カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




十七話

〜導かれた地で〜後編

 

「あの湖のそばにしないか?」

「そうですね…丁度良いでしょう」

舞を取り戻してからすぐ後、俺達はショウの話からラウの国のフォイゾン王の元へと向かうことになった

この世界での後ろ盾と元の世界へと戻る手がかりをつかむためだ

今立ち寄ろうとしているのはその途中にあった湖、
機体のメンテナンスと疲労している舞の休養のためにも丁度良いだろう…

 

 

 

「オーラ力か…」

「ああ、人間なら誰しもある程度は持っているという話だ」

目の前に広がる湖を眺めながら俺はショウの説明につぶやく

あのオーラバトラーとかいうのを動かし、攻撃にも使える力…

「ABは搭乗者のオーラ力を増幅し、機体の制御に使っている。
オーラバリアはその使い方の一つなんだ。知ってのとおり、あらゆる攻撃を
ある程度まではじける。搭乗者の力によっては…核までも防ぐらしい・・」

「核って…この世界には核があるの?」

すぐ近くで栞の摘んで来た花を一緒に眺めていた香里が驚く

「いや、俺は地上人なんだ。この世界へと召還されたんだが、
オーラバリアの説明を聞いたときに質問したんだ。
『これだけの破壊力がある兵器は防げるのか?』って…」

「ねえ…ところで何で召還されたの?」

回りの景色に飽きたらしい真琴が聞いた

「ショウはね、聖戦士として召還されたのよ」

すぐ近くにいたチャムが言う

「聖戦士…なんて言うか選ばれた存在って感じだな…」

「自分じゃそこまでは思わないんだが選ばれた以上、やれるだけのことはやろうと思ってる」

ショウは真剣な目をして言った

「ショウはしっかりやってるわ。そうそう、ちなみに私はアメリカ人、ショウは日本人よ」

話をずっと聞いていたマーベルが言う

「祐一…誰かいる…」

「舞!? 動いて平気か?って…へ?」

思ったよりしっかりした足取りの舞が指差すほうを向く

確かに…一人の女性がいる

こちらの視線に気がついたのかその女性はこちらに来た

「旅のお方ですか?」

「ええ、俺達はフォイゾン王の元に向かっている途中なんです」

「そうですか…みなさんは地上人ですね?」

彼女の赤い髪がゆれる

「うぐぅ…どうしてわかったの?」

「どうしてと言われても困りますが、わかってしまうので…」

「もしかしてエレ、エレ・ハンム様!?」

「ええ、そうです」

ショウの驚きの声に彼女はうなずいた

「偉いのか?」

俺はマーベルに聞いてみた

「大国のひとつ、ラウの国のフォイゾン王のお孫さん、そしてミの国のピネガン王のご息女でもあるわ。
そして生まれつきの霊力で未来のヴィジョンを見ることができるといわれている方よ」

「あぅーっ…じゃあお姫様?」

真琴がきらきらした目でエレさんを見つめる

「そういうことになりますね。みなさんはどうしてこの世界に?」

エレさんの質問に俺は説明する

 

 

 

 

「そうですか…オーラロードが…」

「ええ、ドレイクが多くの地上人を召還しているせいだと思われます」

「エレさんは戻る方法を知りませんか?」

「エ・フェラリオのジャコバ・アオンあたりなら可能かもしれませんが私の力では…申し訳ありません」

香里の質問にうなだれるエレさん

「いえ、気にしないでください。きっと何とかなりますから」

栞を失うという希望を失った状態から立ち直った香里は精神的に強かった

エレさんに微笑んで答える

「そこのあなたのお名前は?」

「相沢祐一といいます」

「祐一さん、あなたはこの先巨大な闇に立ち向かうことになるでしょう。
ですが恐れることはありません。あなたのそばにあなたと同じ強い光が二つ、
あなたも含めて三つの光と周りにあるいくつもの光、それが闇を打つ払う力となるでしょう」

俺が光?…なら俺の周りにいるのはきっと…あゆや真琴たちなんだろうな…

「ご忠告ありがとうございます。どうですか?
俺達と一緒にラウの国へ行きませんか?お送りしますが…」

「ご好意だけ戴いておきます。私はここでもう少し修練を積んでから自分の足で祖父の元に向かいます」

俺はその言葉にうなずいてグレイファントムに戻ろうとする

「あゆ、戻らないのか?」

「あそこにある花を摘んでから行くよ」

あゆも女の子だなと妙なところで実感しながら舞を引き連れて戻る

 

