先は長い…前回の予告は数話分になりました…

カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




十五話

〜導かれた地で〜前編

 

「本当に大丈夫か?」

肩を貸しながら真琴に聞く

「あぅーっ…大丈夫よ。ちょっと立ちくらみになっただけだから」

グレイファントムから出てきた真琴は足元がふらついており、
同様の症状の栞も香里に連れられて顔色が悪い

「酔った…訳じゃないよな?」

俺は直感でそう思った

「…やっぱり祐一は鋭い…うん、意識を感じちゃったの。
…あの光に消えた敵の人たちの…」

「いつもそうなのか?」

浩平に医務室の場所を聞いてそこにとりあえず向う

「ううん…祐一のことが心配でこっちにずっと意識を集中してたせいだと思う」

普段の戦いではこうならないそうだ

不安を残しながらも医務室へと向う

医務室へとたどり着き(怪我人は無かったために誰もいなかった)ベッドに寝かせる

「何にせよ少し寝ていろ」

「あぅー…ごめん」

申し訳なさそうにする真琴の頭に手を置いて微笑み、栞のほうへ向かう

「どうだ? 香里…」

「理由はほとんど同じね。しばらく寝かせてあげましょう」

「そうだな」

二人は頷いて医務室を出る

「じゃあ先に秋子さんに会って来るか」

「そうしましょう」

 

壁に備えつけられた案内図を目印に司令所へと向う

 

 

「二人の様子はどうでしたか?」

「寝てれば良いと思います」

部屋に入るなり飛んできた秋子さんの言葉に答える

「そうですか…それでは二人はいませんが話を始めましょうか」

部屋には名雪達と浩平達が既にいた

空いていたソファーに腰を下ろす

「まず、祐一さん達に説明します。ここはテスラ=ライヒ研究所、ビアン・ゾルダーク博士によって
設立された対異星人用の研究を行う所です。もう十五年以上前の話です。
最近では各種軍需産業の内部で事情に気がついた有志が協力してくれています」

「折原少尉達の機体が各種企業、勢力のものだったのはこういうわけなんですね?」

「ええ、スーパーロボットの研究は極東方面が中心ですけどね。話を戻しましょうか、
ビアン博士はさまざまなデータからいつか異星人による侵略が起こることを予言していました」

「そうなんですか…全然知りませんでした」

北川が驚いた表情をする

「当たり前よ。そんなこと公表したらパニックになるわ」

「その通りです。けれど、他にも表ざたにならなかった理由があります。
研究が実をつけ始めたのはかなり最近なんです」

そして秋子さんの説明は続く・・・

飛来した巨大戦艦、軍ではASS−1と呼ばれる存在…

PT開発の先進、マオ社との連携、ビアン博士の南アタリア島での研究続行…

一年戦争の後に進んでいったMS系の開発…

「祐一さんや浩平さん、そして往人さん達の戦いでついに無人機ではなく、
有人機が送りこまれて来たことが判明しました」

「いよいよ侵略が…始まる?」

俺は乾いた唇を軽くなめて言う

「そうです…これからは確実に困難な戦いが待ちうけているでしょう」

秋子さんは苦渋の表情になる

「あなた達を…巻き込んでしまってごめんなさい…
平和に暮らせたはずのあなた達に命を奪うような真似をさせてしまって…」

頭を下げた秋子さんの肩に手が置かれる

「お母さんが謝ることじゃないよ。私達が…たまたまかもしれないけど、みんなを守れる力を持てた。
これは何か理由があるはずだよ? うん…確かに怖いよ…だって自分の指の動き一つで
相手の命が消えていくんだもん。でも、立ち止まれないよ。だって…生きて幸せになりたいから…」

名雪の目は深い…全てを受けとめ、それでも微笑んだ

「だから、お母さんはしっかりしてくれなきゃ。私達を暖かく見守ってくれなきゃいけないんだよ?」

「名雪…大きくなったわね…」

目から漏れる雫をぬぐいながら秋子さんは言う

その後、俺達の新しい戦力が与えられるとのことで、MSの整備場に向った

 

 

 

 

