カノン大戦α
〜戦場を駆ける奇跡〜
第十一話
〜冷たい世界〜
祐一達は大西洋を越えて一路ヨーロッパへと向かっていた
グレイファントムMSデッキ
「ミノフスキードライブユニット、ですか?」
アムロ大尉が見て欲しいといったものを見上げる
「そうだ、今のところの調査結果では大気圏内での空中浮遊を可能にするはずなんだが
シャイアンにあったMSでは出力が足りなくてね。実験もできなかった」
新ガンダムの開発のためにいくつもの試作パーツが
アムロ大尉の元にあったらしい。これは敵対勢力(連邦から見れば、だが)
の工場から奪取され、調査に運び込まれたものだということだ
パーツの使えそうなものは現在名雪達の機体に取り付けられている
「それで俺にどうしろというんですか?」
「ああ、ゼロで実験してみて欲しい。ゼロの出力なら十分なエネルギーが出せると思う」
「私達のジェガンはもうぎりぎりだからね〜」
横で聞いていた名雪がつぶやく
名雪達のジェガンカスタムの武装は本来もっとジェネレータ出力の大きいガンダムタイプ用の武装らしい
そのためにジェガンではかなりぎりぎりの使い方をしてるようだ
「大尉、ユニットの起動に必要な条件を教えていただけますか?」
キャニーが静かに降り立ちながら(ホログラフなのだから当たり前だが)聞く
「わかった。ついでだから直接データを入れる」
大尉はゼロのコックピットに入り、ディスクを差し込む
「・・・・・・読み込みが終わりました。ええ、ゼロなら可能ですね」
その言葉を聞いて大尉は満足そうな顔をする
「よかった。一つ注意して欲しいのはまだミノフスキー粒子がバーニア部から漏れるということなんだ」
「漏れる? ミノフスキー粒子が?」
俺はすぐに聞き返した
「まだその辺りが未完成らしい。まあ問題は無いんだが・・・」
確か?そう大きな問題にはなりそうに無い
「逆に利用もできそうですよ?」
「栞、どういうことなんだ?」
俺はそばに来た栞に聞く
いつもならもっと時間がかかるのだが栞を手伝ってくれた機械好きのアムロ大尉は
パイロットとしての経験と合わせて的確な指示を出し、今回はいつもよりも早く修理が終わっていったのだ
「まだ実際にやってみないと判りませんが、漏れる粒子を使って攻撃が行えるんじゃないでしょうか?」
俺はその言葉の意味に気が付いた
「もしかして佐祐理さんのシールドみたいに物理的な影響を与えられる?」
俺は戦闘データで見た佐祐理さんのハエ叩き(笑)を思い出す
「そういうことです。一応漏れる量がデータ通りならハイザック辺りはあっさり破壊できる威力になりますよ」
「・・・・・・なんかすごいな」
「ええ、味方を巻き込まないように気をつけて使いましょう」
しばらくその効果がどんなものになるのか、形状やなんかを聞いていた
『相沢少尉、アムロ大尉、ブリッジに上がってください』
最近MSのパイロットへ転向しようと考えている香里のかわりを勤めるオペレーターの声がする
「美汐、なにかあったのか?」
美汐は俺の言葉に真剣な顔をして
「あれを見てください」
言われて前のモニターを見る
見えるのはヨーロッパの土地、そして遥か先に見えるいくつもの黒煙だった
「煙??・・・ずいぶんと多いな」
大尉がつぶやく
「はい、火事・・・とは考えにくいのですが・・・どう思います?」
確かに一箇所ならともかく、見た限り数キロは離れた地点でも
同じように煙が上がっている。これは恐らく
「戦闘の後か、最中か」
「ですね」
俺と大尉はうなずき合う
「例の未確認部隊でしょうか?」
「それはわからないが、偵察の必要はあるだろうな。行こうか、少尉」
美汐の質問に大尉は答える
「判りました。美汐、みんなに伝えておいてくれ」
「念のためにこちらも戦闘配置についておきます」
美汐の答えに大尉は満足して俺と一緒にMSデッキへ向かう
「アムロ・・・ガンダム、出るっ」
「相沢祐一・・・ゼロ、いきま〜すっ!」
左右のカタパルトから二機が射出される
「これは…」
「一体何が…」
さすがの大尉も言葉を無くしているようだ
二人の前には崩れ落ち燃え盛る建物、切り裂かれた車
そして…
無残に散らばるかつて人間であったもの達の肉片だった
「くっ、これが敵のやり方か…」
「こんなことが…」
