カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




十六話

〜導かれた地で〜中編

「バイストンウェルへようこそ地上人、改めて歓迎しよう」

巨大戦艦のブリッジに座るドレイクが言う

「バイストンウェル?」

「この世の魂が帰る場所だと言われている。だが今は戦乱の最中だ」

ドレイクは俺の疑問に答えて外を見る

外には俺たちを運んでくれた機体のほかにも数種の機体が見える

「あの昆虫を巨大にしたような機動兵器を中心とした、ですか?」

「賢いな・・・そうだ、オーラバトラーと呼ばれる存在を使った戦いだ。
現在はいくつかの王国に分かれて不毛な戦いが続いている・・・
そこでだ。諸君らにバイストンウェルの平定に協力してもらいたい」

ドレイクの言葉の後に傍に控えていた人達の中から一人の男が前に出てきた

「私の見たところ君達の艦はペガサス級だろう?」

「あぅーっ、何で知ってるの?」

「私も地上人だからだ。名はショット=ウェポン。こちらに来てもうすぐ二年になるな」

「それで私たちが戦力を持っていることが判ったんですね」

美汐が納得したように言う

「どうだ? 私に協力してくれるか?」

「その前に1つ聞きたいんですが」

「・・・言ってみよ」

「仲間を探してるんです。名前は川澄舞、女性パイロットです。
こちらに飛ばされたときにはぐれてしまって・・・長い黒髪で近接戦闘に
向いた機体に乗っているはずなんですが・・・」

「ショット、心当たりはあるか?」

「・・・いえ・・・ありません」

「だそうだ・・・役に立てなくてすまなんだ」

「構いません。自分たちで探しますから」

ドレイクに答えながらも俺はショットの目が動揺したのを見逃さなかった

(何かを隠している)

そう思ったとき俺は決心した
ドレイクの言うことがすべて真実だと真っ向から信じるような人間でもないしな

「せっかくですがお誘いはお断りします。むやみに他の世界で戦いたくはありません」

「・・・そうか、残念だが致し方ない。パイロットはこちらで用意するとしよう」

「真琴っ!」

「わかってるっ!」

ドレイクの手がわずかに動き、周りの気配が変わった瞬間、俺は叫ぶ
真琴もそれに答えてかがみこむ

響くいくつもの銃声、そして何かに当たった甲高い音

「格納庫に行けっ! 奪って逃げるっ!」

銃を防がれて唖然とするやつらを警戒しながら
取り出した煙幕用の手榴弾を叩きつけて走り出す

「念動力様々ってか」

俺は腕につけたブレスレットを眺めてつぶやく

「祐一さん、それは?」

脇に抱えた美汐が聞いてくる

「ああ、この世界に飛ぶ前にな・・・」
 
 

〜跳躍前グレイファントムMSデッキ〜

「これは?」

改修を受けたゼロのコックピット内で見慣れないものを見かけたのでキャニーに聞いてみた

「DC東京支部から送られてきた物です。なんでも祐一さんのような念動力者が
装着していると本人の防衛の意識に反応して使い捨てですが、念動フィールドが使えます。
使い捨ての原因は発動のエネルギーをブレスレットが全てまかなっているからだそうです」

「へー・・・なるほど・・・」

キャニーの説明を受けて自分の左腕につけてみる

ぴったりだ・・・

「一応祐一さんに合わせてあるそうですから・・・」

俺の表情を読んでキャニーが答える
 
 
 

 

 