「うぐぅ? もしかして…ハットさん?」

「ん?…おおっ、君達か…また会えたな」

敷地内に入った俺達に背を向けて搬入の指示を出していたのはジャブローで出会ったハットさんだった

「無事で何よりです」

美汐が手を差し出す

「ああ、おかげさまでな。あれからカラバの輸送部隊に所属することになったよ。
今日は…新型MSの起動実験と譲渡に来たんだ」

ハットさんの視線の先に幾つものMSらしき影が見える

「おっと、呼ばれてる。じゃあがんばれよ」

奥からかかった声に気がついてそちらへと走り去るハットさん

「…守れて良かったね…」

「ああ…」

名雪のつぶやきに答える

 

 

 

「それでは順に説明しますね」

秋子さんは整備の指示をだす区画に俺達を案内し、モニターをつけて言った

「最初に祐一さん、機体その物の交換はありません。戦闘データから祐一さんの念動力は
確実に強くなっています。そこで今まで有線により補助を行っていた攻撃を直接やってもらいます」

「つまりチャクラム・ソードを直接操るんですね?」

「ええ、それとまだ試作段階ですが念動力を直接刃に変換するシステムが
東京のDC支部から送られてきました。扱いには気を付けてくださいね」

画面が変わった

「あゆさん…あゆさんにはサナリィ開発のF90三号機、クラスターガンダムに乗ってもらいます。
繭さんと同じフォーミュラシリーズの一つです。各所につけられたハードポイントでさまざまな兵装が
付け替えられます。また、ミノフスキードライブユニット、ビームシールドを装備しています」

クラスターガンダムの全身像が映り、次の画面に切り替わる

「名雪にはリガミリティアのVガンダムのバックパック装備、Vダッシュガンダムが支給されます。
もともと宇宙用のバックパックのために背部のキャノンが大気圏では使用できないという欠点があり、
この機体はそれを解消するために改良され高圧縮、周囲への拡散を極力押さえることに成功しました」

ウッソの乗っていたVガンダムの後ろに大きなユニットがついた映像が映し出される

「次に真琴、真琴にはカラバ開発のZガンダムを再設計した機体、ZプラスC型に乗ってもらいます。
オリジナルのZガンダムと同じく汎用MSです。真琴のNT能力の補助にバイオセンサーを搭載しています」

どことなく浩平のリガズィカスタムに似たフォルムの機体が映る

「栞さんにはZ計画の一つであったメタスの改良型、メタス改に乗ってもらいます。
メタスの欠点であった火力の不足をハイメガキャノンの装備、その他補修によって克服しています。
真琴の機体と同じく、バイオセンサーが搭載されています」

緑色の機体が映り、変形のイメージ映像が映る

「香里さんにはガンダムマークUとG−ディフェンサーの合体状態である
スーパーガンダムに乗ってもらいます。フルアーマー思想と平行して行われた
強化計画の一つです。強力なビームコーティングが施されています」

CGの土地で飛行するガンダムが映る

「倉田さんはガンダムマークV、これはガンダムマークUをエゥーゴが再開発した機体です。
装甲にガンダリウム合金を採用し、耐弾、耐ビーム能力が向上しています。
今まで使っていたミノフスキーシールドを、無理なく使用していく事が出来るはずです。
また索敵、通信能力を強化してあります」

続けて両手にサーベルを構えたガンダムが映し出された

「見ての通り、格闘戦を重視した機体、ガンダムピクシーです。両手のビームダガー、
軽装による高機動で地上ではゼロと一、ニを争えます。
また、サーベルは繋げて両刃のナギナタとして使うことも可能です」

「最後に、北川さんのグルンガスト弐式は武装の追加はありませんが、
ジェネレーターと重力装置の強化が行われています」

説明し終え、一息つく

「ゼロと弐式の改修が終わり次第、ここから離れた土地で起動実験をしてもらいます」

その日はそこで解散となった

みんなぞろぞろと部屋を出る

「舞? どうした?」

思いつめたような舞の顔を見て声をかける

「…何でもない」

いつもの無愛想な声に苦笑して部屋を出る

「…力が欲しい…祐一を、絶対に守れる力を…」

舞は静かにつぶやいていた

 

 

 

 

 

