カノン大戦α
〜戦場を駆ける奇跡〜
第十四話
〜偶然が導くもの〜
ヴィレッタ達との戦いの後、アーガマで俺と美汐、アムロ大尉とクリスさんはミーティングに参加していた。
「良いタイミングで君達と連絡が取れた。実はアメリカのテスラ=ライヒ研究所から
君達に連絡があってね、会えたら伝えてくれとの事だ」
「用件は聞いているんですか?」
ブライト艦長に俺は聞く
「確か…浩平君とかいったな、彼が新兵器の調整で用があるそうだ」
浩平が…そういえば別れるときにそんなことを言っていたな
「わかりました。ありがとうございました」
俺は答える
「補給物資の用意も出来ている。搬入させよう」
艦長のその言葉を最後にミーティングは終わった
〜グレイファントムMSデッキ〜
「えっ!? アムロ大尉はアーガマ隊に配属なんですか?」
物資の確認をしながらの栞が驚いた
「ああ、もともとその予定だったしね」
「残念です。いろいろ教えてもらえたのに…」
「栞ちゃん、ず〜っと会えないわけじゃないのよ?」
同じくアーガマ部隊に配属となったクリス少尉は言う
「そうですね、大尉。あちらに行ってもがんばってくださいね」
栞は笑顔で二人に微笑んだ
『栞ちゃ〜ん、この部品はどれのかな?』
「あっ、はいっ、あゆさんどうしました?」
あゆに答えてその場から立ち去る栞
「元気な子だね」
「ええ、でもあいつは去年までかなり体が弱かったんですよ?」
俺は少しさびしい顔をしていった
あの時の悲しみが蘇ったからだ
「そうか…祐一君。大変だろうががんばってくれよ」
「もちろんですけど…なんでそんなことをいきなり?」
「年長者としての忠告さ。日常も、そうでない時のことも含めてね」
真剣な中にも少しの微笑みを込めて大尉はそう言った
「はぁ…」
俺は意味がわからなかった
〜居住区〜
「はぇ〜、ウッソさんは向こうに行ってしまうのですか?」
「はい、みなさんと別れるのは寂しいですけど、アーガマ隊の人達のお話だと
技術者である母さんだったら宇宙の方にいるんじゃないかと言われたので…」
「うぐぅ…そっか、ウッソ君はお父さんとお母さんを探してるだったね」
「…確率は高い方が良いから…」
舞はそういった後ウッソの方を向き
「…がんばって。あきらめなければきっと見つかるから」
優しい、深さを持った笑みでウッソに微笑んだ
「…はいっ! ありがとうございますっ!」
ウッソもそれに込められた思いをしっかりと受け取った
「名雪さんにもずいぶんと…あれ?」
名雪はウッソの視線の先で顔を外に向けながら寝ていた
「気にしないで、名雪はいつもこうだから」
香里が苦笑して言う
「…そ、そうですか」
ウッソは唖然としながらもなっとくした様だ
日向の温かさに幸せそうな名雪だった
〜アーガマMSデッキ〜
「ほら真琴っ、きょろきょろするなっ!」
「あぅーっ、だってたくさん人がいるんだもん」
往人さんに話をしようと思って来たのは良いのだが真琴が後をつけてきたのだ
「北川も止めてくれればよかったのに」
俺がそう言うと
「いや〜…俺もどうなってるかが気になったし…すまん」
「はぁ…わかった」
俺はため息をつき、仕方がないので3人で往人さんに会いにいった
「え〜と…ここだな」
往人さん自身に教えてもらった部屋番号を確かめてノックする
コンッ、コンッ
「良いぞ」
「失礼します」
断ってから入る
「よう、元気か?」
「この前会ったばかりじゃないですか」
「それもそうだ…後ろの二人は?」
往人さんの視線が真琴と北川に向く
「あぅーっ、沢渡 真琴…パイロット…」
人見知りの激しい真琴らしい発言だった
「すいませんね、人見知りが激しくて…」
「いや、気にしてないさ」
往人さんはやわらかな微笑みで真琴を見る
「…祐一と同じ感じがする…」
真琴がつぶやく
「ほう? 鋭いんだな」
「大尉の話だとNTの素質があるようなんです」
「それでか…で、そっちの男は?」
「北川 潤、グルンガスト弐式のパイロットをやっています」
「(きゅぴーん)そうか…重力制御を利用した動き…良い素質を持ってるじゃないか」
同じグルンガストの操縦者の北川に興味を抱いたようだ
「そんな…まだまだです」
正面から誉められた北川は後頭部をぽりぽりと掻く
「よしっ、俺の今までの戦闘データのコピーを君にあげよう。何か得るものがあるだろうからな」
往人さんはそう言って手もとのコンソールを操作してしばらく打ち込む
「…コピーが終わるまで話がある」
視線が俺を向く
「実は俺がT−LINKをフルに使用するとある現象が起こるんだ」
「現象?」
俺にも何か起こるのだろうか?