〜ウィル・ウィスプサイド〜

「あぅー・・・どっち?」

「・・・さあ?」

「私もわかりません」

三人は広大な艦内で途方にくれていた

「君達は地上人だろ? こっちだっ! 早くっ!」

「誰ですっ!?」

そんな俺たちに声をかけてきた赤髪の青年に美汐が叫ぶ

「美汐、大丈夫そうだよ」

「俺もそう思うぞ」

彼からは敵意を感じない

「納得してくれたか? さあ急ごう」

「1つ良いか? もしかして俺たちの艦って襲われる?」

「・・・多分」

「ぐはっ! やっぱりか・・・しょうがない」

走りながらうめく

「とにかくここを出よう・・・ショウっ! こっちだ」

通路の向こうに見えたもう一人の青年、ショウに彼が言う

「三人か? マーベル、二人を頼む。君は俺と一緒に。
一人乗りだから手につかまってもらうことになるが・・・」

「落とさないでくれよ? なんとかあの白い戦艦に辿り着いてくれ」

「わかった。揺れは我慢してくれよ」

彼、ショウだったか? が言い切る

「その代わりショウなら必ず辿り着けるから」

ひょこっと小さな女の子が飛び出てきた

「・・・妖精?」

「違うっ、ミ=フェラリオよ。フェ、ラ、リ、オっ!」

・・・まあいいか

俺は気にしないことにする

香里、佐祐理さん・・・頼んだぞ

彼のABの手につかまって思いをはせる
 
 
 
 

「あれは念動フィールド??・・・やつは資質の持ち主か・・・」

ショットはつぶやくとブリッジから出て自分の艦に連絡を取る

「・・・私だ、彼女の準備をしておいてくれ。機体は・・・ああそうだ、彼女ならアレを動かせるはずだ」

通信を切った彼の瞳を彩るのは手に入れた力に対する執着心だった

「アレは・・・渡さん」

ショットの脳裏にある光景が浮かぶ
 
 
 
 
 
 

〜バイストンウェル数日前〜

舞はオーラロード、地上とバイストンウェルとをつなぐ道、を通過するさいに
生じたずれで祐一達よりも早くここに辿り着いていた

「うっ・・・ここはどこ?」

舞は気がつくとあたりを調べ始めるが情報は得られない
機体に問題は出ていないようだ

(祐一達と・・・はぐれた?)

舞はその事実に気がついて身を振るわせる

「また・・・祐一に迷惑をかける・・・っ!?」

舞がレーダーの反応に顔を上げる

「何か来る・・・敵?」

空に浮かぶ数機のAB、この世界ではドラムロと呼ばれる標準的な機体が舞のいる方向に向かってきた

ドラムロは舞の機体を見つけるとフレイボムを撃ってきた

「っ! 来るっ!」

舞はピクシーをすばやくその場から飛び立たせる

「攻撃してくるなら・・・はっ!」

舞は上空にブースターを吹かして飛び上がり、近くの一機に迫る

甲高い音とともに何かの膜が舞のサーベルをはじく

舞は知る由も無いが、それはオーラバリアと呼ばれる搭乗者に害をなすものをはじくバリアだった

「・・・ならっ!」

自分の攻撃が防がれたことに驚きながらも舞は両腕にダガーを持たせ、再び飛び上がる

「ふっ、せいっ!」

左腕で一度斬りつけた場所に続けて右腕のダガーを繰り出す

バリアが砕け散る音と一緒にドラムロは勢いそのまま切り裂かれる

「行ける・・・次っ」

慌てて旋回する残りのドラムロに舞は向かっていく
 
 

「・・・面倒」

ぼやいても状況は変わらない

落ち着きを取り戻したドラムロは手にもった剣で舞の攻撃を意外と防ぎ、
なかなか決定打を与えられない

「・・・くっ!?」

突然舞の背後からきた攻撃が機体を震わせる

その攻撃の元、ショットの乗ったオーラボンバーは休むも無く次々と攻撃を加える

「・・・やられるの?・・・嫌っ、祐一に迷惑をかけたまま死にたくないっ」

舞は必死に機体を動かそうとするが、
最初の攻撃で駆動部をやられたらしく、ほとんど動かない

それを最初から見抜いていたショットの攻撃は確実に
舞のピクシーから戦闘力を奪っていく

ショットの目的はこちらの殺害ではないようだ

「・・・ごめんなさい、祐一・・・」

一番の衝撃がピクシーを襲い舞はその衝撃に気を失う
 
 
 
 