三日後、グレイファントムへの搬入を終え、実験場所に向った俺達は順順に実験をしていく

最後の舞の出番になった

『ターゲット出現します』

「…了解」

舞は美汐の声に短く答える

そしてダミーの風船で作られたジオンのザクU改、ドム、
ティターンズのマラサイやハイザックが出てくる

「…ふっ!」

ブースターを一気に吹かして舞は駆ける

廃材を利用した装甲で身を守るダミーを次々と切り刻む

風が後からやっと舞に追いつく

「舞…どうしたんだ?」

俺はゼロのコックピットで呆然とつぶやく

自分の実験が終わった後も、舞の雰囲気に何かを感じてデッキに俺はいた

…今の舞は何か危険だ

あせりを隠さない舞の気に俺は拳を強く握る

「っ!?・・周囲に未知の発光を確認っ!」

「なんだって!?」

気がつけばうっすらと陽光以外の光が回りを包んでいた

『…状況確認できました。光は実験地区を中心に円を作っています。
範囲内には私達プロミス・リレーションしかいません』

「了解。研究所に通達したほうが良いだろう。『未知の事象に遭遇。
これより実験を中止して帰還する』・・みんなにも伝えるんだっ!」

美汐の連絡に俺は叫び、ゼロをデッキに固定する

「これは何?…っ! 光が増大しました。光度低下効果ありませんっ」

モニターの光度落としてもなお目に突き刺さる眩い光の中、
俺は舞の機体が回りとは違う光に包まれた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…んっ! …さんっ!』

「う…ん?」

「祐一さんっ!」

「キャニーか?」

俺は痛む頭を振る

「どうなってる?」

「敵反応ありません。それどころかミノフスキー粒子が検出されません」

「…なんだって?」

俺はその声に愕然とする

地球上ならばどこでも、さらには大戦後の今の世の中では
ミノフスキー粒子が存在しない場所は無いといっても良いだろう。
そう…地球圏には…

『気がついたようですね』

美汐の姿がコックピットに映る

「そっちの状況はどうだ?」

『わかりません…これはどうも…』

「異世界…か?」

『今のところは…』

なんと言うか事実は小説より奇なり…か

異世界に飛ばされる、小説やアニメの中ではありがちなパターンが
俺達にこういった事態への耐性をつけていた

 

…ああっ!

「舞は? キャニー、舞の反応は無いのか?」

俺は全身が冷えていくのを感じた

舞はグレイファントム、つまりは舞以外の全員と離れていた

つまりは…

「…レーダー効果範囲内に反応ありません。はぐれたようです」

「くっ…舞…」

佐祐理さんにどう説明すればいいんだ?

俺は舞の様子に気がついていながら何もしなかった自分を悔やんだ

『祐一さん、何か来ました』

「え?…でかいな」

美汐の声に顔を上げれば開け放たれたままのMSデッキのハッチからわかるほど巨大な艦影

『ようこそ、地上人の諸君。私の名はドレイク、ドレイク=ルフト…諸君らと会見の場を設けたい』

回された通信に映ったのは一人の男だった

無言でこちらに視線を向ける美汐に頷く

「…わかりました。会見に応じます。代表で艦長の私と、パイロット数名が向います」

俺は美汐の言葉に賛成した

相手が信用できるかわからない以上、全員で行くわけにはいかない。
だが美汐一人では相手も信用しないだろうから…

 

会見に向うのは俺と美汐、真琴が行くことになった

「倉田さん、私が不在の間の艦長をお願いします。
戦闘指揮は香里さんにお願いします」

「任せてください」

微笑む佐祐理さんの笑顔は少し固い…無理も無い

「相沢君、途中で寝ないようにね」

失礼なことを言う香里に手を振って迎えに来た昆虫のような機体の手に収まる

向う先は未知の相手…

舞…お前はどこに…

 

 

 

 

続く

 


後書き

ユウ「…短いですね…ちょっとわけて更新スピードを上げる事にしました。
   この次は舞視点の導かれた地でBパートと中編です」

舞「…一人ぼっち」

ユウ「…すまん、お前のパワーUPには必要だから…。ちょっと辛い経験をしてもらうことになる…」

舞「…祐一のため…」

ユウ「すぐに、合流させてやるからな」

ユウ「それでは」