「そう、誰か別の視点…女性だというのはなぜかわかる…そこは時間の概念が無い。
いつまでも同じ風景と…同じ時間が続く…空は星空のみだ…彼女の心を占めるのは
孤独…だが究極の…自分一人だけという孤独では無いようだ…限られた相手としかコンタクトが
取れない…そんな風景が悲しみと一緒に見えるんだ」
「いっぺんにそれが見えるの?」
真琴の表情が大人びる
「いや、長いときもあれば短いときもあった…どうやらT−LINKとの接続時間に比例するらしい」
「真琴?」
俺は真琴を見る…なぜ急に?
「祐一…私も同じようなものを感じたの…あの時…」
その言葉に音が消える
あの時・・・あゆと俺、真琴の3人がT−LINKを介して繋がったときか・・・
「何を見た?」
往人さんの声が静かに響く
「同じような風景をちょっとだけ…でも凄く遠い場所のような感じがした。
私だったから?・・ううん、栞でも多分見えると思う」
「…そうか、まあ俺の予測に過ぎないが念動力が強くなって制御できるようになれば
もっと詳しく見れるかもな。…おっ、終わったか」
スロットルから吐き出された記憶ディスクを取り出して北川に手渡す
「そろそろ搬入も終わるだろう」
往人さんはそう言って立ちあがった
「そうですね、行きましょうか?」
「あぅーっ、もう出発?」
真琴を立ちあがらせてドアを出る
「俺はちょっと持っていくものがあるから先に行っていろ」
「わかりました。行こうぜ、相沢」
「ああ」
3人が出た後
「祐一、お前が俺の見こんだとおりなら…いつかあいつと3人で・・・」
往人が手に取った写真立てには二人の男が映っていた
一人は往人・・・一人は・・・
「いろいろお世話になりました」
俺は敬礼する
『無事を祈っているよ』
ブライト艦長の通信がきれる
「グレイファントム・・メイン、サブ両エンジン始動っ!」
幾度のも実戦は美汐を急激に成長させていた
艦長らしい雰囲気を持った美汐の号令が響く
「索敵を怠らないまま研究所に向います」
その号令に従い加速が始まる
ブリッジにはメインクルーの内、美汐、俺、名雪がいる。
他は各自で整備や鍛錬中だ
「相沢少尉、少尉宛てに通信が入っています」
「え? 誰から?」
オペレーターの報告に聞き返す
「秋子少将です」
「…大丈夫だろ。メインに映しちゃってくれ」
秋子さんなら隠すような通信じゃないだろう
オペレーターの返事と一緒にメインスクリーンに秋子さんが映る
『祐一さん、お元気ですか?』
「おかげさまで・・・今どこにいるんです?」
変わりの無い秋子さんを見て安心しながら俺は聞いた
『みんなが来るところですよ。そちらの目標である北米テスラ・ライヒ研究所です』
いつの間に・・・と言っても暇は十分にあったな
『浩平さんたちも首を長くして待ってますよ。・・・っ!?』
秋子さんの言葉が途中で止まり向こうからの警報が聞こえる
「お母さんっ、何があったの?」
『どうやら敵さんの襲撃のようです。通信を切りますね。
浩平さんたちがいるのでたぶん大丈夫ですよ。それでもお早目の到着を望んでいますよ』
そこで通信が切れる
多分って・・・
「グレイファントム最大機動っ! 一分でも早く援護に向かいます。
総員対ショック防御。ちょっと揺れますよ」
「美汐、俺たちはMSデッキで待機してるぞ」
「ええ、そうしてください」
揺れに気をつけながら名雪と一緒に走り出す
「大丈夫だからな?」
「うん・・・そうだよね」
少し混乱している名雪を走りながらではあるがなだめ、MSデッキに滑り込む
「栞っ!」
「祐一さんっ、準備はできてますよ」
「そっか、さんきゅっ」
ぽんっと栞の頭に手を置いてゼロに駆け寄る