「パイロットは回収しろ・・・なに?・・・そうか、わかった」

ショットは残ったドラムロからピクシーのそばにあったオーラコンバータが
勝手に反応していると言う報告を受け、彼女の下に向かう
 

「祐一・・・力が欲しい・・・守れる力を・・・」

舞は気を失いながらもうめきつづける

その声に答えるように舞の体が淡く光っていた
 
 
 

「彼女は逸材だ・・・暗示に簡単にかかるような正直者ではあったが・・・」

回収後、ショットの命で暗示が試みられたが、あっさりと舞はそれにかかってしまったのだ

ショットはドレイクの艦、ウィル・ウィスプから脱出して自分の艦に向かう
 
 
 
 

〜グレイファントムサイド〜

「お姉ちゃん、私は先に出るね」

「待ちなさいっ、確かにまだ相沢君から連絡が来てないわ。
それでも危険な状況に陥ってるとは限らないわ」

ブリッジから突然走り出した栞を香里が押しとめる

「嫌な予感がするの・・・祐一さんが心配だからっ!」

栞は香里の手を振り払って行こうとする・・・が、

「行くな、とは言ってないわよ? 倉田さん、MS部隊出撃準備に移ります」

「そうしてくださいね。何かあったみたいですから」

メインモニターを見る佐祐理の顔が険しくなる

『俺は先に出てるぞっ!』

『私も出るよっ』
『ボクもっ!』

折りよくMSデッキにい三人はすばやく出撃する

向かう先にはあわただしく飛び交うAB達(オーラバトラー)の姿があった
 
 
 
 

「動きが速いっ!? 水瀬さん、あゆちゃん、援護頼むっ」

『了解っ』

名雪は北川の声に答えてビームライフルを北川のそばにいたドラムロに撃ちこむ

同様にあゆの撃ち込んだビームバズーカもはじかれる

「はじかれたっ!? Iフィールド?」

ライフルがはじかれたのを見て思わず名雪が叫ぶ

「ビームだけじゃないみたいだよっ」

続けて実弾を撃ち込んだものの、はじかれたあゆが言う

それでも衝撃は伝わったらしく、ドラムロの動きが止まる

「そこだっ!」

北川がすばやく懐に迫り、こぶしを叩きつける

初撃がバリアにはじかれたのを見て取ると休まず乱打を叩き込む

破られてはいないものの、衝撃に押されるドラムロ

「直接ダメージは無くてもこれならどうだっ!」

かかと落しを当て、地面へとドラムロを叩きつける

衝突の衝撃でドラムロはその機体を崩す

「だったらこれならどうっ?」

名雪はVダッシュガンダムのオーバーハングキャノンを構えさせ、狙いを定める

「当たってっ」

すばやい動きの敵になんとか標準を合わせる

閃光と衝撃

名雪の攻撃は見事にオーラバリアを撃ち破っていた

ドラムロが墜落する

「でも一機一機にこれじゃ疲れちゃうよ・・・」

名雪がつぶやく

敵は突然の攻撃に混乱しているものの、いつ落ち着きを取り戻して襲ってこないとも限らない

そんな名雪の視界にこちらにABの攻撃を避けながら向かってくる二機の機体が入った

「北川君、あれ・・・」

「え?・・・俺が行く」

名雪の声に北川はそちらを振り向き、弐式を操作してそれに近づく

「・・・相沢っ、無事だったか」

北川はその手につかまる祐一を見つけて叫ぶ

ショウは自分のAB、ダンバインを操作して祐一を手渡し、
北川はコックピットを開け、そこに祐一が滑り込む

「なんとかな。あゆっ、二人を頼む」

『うんっ、任せてっ』

あゆはそれに答え、二人をマーベルの機体の手から回収する

「あぅーっ、怖かった」

真琴が恐怖か、寒さかわからない震えで体を震わす

『三人とも、どいてください』

「栞ちゃん? そっかアレを使うんだ」

「了解っ」

MSデッキで香里に機体を固定され、MS状態の栞の通信にあゆと北川は
グレイファントムに戻り、名雪は返事をして地面に降り立つ

『お姉ちゃん、固定よろしく。ハイメガキャノン、発射っ!!』

栞の声に続いて大量のメガ粒子がメタス改から撃ち出され、オーラバトラーたちを飲み込む

衝撃を香里が支えることで吸収する

その衝撃にグレイファントムもわずかながらその身を揺らす

「ふぅ・・・なんとか・・・」

栞が手をぬらす汗をぬぐう。あわせて十三機のドラムロがその身を蒸発させた
 
 
 