子供も、大人も老人も男女の関係無く無差別に殺されている
車の中にいる人もそれごと何かに引き裂かれた後があった
「許したくない、絶対に。これが、これが人間のすることかよっ!!」
自分を盾にしようとしたのだろう、
子供を抱きかかえるようにして息絶える母親が目に入った瞬間叫んでいた
「っ! 何かが来ますっ!」
キャニーの言葉に二人はその場から飛び去る
後に来たのは
「なんだ!? 車輪!?」
俺の目に映ったのは高速で回転する刃のついた円形のものだった
「形状、動きから推測すると無人の殺戮兵器の様です。サーチ結果から
おそらく対人間、およびMS用の熱探知によるセンサーを備えているものと思われます」
こいつがこの惨劇の犯人…
しゃべっている間にも次々とそいつはこちらに向ってくる
「とにかく撃墜だ」
「了解っ!!」
大尉に答え、俺はチャクラムソードを二本両腕に構えてサーベル状にする
「こんなものに当たるかよっ」
飛びまわるそいつらを手早く切り裂く
やつらは見た目どおり装甲は薄かった
「キャニー、近くに敵反応は他に無いか?」
アムロ大尉の声にキャニーは索敵を始めた
優位にあるものの、二人の戦いにもやつらは一向に数が減った気配が無い
「くそっ…っ!?」
『祐一っ!』
『祐一君っ!』
声が俺のコックピットに飛びこんできた
「真琴、あゆっ! もしかしてみんなも来たのか?」
いったん間合をとって聞く
「うんっ、香里さんと栞ちゃんは残ってるけど」
あゆの言葉に頷きながら奴らを攻撃する
そんな俺の脳裏に何かが伝わる。どす黒い負の感情…
これは…あっちかっ!
「大尉、あとは任せます」
俺は叫んでミノフスキードライブの出力を上げる
目指すは北、そこから何者かの感情が伝わってくる
「反応ありました。所属不明機、8機です」
キャニーの報告と一緒にモニターへ映像が映る
敵は前に見たプロペラを構えた機体とフライパンのような形をした機体だった
「キャニー、奴らに通信を繋いでくれ」
すぐにモニターが現れる
『貴様、なにものだ? 我らの邪魔をするのか』
「邪魔、だって? あんなことをする奴らの手助けなんてしてたまるかよっ!」
俺は前に映る金髪の男に叫ぶ
『あんなこと? ふんっ、居座りつづけて地球を汚すような奴らに生きる権利など無い』
「権利が無いだと…貴様ら…それでも人間か?」
俺の脳裏に惨劇が浮かぶ。家族をかばい、一番前で切り裂かれた父親、
体中切り裂かれ、ただの破片になってしまった人間。
絶望に顔をゆがめ、息絶えた人たち…
俺だって人殺しだ…戦争だっていうこともわかる…
だからって…こんな無差別なことがあってたまるかっ!
『これ以上話すことは無い、死んでもらおう』
「許さない。お前は絶対に許してたまるかっ!!」
俺の感情に答えるように体の中から力が出てくる
「…念動力が上昇してるの? これが祐一さんの…」
キャニーのつぶやきは祐一には聞こえなかった
「うらむんなら自分を恨め、後悔できる時間を与えるつもりは無いっ!」
叫んでスロットルを握る
「キャニーっ! ミノフスキードライブユニット、フルドライブっ! 一気に片付けるっ!」
俺はキーワードを思い浮かべ、システムを起動させて突っ込む
「くらえっ、セラフィックダイブっ!!」
シミュレーションを見せてもらったときに考えた技名を叫ぶ
音速を超える衝撃波と高密度のミノフスキー粒子、
加えてミノフスキー粒子に放ったメガ粒子が左右にゼロの6倍ほどの大きさの衝撃となった
ゼロが駆け抜けた後、天使の翼のように広がった光が奴らを襲う
『ちっ、退却だ』
フライパンは一番後ろにいたせいもあって攻撃の余波だけですみ、
即座に飛び去っていった
「ちっ…逃がして…うっ…」
俺はシステムの負担から気を失ってしまった
「祐一さんっ!? 大変、艦長っ!」
キャニーは即座に美汐へと連絡した
「うっ…医務室?」
「あっ祐一〜目が覚めたんだね」
「…よかった」
名雪と舞の声がした
「俺は…そうか」
気を失ったことを思い出す
「祐一っ、目が覚めたって…本当だっ!」
「うぐぅ、大丈夫?」
「あははーっ、心配かけてはだめですよ〜?」
すぐに騒がしくなった
「あの変な車輪は片付けたのか?」
俺は疑問を口に出す
「うんっ、がんばったよ」
答えた名雪の顔が暗くなる