「もう、・・・子供じゃないんですよ」
その後、栞は自分で言った言葉の意味に自分で顔を赤くした
「キャニー、戦況をどう思う?」
「そうですね・・・行ったころには終わってるんじゃないんですか?」
「へっ?」
キャニーは資料らしい紙束を持ってつぶやく
ちなみにホログラフである
「浩平さんたちの実力とこの機体性能があればよほどの戦力差が無い限り生存しますよ」
そう言った後俺の前に各パイロットたちの情報が映る
「……ずいぶんいろんな系統の機体がいるんだな?」
「ええ、連邦の技術はもとよりカラバ、エウーゴ、アナハイム、リガミリティアに加え、
以前乗艦していたロメロさんのつてからサナリィまで・・・ほとんど最強ですね」
そうこう言ってるうちに研究所に近づく
『祐一さん、舞さんと一緒に先に行ってください。そのほうが早い筈です』
美汐の言葉に無言で頷きモニターで舞を見る
「行けるか?」
「・・・十分」
舞はつぶやいて壁から増設用の使い捨てブースターを取って装着する
まあ機体付属のブースターじゃ速く行けても後が困るな
「舞、祐一さん、がんばってね」
「舞さん、祐一君っ、気をつけてねっ」
「二人ともっ、負けるんじゃないわよっ」
「私もお姉ちゃんと一緒に駆けつけますから無茶はしないでくださいね」
「栞の言うとおりね、妹や親友が悲しむのは嫌よ」
「祐一、舞さんっ、ふぁいとっ、だよ」
「ああ、行って来るっ!」
「(コクッ)、祐一は・・・守るから・・・」
(自分の大切なものを守るためには捨て身でがんばれるところ・・・
それは舞の良い部分でもあるし嬉しいけど・・・心配なんだよ)
俺は舞のつぶやきにいつもそう思う
「祐一さん?」
「ちょっとな・・・相沢祐一、ゼロ・・・出るっ」
キャニーの声に軽く答えてゼロを動かす
「川澄舞、ジェガンカスタム・・・発進」
舞の機体もドダイに乗ってグレイファントムから離れる
「舞、準備は良いな?」
「大丈夫・・・」
「よしっ、キャニーっ、高速機動モードっ!」
「了解っ、同時にミノフスキードライブユニットの稼働率も上昇させます」
キャニーが俺に答え、ゼロの速さが増す
舞もドダイから飛び立ってブースターを吹かし、速度を上げる
目指すはテスラ・ライヒ研究所
〜研究所サイド、少し前〜
「祐一達が来る?」
秋子さんの部屋に呼び出された浩平を待っていたのは祐一達がここに来ると言うことだった
「ええ、今日中には・・・」
「そうですか・・・楽しみだな。どれくらいになったか」
浩平は秋子さんの知らせに思いをはせる
ろくな訓練もなしに手加減した自分たちと多少ながらも戦えた祐一
あの訓練は祐一達に撃破や回避等の必要なものを学ばせるものだった。
浩平達は手加減しただけではむざむざとやられるような実力ではないのだ
「あれがサイコドライバーか・・・。祐一ならあの力も・・・やめとこう、俺にはシリアスは似合わないな」
油断しきっていた七瀬が力を引き出された祐一に撃破されたのを思い出つつ、
浩平は苦笑してみんなにも伝えようと部屋を出る
「そう・・・私も楽しみね」
「女王様になっていじめるのか?」
「誰がよっ!!」
ごすっ
「ぐぁ・・・」
浩平の知らせに答えた七瀬をからかい、迎撃される浩平
「はぁ・・・浩平も懲りないよね」
「浩平ですから・・・」
『その通りなの』
うめく浩平を見て瑞佳、茜、澪が口々に言う
七瀬が浩平を地面にうつぶせにして背中を踏んでいるあたり浩平の言うことも間違っていないのかもしれない
「またみんなと食事したいな」
「みゅーっ、楽しみ」
みさきと繭は違うことに思いをはせていた
そして・・・
研究所に警報が響く