「キャニーっ!」

「いつでも出られます」

「よしっ、ヒュッケバインゼロ、出るっ!」

その巨体を後退させ、戦場から離れようとするウィル・ウィスプと
それを援護するために向かってくるオーラバトラーの姿が見える

「フォトンライフル圧縮率最大っ・・・当てるっ!」

改修によって撃ちだすエネルギーを拡散、圧縮と出力を自由に調節できるようになった
ライフルを高圧縮モードにして撃ちだす。これならあのバリアも・・・

まだ二十機ほど残っている相手に撃ち込んでいく

思惑通り一撃必殺で数機のドラムロを落とす

あゆは拡散バズーカに装備を変え、足止めをするようだ
真琴もその機動性とナパーム、ビームカノンを駆使して数で相手を押している

バリアはどうやら搭乗者の意思によって反応するらしく、
意識する間もなく撃ちこんだり、連続で攻撃すれば発動が出来ない時もあるようだ

「グラビコンシステム最大出力・・・計都瞬殺剣っ!」

北川は重力波を剣にして紙のように相手を切り裂いていく
避けようとした相手もそばを剣が通過するだけで影響を与える重力剣の強みだ

「行けるっ、やってやるぜ!」

コックピットでその威力を確認した北川は次の相手に向かう
 
 

「三人とも、無事か?」

「見れば判るでしょ」

「えぅ〜、疲れました・・・」

「厳しいよ・・・」

俺の言葉に名雪と名雪の援護に出た二人が答える

「一旦グレイファントムに戻って補給してくれ。まあその前に終わらせるが・・・」

俺はそう言った後、前方を見る

「T−LINKシステムフルコンタクト・・・ユニット出力上昇。突っ込むぞ」

「了解。T−LINKソードはまだ未完成です。多くは使えませんよ」

キャニーは俺に忠告をして作業をこなす
俺はその間に光り輝く翼を鮮明にイメージする

「ミノフスキー粒子にメガ粒子放出・・・セラフィックダイブっっ!」

俺の叫びと共に改修前とは明らかに違う速度でゼロが一気に敵陣に突っ込む

翼だけでなく空気の衝撃波さえも連なった衝撃が敵を襲う
 
 
 
 
 
 

〜ショットサイド〜

「どうだ?」

「はい、問題ありません」

ショットはオーラボンバーの兵士の答えに満足して心を躍らせる

 

「出番だ。やつが来たぞ。お前の大切な人を奪ったやつが」

暗い部屋にいた舞はそれに反応して顔を上げる

その瞳にはいつもの光がなかった
あるのは嘘の復讐の相手への憎悪のみ

「相手を全て切り裂いて来い」

「了解…」

危なげな、でも実際はそうではない足取りで格納庫に向う舞

すでに暗示は事の真偽を見分ける力を舞から奪っていた

 

舞は1機の白いABに乗りこむ

「オーラコンバータ始動。川澄舞、サーバイン出るっ」

 

〜祐一サイド〜

「はぁ、はぁ…後は…あいつだけか」

フル稼働したT−LINKのフィードバックで疲労した息を整えて、
今だ視界に収まるウィル・ウィスプの巨体を見る

さすがにどんどん小さくなってはいるが…

「追いつくのは難しいですよ?」

「あいつは舞のことを知っているはずだ。追いつくっ」

ショットの顔を思い出して決心を固める

「っ!? こちらに向ってくる反応を確認っ! 1機が先行してかなりの速度で来ます」

俺は気持ちを引き締めてゼロにプラズマブレードを構えさせる

…来たっ!