「でも、誰も助けられなかったね…」
みんなも一様に暗い表情になる
「起きたことを後悔するよりも同じことをさせないために努力した方が良い」
「大尉っ」
アムロ大尉が部屋に入って来た
「あのままというのも不憫だからね。全部燃やしたよ」
その言葉からすれば結構長い間気を失っていたことになる
「そうですか…何か用ですか?」
「ああ、動けるか?」
俺は頷き立ちあがる
「…支える」
舞が俺の肩を抱えてくれた
「ありがとう」
舞は照れて赤くなってしまった
「あれっ? あの人たちは?」
MSデッキには見覚えの無い人達がいた
子供や老人も混じっている
「彼らはカラバの支援組織『リガ・ミリティア』だ。
ご老人達はメカニック、あそこにいる男の子はパイロットだそうだ」
俺はその言葉に驚く、どう見ても中学生ぐらいだからだ
「おっ、アムロ大尉。その少年かね?」
グループの中から一人の男性が前に出てきた。雰囲気からして代表なのだろう
「初めまして、相沢祐一です」
俺は頭を下げる
「初めまして、私の名はオイ=ニュング。実は頼みたいことがあるのだが」
「ちょっと待ってください」
俺は断ってから美汐に通信を繋ぐ
「どうぞ」
「すまない、たのみというのは我々と一緒に戦って欲しいということだ。
私達は母艦というものをここではもっていなくてね。どうかな?
MSおよびメカニックや物資の提供はするが…」
『私は賛成です。大尉や祐一さんはどうです?』
「目的は一緒のようだな」
「ええ、ニュングさんそのお誘いお受けします」
「そうか、ありがたい」
喜ぶニュングさんの後ろから老人達が近づいてくる
「少年、その機体達を見ても良いかね?」
指差すのはジェガンとゼロだった
俺は承諾する
説明を頼まれた栞と聞いている老人達はなにか輝いていた気がした
「あの…」
ん?
ふと見ればパイロットだという少年がそばにいた
「君の名前は?」
「あっ、ウッソ、ウッソ=エヴィンです。よろしくお願いします」
差し出された手を握る
「俺は相沢祐一。ずいぶん若いんだな」
俺はウッソに聞く
「成り行きですよ」
「俺もさ…」
その言葉を聞いてウッソが身を乗り出す
「祐一さんはどうして戦ってるんですか?」
「う〜ん、そうだな…守るため、かな?」
「守るため、ですか?」
ウッソが不思議そうな顔をする
「ああ、人類全体を…なんてことは言わないが、身近な…でも無くしたくない人たちを
この手で守る。手が届く限りの全ての人たちをね…」
俺は自分でかみ締めるように言葉を搾り出す
ウッソの顔が和らいでいく
「そう、ですよね。自分のできることを。守りたい人を守るのも理由ですよね」
俺はその言葉に気がつく
「おおっ? 誰か守りたい好きな人でもいるのか?」
ウッソは顔を赤くした
ふふっ、からかい甲斐がある
人のことは言えないくせに俺はしばらくウッソをからかっていた
続く
次回予告
再び合流する二つの部隊、
再開する敵と味方、祐一と往人の機体にはなにがあるのか?
再び謎が生まれる
次回
〜落ちてきた流星〜
あとがき
ユウ「ふぅー、ヒロイン達の出番が無くなってしまった11話をお送りします」
名雪「どうしてなの?」
ユウ「うむ、第一に敵の数。少ないから」
名雪「ほかには?」
ユウ「だって吐くだろ。あんな場面をゆっくり見たら」
名雪「う〜、確かに…みんなかわいそう…」
ユウ「今回はVガンダム冒頭シーンのバグを使用しました」
名雪「微妙にゲームと違うもんね?」
ユウ「そうです。ちなみにカテジナさんたちは一度降りた状態です」
名雪「じゃあ次はその場面?」
ユウ「いや、短いからあっても最初。一気に
ゲームで言えば『翼を持ったガンダム』に行く」
名雪「そうなんだ。今回登場したパーツだけど?」
ユウ「まあV2の光の翼と思ってくれ」
名雪「あゆちゃんじゃなくてもべただね」
ユウ「うるさい。ミノフスキークラフトといえばこれだろう」
名雪「でも連邦で開発してたの?」
ユウ「良いんじゃないか? 別に…いろいろな時代の技術が混じってるんだし
それに連邦で開発してたとは書いていない。アレはリガ・ミリティアの工場が
襲われたという設定だ。まああれしか残っていない状態の工場だけどね」
名雪「いいかげんだよ…」
ユウ「うっ…終わる」
二人『でわでわ〜』