「敵襲っ!? 茜っ!」
浩平の叫びに答えるように放送が響く
『敵襲です。シャイン・シーズンのパイロットたちは迎撃してください』
無言で頷きあい格納庫に駆け出す
「折原浩平、リガズィカスタム・・・出るぞっ」
「長森瑞佳、FA・ガンダムMk.U・・・発進するよ」
「みゅー、椎名繭、ガンダムF90A・・・発進っ」
「川名みさき、陸戦型Vガンダム・・出るよっ」
『同じく発進なのっ』
「七瀬留美、陸戦用百式改・・・出るわっ!」
研究所の格納庫から五条の光が飛び出る
『敵はいつものティターンズです』
「了解っ、任せておけ」
司令所についた茜からの連絡が入る
『秋子さんが挨拶のついでにプロミス・リレーションへ増援を求めるそうです』
「そうか・・・必要ないとは思うがな・・・」
なんにせよ油断はいけない。浩平は気を引き締めて敵に向かう
「ったくうっとおしい連中よね」
「そうだね・・・ずいぶんしつこいよね」
「それは、しょうがないと思うよ」
「どうして? 川名先輩」
七瀬、瑞佳のぼやきにみさきが答える
「私達の乗っている機体・・・全部が各方面の高性能機体だよ?
戦力的に質では勝っていても量が無いティターンズにとってはむきになってでも
絶対に手に入れたい戦力なんじゃないかな?」
普段はぼーっとしていたりするみさきの意見に二人は驚く
「さすが人生の先輩・・・鋭いのね」
「見直しましたっ」
「そうかな? 澪ちゃんもがんばったんだよ。一緒にね」
言われて澪の顔が赤くなる。照れたようだ。
「わわっ、澪ちゃん手を離しちゃだめだよ」
みさきと澪は同じ機体乗りこんでおり、戦闘時は澪が攻撃、みさきが機体の制御を行っている。
今は澪が機体の制御をしていたのだが照れて手を離したために機体が揺れる
『ごめんなさい、なの』
感覚リンクで謝罪する澪
「大丈夫だよ」
みさきは澪の頭をなでる
「みゅーっ・・・敵さんが見えたよ」
繭の言葉に全員の表情が変わる・・・戦場の戦乙女に・・・
「来たか・・・遠慮はしないっ!」
浩平はアサルトライフルを連射し、すぐさま機体を加速させる
先頭にいたハイザック二機の融合炉を連続して貫き、残骸と化した
「この辺には研究所以外、街も無い無人の土地だからな」
新兵器の起動実験、研究内容の漏洩を防ぐといった面でこの土地が選ばれたのだ
「っ!?」
浩平が急加速でその場から飛びのくとアッシマーの大型ビームライフルが地面に突き刺さり、土煙を上げる
「上もいるか・・・先輩っ、澪っ、俺たちで上を叩くっ!」
「判ったよ」
『了解なのっ』
浩平は答えを聞いてリガズィカスタムを変形させる
二機は空中へと上昇する
「さあっ、来なさいっ!」
七瀬がコックピットで叫ぶ
近くにいたマラサイがそれに答えるようにライフルを向ける
正確には七瀬の機体が百式独特の黄金色で目立ったためであるのだが・・・
放たれるライフル
「なめないでよねっ」
叫んで手にとるサーベルではじくようにビームライフルの軌道を変える
「これは・・・特別製なのよっ!」
空いている左腕でパルスレーザーを構え狙いを絞る
甲高い音と一緒に一条の細い閃光は正確にマラサイの右腕を破壊する
よろめくマラサイの左腕を返す刃で切り裂く
「もうっ、しつこいっ」
なおも敵が増加していることがわかると七瀬はぼやいた
そして自分の機体にあるものを構えさせる
「みんなっ、射線上から退避っ。繭、援護お願い」
「みゅーっ」
繭は嬉しそうに答えて七瀬の機体の援護に回る
「4・・・3・・・2・・・1・・・発射っ!!」
トリガーを引いた瞬間膨大なGによって七瀬の百式改が後方に下がる。
脚部がじわりと地面に沈む