白い機体が剣を構えて襲いかかってきた

その速度はドラムロの比ではない

周囲をかみ合った刃が生み出す光で満ちる

「ただの剣ではありません。特殊なエネルギーを纏わせています」

キャニーの言う通り、相手の剣はうっすらと光っている

敵は次々と刃を繰り出してくる

本当なら避けられないと思えるようなすばやい斬撃

しかし俺はそれをなんとかさばけていた

その理由は…

「次は…っ! 本当に来た…この太刀筋…まさかっ!?」

夜の学校の頃から見てきた独特の太刀筋、ちゃんと教えを受けても、
その太刀筋だけは変わっていなかった…

この敵は…舞だっ!

「舞っ! 俺だっ、祐一だっ!」

俺は通信を全周波数で舞に送る

『…その機体は復讐の相手…私の大切な人を奪った相手…はっ!』

「くっ!」

繋がったモニターの向こうにいた舞はいつもの舞ではなかった

恐らくは暗示だろう…舞は正直だからな…

外部からの呼びかけに答えないところを見ると…これしかないか…

「キャニーっ、コード『約束』、システム…起動っ!!」

「了解っ!」

そしてゼロは光を帯びる

舞と出会った麦畑の黄金色のように…

その色を見て舞の乗っているはずの機体が一瞬止まる

!? 暗示が弱まってる!?

俺は手応えを感じてゼロに筒を構えさせる

「T−LINKソード…起動…舞の精神に直接説得をかける」

自分に眠る力を糸を紡ぐようにして一本の線にするイメージを浮かべる

ただ放出するのではなく、制御して使う…

「来ますっ!」

舞の機体、サーバインが剣をオーラで包んで襲いかかってきた

「舞っ! 帰って来いっ!!」

ゼロを加速させて正面から刃をかみ合わせる

そして俺の意識は飛んだ…

 

舞の持つ力と俺の念動力、自らの精神が力の源になる2つの力は
T−LINKによって意識の共鳴を作り出していた

俺は舞と意識を共有しているようだ

暗闇に身を包まれながらも舞のことを考える

…こっちか?

そう意識したとたん体が飛ぶ感触がして目を開けると舞がいた

「祐一は死んだ…私が力を持たなかったから…だから私は…」

暗闇の中、舞は自らの作り出した檻の中で小さくしゃがみこんでいた

「ひっく…うぐっ…祐一…」

「呼んだか?」

はっとして顔を上げる舞

「祐一?…どうして?」

流れ落ちる涙をぬぐおうともしないで舞は言う

「はぁ…俺は死んでないぞ。舞は暗示にかかってるだけだ」

俺は苦笑して言う

「暗示?…そう…そうだったの…」

まだ壊れていない檻を見て俺は舞の頬に手をやる

「舞…俺は舞が俺のためにがんばってくれるだけで嬉しいよ」

「でもっ、私はっ」

反論しようとする舞の唇に指を当てて制す

「舞は自分よりも相手のことを優先してがんばりすぎる…
それも嬉しいけど…心配だよ。いつも捨て身でいるんだからな…
舞? 一方的じゃなくても良いじゃないか。守ったり守られたり…
借りが出来たと思ったら別の場所で返したって良いだろ?」

ぴしっと檻にひびが入る。後少しだ…

「良いの? それで…迷惑をかけっぱなしになっていまうかもしれない。
祐一の足手まといになってみんなを危険な目に合わせるかもしれない…
それでも…良いの?」

「良いに決まってるだろ? 舞が俺達のことを命がけで守りたいように
俺だって大切なみんなを…舞も守りたいんだ。舞が俺に微笑んでくれるなら
それで十分だよ。『ありがとう』って言ってくれればどんな苦労だって問題じゃないさ」

「…うん…わかった…祐一」

「うん?」

「ありがとう…そして今まで心配かけてごめんなさい」

音を立てずに檻が崩れ去る

舞の体をそっと抱きしめる

「ああ…ちゃんと借りは返してもらうぞ?」

「わかった」

いつもの舞の答えに俺は微笑む

「よしっ、帰るぞっ!」

「(コクッ)帰る」

両者が頷いた瞬間、白光が辺りを包む

 