「あゆさん、ですか?」

「うぐぅ? そうだけど…」

花を摘んでいたあゆにエレが声をかける

「不思議な運命を背負っていますね」

「うぐぅ…そうかもしれない…」

あゆは立ち上がって湖を見つめる

あゆと周囲に起きた数々の奇跡

偶然の一言では納得できないような出来事達…

いかなる運命の元にそれは起きたのか…

あゆは祐一の前では見せない大人びた表情で空を…目に映る空よりももっと遠くを見つめるようにする

「私でも何なのかわからない光があなたに眠っています…良い力であることを…」

「ありがとうございますっ、ボクもう行きますねっ♪」

エレの言葉にあゆはいつもの笑顔に戻って胸に花を抱いて駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

グレイファントムに戻った後、俺はショウと格納庫で話をしていた

「そういえばウィル・ウィスプはどこへ向かっていたんだ?」

「確証はないが恐らく…俺達が向かっているラウの国だと思う。
反ドレイクの国々が協力体制を取る前にひとつづつ潰す気だろう」

俺はその答えを聞いて美汐に直接通信をする

『はい?…祐一さん、何かありましたか?』

「ショウの情報によれば敵も同じラウの国に向かっているらしい。監視の強化を頼む」

『向かう方向が同じなら何時出会うかわからないですからね。わかりました。
総員警戒体制。手のあいている人は手近な場所から外の監視をしてください』

格納庫にいた俺と舞、ショウとマーベルはすぐに準備する

 

 

その後、遠くに山脈を抱くかなり広めの草原に出たとき、

「艦長っ! 右手の山脈に巨大な戦艦反応ですっ!」

「映してください」

メインモニタに映った映像はパイロットへも転送される

『これは…まさかグラン・ガラン!? シーラ様!?』

マーベルの声が上がる

「艦長っ、前方に何か見えますっ!」

映像が切り替わると見覚えのあるショットのスプリガンとAB達の姿が拡大されて映っていた

「総員第一種戦闘配置っ! パイロットは迎撃に移って下さい」

『マーベルさん、あの巨大な艦は味方なのか!?』

『ええ、乗ってるのは恐らく反ドレイク側の大国のお姫様よ』

『追われてるみたいだよっ。助けなきゃっ!』

北川に答えたマーベルの声を聞いてあゆは叫ぶ

 

「なんだ?…まだ何か来る!?」

ゼロのT−LINKは俺に前の敵とは別の意識を感じさせていた

『まさかっ!? 艦長っ! 後方からも部隊が接近していますっ!』

『そんなっ!?』

ぐはっ! マジでか?

コックピットに響くオペレーターと美汐の声にうめく

一瞬後に転送された映像にはABの集団が映っていた

「ショウ、マーベル、二人にはグラン・ガランの防衛を頼んでも良いか?」

「わかった」

「良いわよ」

「後ろは数が少ないな舞、ついてきてくれ。名雪達は前方を頼むっ」

名雪達の返事を聞いてゼロを発進させる

 

 

相手はドラムロがほとんど、性能的に最弱らしいがオーラバリアはドラムロだって持っている

攻撃を一点集中しなければいけない…最初から一気に行くぞっ

「キャニー、右フォトンライフル高圧縮モード、左は拡散で頼む」

「了解です。モード変更します」

「舞、調子はどう? 平気?」

「大丈夫…空も飛べるから前より良いかも…」

佐祐理さんの声に舞は答える

「佐祐理さんは援護を頼む。舞、行くぞっ」

「了解…」

二人はてんとう虫のような赤い装甲のドラムロに迫る

接触前に拡散のフォトンライフルを全体に続けて撃つ

ドラムロ当たる寸前、予想通りにオーラバリアによってはじかれた、が

「はじいたってめくらましにはなるはずっ」

思ったとおりにフォトンライフルのエネルギーがドラムロの視界を覆い、
その隙をついて圧縮した弾を撃ち込む

パイロットが気がついたころにはライフルが直撃していた

味方の撃墜に少なからず動揺するドラムロに舞が接近する

すでに剣にはオーラ力がうっすらとまとわれていた

すれ違った瞬間、ドラムロのオーラソードを両断する

抜けた勢いを維持して後ろにいた一体を撃破する

「良い動き…はっ!」

サーバインの反応に満足して舞はオーラ力を刃にして飛ばす

剣を媒体とすることによってイメージを鮮明にし、三日月のような光が舞に近づいてきたドラムロを切り裂く

コックピットの舞は全身を淡い光で覆われている

(これが…新しい力? あの力とは違う…でも…暖かい…)

動きの止まった舞に一機のABが接近する

ドラムロの中でそれは目立った色をしていた
構えさせた剣は光っている

『もらったぞっ!!』

「っ!」

隙をつかれた舞の目の前でゼロが滑り込んでくる

プラズマブレードとオーラソードが組み合い、光を放つ

「ダンバイン!? ショウじゃないな。舞は…やらせないっ!」

その機体はダンバインであっても黒紫色だった

押し込むようにして相手を弾き飛ばす

『くっ、やるなっ。おまえの名は?』

「相沢祐一、地上人だっ!」

『このトッド様の邪魔をしたことを後悔させてやるぜっ』

「ちっ、舞っ、ほかは頼んだっ! T-LINKソードっ!」

俺はゼロにすばやくT-LINK用のユニットを構えさせ、光り輝く刃を思い浮かべる

そして再び組み合う刃

(祐一…がんばって…っ!?)