それに応えるようにバスター・ランチャーから光の奔流が溢れる
轟音、そして・・・
「正面はすっきりしたわね」
七瀬がつぶやく
その言葉どおり射線上の敵はその姿を消していた
「使い捨てに近い割には悪くないわね」
その消費量から1度の戦闘に一回が限度の高出力ビーム兵器、それがこの武器である
「瑞佳〜っ、無事?」
「あはは・・・さすがにきついよ」
繭は護衛をしている。結果、瑞佳は一人で射線上から外れている敵の相手をしていた
「今からこっちも相手をするわ」
七瀬と繭は頷きあって瑞佳のほうに集まっている敵を倒しに向かう
「せっかくの機動性が活きてないぞっ!」
浩平は敵を叱咤しつつも正確に狙いを絞る
「…そこっ!」
相手の癖を読んだ浩平の放った大口径ビームキャノンは
MA状態のアッシマーを正面から根こそぎ消し去る
貫かれた部分に穴をあけて残骸が落下する
「・・!?」
視界に緑色の機体を見とめた瞬間、浩平は急加速で旋回する
その後をギャプランのメガ粒子砲が通りすぎる
「まだまだっ! お返しだっ!」
二連メガ粒子砲を続けて発射する
ギャプランはそれを余裕で右に動いて避けようとする
バシュゥゥゥッッ
粒子が相殺し合う音が響く
「お?」
そして浩平がつぶやきを漏らす
まっすぐ飛んでいくはずの攻撃が途中で軌道を変え、油断していたギャプランを蒸発させる
『周りも見ないとね』
みさきの通信が入る
あのままでは浩平の攻撃が避けられると思ったとき、澪はVガンダムのビームシールドを展開したまま
射線上に投げ入れ、シールドを利用してメガ粒子砲の軌道を曲げたのだ
本人に言えばいやがるだろうが視界がない分をカバーしようとして得た、
得られるもの全てから状況を推測するみさきの技術…
それを利用した相手の動きと心理を読んだ見事な読みである
すでに弾き飛ばされたシールドの回収を兼ねて迎撃に移っている
みさきと澪…
ペアを組むのは問題がありそうだがそうでもない
数機のアッシマーがVガンダムを補足し、狙い撃つ
幾条もの攻撃を最大加速で避けるVガンダム
同時に正確な射撃でアッシマーを撃ち抜いて行く
『ばかな!? こんな動きがっ!』
敵パイロットの叫びはメガビームライフルの直撃と共に消える
ハンデを克服するために必死で努力した二人の相乗効果…
試験的に搭載されたバイオセンサーが二人の意思疎通を円滑にし、
無言でも十分なコンタクトが取られている
空は沈黙した
「みゅ〜…逃がさないんだから」
繭はビームバズーカの照準を次々と合わせる
敵…三機のマラサイもロックされたことを知って回避しようとするのだが
アサルトタイプ…急襲用の機動力を上げた装備の加速にその逃げ場をふさがれる
放たれる攻撃
一機、一機確実にその攻撃は直撃する
「そこっ」
繭はガトリングガンでハイザックが撃ったグレネードを迎撃する
動きの止まるハイザック達に瑞佳が迫る
「浩平の足手まといにはなりたくないんだよっ」
腕に装着された連装ビームガンがハイザックの両腕を撃ちぬき戦闘不能にする
「遠いって安心してると危ないよっ」
サーベルでうろたえるハイザックを同じく戦闘不能にし、
視界にマラサイを捕らえると瑞佳は右後ろ肩に装備されたレールガンを構える
全長は機体の高さとほぼ同じ、普段は折り畳まれたその筒が伸ばされる
「いまさら逃げてもしょうがないよ…さよならっ」
十分に加速された弾丸が離れた場所にいた1機のマラサイを直撃、残骸にする
「終わったわね」
七瀬がつぶやく
「そうだな、ミノフスキー粒子下じゃあレーダーも利かないが…」
その瞬間、浩平の視界に白い機体が映った
「っ!? 避けろっ!!」
浩平が叫ぶ