 

「キャニーっ、時間は?」

「2秒と少しです。どうでした?」

「成功だ」

キャニーにびっと親指を立てて答える

「祐一…」

「舞? 無事か?」

「私は大丈夫…それより、来るっ!」

「ちっ!」

舞の動きが止まったのを見てショットの乗るオーラボンバー、スプリガンが迫ってきた

『計画の邪魔をするかっ!』

「計画? 他人に暗示をかけて何が計画だよっ!」

ショットの声に俺は左で拡散、右で圧縮状態のフォトンライフルを撃つ

拡散の衝撃で動きが鈍ったところに圧縮の弾が当たる

『くっ! せっかくの材料が…』

「ふざけるなっ! 舞は道具じゃないっ!」

加速しようとしたゼロを舞の機体が制す

「舞?」

「私が…」

「わかった」

俺はいつでも援護できるように体勢を整える

「おかげで力を意識できた…私は…力に負けないっ!」

舞が叫ぶと舞の体から黄金色の光があふれ、コックピットを満たす

『いけないっ! ハイパー化するぞっ! 止めさせろっ!』

「ショウっ!?」

『知らないのも無理はない。オーラ力が極限まで感情と共に高まるとハイパー化するんだ。
強くなるが命を落としかねない諸刃の剣…わかったら彼女をっ!』

「大丈夫さ…舞なら」

『そんな悠長な…っ!?』

舞の光が剣に集中する

「殺さない…はっ!!」

気合一閃、舞の剣からまるで伝説の聖剣のような美しい光が飛び出し、
スプリガンの後部を切り裂く

スプリガンはそのまま失速していった

「舞…」

「決めた…自分の命を軽く見ないって」

「そうだ。それで良いんだよ。舞…」

モニターの向こうで微笑む舞に俺も笑顔で返す

「ショウ…だったか? 一度、艦に来て説明をみんなにしてやってくれないか?」

『了解した。マーベル、一緒に来てくれ』

ショウの声に答えてマーベルも着艦する

 

 

 

さて…何がわかるのか…

俺はそう思いながらゼロを降りる

 

 

 

続く

 


後書き

ユウ「ショットがサーバインを持ってた。でよかったかなあ? まっ、研究用に持ってた、でいいか」

祐一「良いのか?」

ユウ「さあ? そうはいっても複数の世界が融合してるスパロボだ。何があっても不思議じゃないだろ」

祐一「そう…かもしれんが…それはそうとついにきたな」

ユウ「お前達が強すぎるんじゃないかってアレか?」

祐一「ああ…当初から考えてたんだろ?」

ユウ「まあね、とはいってもこれはスパロボ本編でも問題になってる。誰だったか
   忘れちゃったけど、『ほとんどのNTと多くのエースパイロットがいる…ロンドベルは無敵なわけだ』
   みたいなセリフがあった。各世界の主人公クラスが集まった部隊が強くないはずはない。
   ひとりでさえその世界の強者だったんだからな」

祐一「そりゃそうか…つまりは各技術が同時に存在する以上、組み合わされば強くなるのは当然だと?

ユウ「サナリィしかりエゥーゴしかり、作品ごとの最強MSを作り出した技術が同時にあるんだ。
   どうやったって強くなるだろう…まあ俺が主人公最強主義者なせいもあるが…」

祐一「可能な限り主人公1機でクリアってやったんだよな? αで…」

ユウ「おう、辛かったけど楽しかったぞ。さて、次回の紹介に移るか」

祐一「次はどうするんだ?」

ユウ「このルートの祐一たちバージョン、エレさんとの語らいが微妙にポイントかな?」

祐一「まっ、αをそこまでやって矛盾がないようにセリフのチェックとかするんだろ?」

ユウ「うん、だから次はまた遅くなるかも…がんばるけど…」

祐一「じゃ、終わりか?」

ユウ「そだな」

二人『でわでわ〜っ♪』