙ってください。きゃっ!!」
「倉田さんっ!!」
意識をそらした佐祐理に横から別のハイザックのライフルが遅いかかる
「舞やみんなと約束したんです。生きるってっ!」
次の攻撃をかわそうとするが当たり所が悪かったのか
すぐに出力は上がらなかった
ねらいを定めるハイザックの銃口に横からビームが突き刺さり
大きな爆発を起こす
「香里さん?」
ほうける佐祐理の前で香里は始めのハイザックをサーベルで切り裂く
「大丈夫ですかっ!?」
香里の顔がモニターに映ると
「はい、助かりました」
「いえ、落ちつけって言う倉田さんの助言のおかげです」
香里はテレながら言う
「ふふっ、じゃあ行きましょうか?」
「ええ」
調子の戻った佐祐理を先頭に進軍を再開する
〜真琴&栞サイド〜
「来たわね」
「ええ…」
二人は後ろを振り返る
グレイファントムの後ろから迫る敵を倒すのが二人の役目だ
「栞…」
「わかりました」
二人に余り言葉は要らない
「行くわよっ!」
真琴は叫んでけん制のライフルを茂みに放つ
「見えますっ!」
栞は相手の動きを読み、ライフルを連射する
すいこまれるように飛び出たマラサイへと直撃する
爆発、舞いあがる煙
「左っ?」
レーダーが役に立たないにもかかわらず
真琴と栞は敵の位置を察知する
「遅いわっ! ショット・ナパームっ!」
脳裏に拡散する弾をイメージする
そのとおりにはじけた弾は広範囲を燃やし、
ハイザックとマラサイの姿を浮かび上がらせる
「真琴の相手は百年速いのよっ!」
真琴は叫び正確にねらいを定め敵を貫く
栞もそれに続き瞬く間に敵は倒れる
「ふふんっ、弱いわね…」
余裕の笑みを浮かべる真琴
「真琴さんっ、よけてっ!!」
「え?」
栞が自分の機体を真琴のそれの前に出し
シールドを構える
飛び来るメガ粒子は栞のシールドによってぎりぎり防がれていた
「私の整備能力を甘く見ないでください」
栞は不敵に微笑む
元のままのシールドなら途中で溶けていたほどのエネルギーだった
二人の前方には新緑のギャプランがあった
「危ないわね〜っ! 落ちなさいよっ」
真琴は部隊最速の運動性を活かし、間合いを詰める
「ふっ…はぁっ!」
勢いそのまま真琴のサーベルは反応できないギャプランを切り裂く
方向を転進し、すぐに栞の元へと駆けつける
「助かったわ」
「助け合うのは当然です」
栞は微笑んで機体をグレイファントムへ向ける
「祐一、がんばってね」
真琴もそれに続く
〜マサキサイド〜
「へへっ、借りは返さなきゃな」
マサキは一人でつぶやきモニターを見据える
すでにその機体は空へと浮かんでいる
「来たニャっ! 二時の方向っ!」
MA状態のギャプランがその加速を活かし迫る
「風の魔装機神をなめるなよっ、行くぜっ!」
けん制にミサイルを放ち、すれ違う
「ほらほら、後ろはどうしたっ!」
メガ粒子砲をかわされ、方向転換しようとするギャプランに迫る
「ディスカッターの切れ味、その身で味わいなっ!」
陽光を反射し、真っ赤にそまる剣がギャプランを二つに切り裂く
「遅いっ、こんなものかよ」
叫ぶマサキに答えるようにアッシマーが2機、上昇してくる
「そうでなくっちゃ、覚悟しなっ」
サイバスターを加速させ、アッシマーを迎え撃つ
夕日の中でもその青さは変わらず、風を切っていた
〜グレイファントムサイド〜
「連邦残存兵力はどのくらいですか?」
「待ってください…っ! 艦長、その残存兵力の部隊から通信です」
慌てたオペレーターの声が響く
「繋いでください」
「はい」
スクリーンに映されたのは若い男性だった
『時間が無い、用件から言いたい。君達の部隊に
私達がここを脱出するまでの護衛を頼みたい』
「護衛?」
『そうだ、ここは落ちる。だが無意味に命を落とす必要はない。
生きたいと思うもの達を少しでも多く救いたいのだ』
美汐は暫し相手を見つめ
「わかりました。私達も一緒に脱出します」
『ありがとう。私の名はハット、私達が集結しているのはNフィールドだ』
「了解です」
美汐は通信を切り、すぐに祐一達に繋げる
「聞こえますか? 連邦の残存兵力と共にジャブローを脱出します。
彼らの護衛を優先し、Nフィールドに集結してください」
「了解っ! 舞、つかまれ」
舞がゼロにつかまったのを見ると
「落ちるなよ。ゼロ、高速機動モードっ!!」
ぐんとスピードを上げNフィールドへ直行する
ほかのみんなも次々と動き出す
「艦長っ!! 新たな敵影を上空に確認っ!!」
「そんな…」
呆然とする美汐の視界の中、いくつもの黒点が空に生まれた
後編へ続く
あとがき
ユウ「ゲームではあっさり落ちたジャブロー、その詳細を
彼らに語ってもらいます」
祐一「有名パイロットは出てくるのか?」
ユウ「そのせいで次は大ピンチだ」
祐一「そうか、みんなを悲しませないためにも生きてみせるっ!」
ユウ「ふぁいとだっ!」
???「俺の出番はまだか?」
ユウ「次だ、楽しみにしていろよ」
???「おうっ! 待ってろよ、美坂〜っ!」
ユウ「ばればれじゃん…」