「浩平っ!?」
瑞佳の悲痛な声
声をかけた分回避が遅れ、浩平のリガズィカスタムは飛来した物体に右足を切断される
「くっ…誰だっ」
『抵抗しないでください…むやみな人殺しはしたくないんです』
通信と一緒に姿を現したのは1機の機体…ガンダムに似ている
片腕にクワガタの頭のような武器を付け、ショーテルを構えている
「誰だと聞いてるんだっ!」
浩平は強引に変形を試みる
しかし謎の機体から放たれたマシンガンの直撃を受けて墜落する
上がる土煙
「がぁっ!?」
さすがにうめき声を上げて苦しそうな表情をする浩平
『僕の狙いは基地だけです。抵抗しなければ命は取りません』
浩平はその言葉に叫ぶ
「だからってな、あいつらに渡す前に壊されてたまるかよっ!」
MS形態のままハイパービームサーベルを構えてブースターをふかす浩平
一気に決着をつけるべく間合を詰める
「浩平君っ、だめっ!」
『身にかかる火の粉は…すいませんっ』
相手の腕から先ほどの足を切り裂いた武器が飛来する
「速いっ!? しまった」
到底この体勢で避けられるものではなかった
誰もが同じ結果を予想した
しかし…
『浩平っ!!』
最大加速で飛んできたゼロのチャクラム・ソードがその武器を弾き飛ばす
「祐一かっ!?」
「ああ、急いできてよかったぜ…後で奢れよ?」
「すまん…無茶しちまったな」
モニターに映る祐一に苦笑する浩平
「舞っ! 頼んだ」
「…わかった」
舞は遠慮せずフルパワーでメガ・ビームサーベルを起動させる
その場から飛びずさって間合を取った敵に迫る
慌ててショーテルを構える敵、だが舞の攻撃はやすやすとショーテルを切り裂く
「ヒート系武器じゃ無駄…はっ!」
次に起こったことは舞を驚愕させるには十分だった
敵が舞の攻撃を完全に避けたのだ
『分が悪いようですね…ここは引かせてもらいます』
追撃する間も無く、敵は退却した
「…舞?」
「…通じなかった。私の攻撃が…」
舞は呆然としている
自分の攻撃に自信があった分、ショックも大きかったらしい
「舞、落ちつけ」
祐一の言葉にようやく落ちついて息を吐く
「…ごめんなさい」
「別に良いさ…研究所に行こう。みんなには連絡がついてるから」
「…(コクッ)」
浩平達に導かれ、二人は研究所に向う
歯車は…まだその姿を現していなかった
続く
次回予告
秋子さんを迎え、研究所から離れたMSテスト用の土地で新兵器の起動実験中、事件は起こる
舞の機体がテストをしているとき、辺りは光に包まれる
舞と離れ離れになったまま異世界の少年達と触れ合う祐一達
そして祐一の前に1機の敵が立ちふさがる
敵の猛攻に苦戦する祐一、だがその攻撃のパターンには覚えがあった
「まさか…舞っ!?」
異世界の地で繰り広げられる戦乱
次回
導かれた地で
後書き
ユウ「え〜と、お待ちしていた人…申し訳ありませんでした」
秋子「そうですね…覚悟は良いですか?」
ユウ「しゃべることをしゃべってから…」
秋子「了承」
ユウ「…なぜ遅れたか、理由の一つは浩平達の機体です。
今後のパワーUPのための布石も含め、いろいろ思考錯誤しました」
ユウ「次に浩平、祐一、往人、3人の繋がりをどうするか…勘のいい人なら既に
今回の文から彼女のいる場所が想像できるはずです。そうです、キーパーソンは
リュウセイじゃないんです」
ユウ「また機体の性能に関しては勝手に改造してあります。今は時間が無いので
後日正式な性能と共にデータの全面改装を行います。もっと詳しい説明をつけたくなったからです」
ユウ「今後はやっと動き出します…多分(マテ」
ユウ「でわでわ〜っ…お?」
ぷすっ
ユウ「きゅう…」
作者昏倒