舞はその場から離れた瞬間、二人の方向に接近する機体を見つけた

(あれは…)

舞はとっさに予備のオーラソードを投げつける

それに気がついたその機体は自らのそれではじく

『横から攻撃するとは騎士の風上にも…サーバインだとっ!?』

「祐一の邪魔はさせないから…止めるっ!」

こちらを向いたのを確認すると剣を構えて向かう

『面白い…私の名はガラリア・ニャムヒー、このバストールと勝負っ!』

ガラリアは叫ぶと再び加速してきた

 

 

 

 

「あゆちゃんはどうするの?」

「ボクは装備を槍に変えたんだよっ。当たれば貫けるんじゃないかな」

あゆはクラスターガンダムにプロトタイプガンダムにあったようなビームランスを構えさせる

真琴は今回、Z+Cを変形、名雪のSFSとして動くようだ

真琴のZ+Cはオリジナルよりも一回り大きく、上部の装備をはずせばSFSになるのだ

栞は援護に、ハイメガキャノンが思った以上に損傷が激しいらしい。香里は艦の護衛である。

「目が慣れればこれくらいっ」

回避を真琴に任せ、射撃に集中できる名雪は
確実にドラムロにオーバーハングキャノンの狙いを定める

狙うのは射程距離ぎりぎりの遠方、バリアをはらせないためだろう

幾条かの閃光、伸びた光は三機のドラムロに直接突き刺さる

MSと違い、核爆発は起きないようだ

そのまま失速して墜落して行く

 

 

「装備が変えられる分、全部を使えなきゃねっ。当てるよっ」

あゆは肩に装備したガトリングガンを平行に放つ

次々と無数の弾丸がドラムロの動きを止める

「もらったぁっ!!」

北川は叫んで突っ込む

衝撃に動きの止まっていたドラムロたちが剣を構えるが遅かった

「ふっ!」

北川が繰り出した拳はドラムロの剣を弾き飛ばす

そう来るとは思ってもいなかったせいか、バリアは生まれなかった

近くの残ったドラムロが弐式に肉薄する。
左右から挟みこむ作戦のようだ、だが

「グラビティ・ウォールっ」

重力壁に阻まれてドラムロの攻撃が止まる

「遅いっ」

後退しようとする相手を地面へと蹴り飛ばす

一機残ったドラムロがあゆに迫る

必死の加速に避けきれず、左腕を切り裂かれる

「うぐぅ…当たっちゃったよ…お返しっ」

あゆのビームランスがドラムロの右肩を貫き、戦闘力を奪う

周辺のドラムロを撃破した四機に敵の奥から光が伸びる

「危ないっ!」

佐祐理がミノフスキーシールドを広げて四機をかばうが、
飛行能力の無いガンダムMk=Vは後方に押される

「うぐぅ、佐祐理さんっ、大丈夫?」

「あははーっ、大丈夫ですよ〜。それより、来ましたっ!」

なんとかふんばった佐祐理の機体が向く先から
ショットのスプリガンともう一機、オーラボンバーが迫ってくる

 

 

 

「えぅ〜…攻撃がなかなか効きません…」

「しょうがないでしょ。MSは基本的に対MSなんだし…」

グレイファントムからもミサイルが撃ち出されるが、
斬られるかバリアではじかれるかで直撃は少ない

それでもグレネードや拡散バズーカは物理的な衝撃によってドラムロを迎撃できるようだ

艦に取りつこうとする相手を選んで二人は迎撃を続ける

 

 

 

 

(きりがないな…くっ)

『どうした? この程度かっ』

トッドの笑い声が響く

正直押され気味だった

一瞬でも気の抜けない斬り合いが続く

そのとき、周囲が嫌な雰囲気に包まれる…これは…あのときの…

『これで終わりだっ!』

「くっ、邪魔を…するなっ!」

『なにぃっ!?』

T−LINKソードの出力を上げ、トッドをはじくとゼロを舞にむける

舞のほうから何か伝わってくる

 

 

 

 

『騎士が負けることは許されないのだっ』

ガラリアは必死の形相で剣を振るう

「何をあせっているの?…わからない」

舞は組み合う剣から伝わってくる相手のあせりが何を意味するのか疑問だった

それでもバストールが大きな力で満たされて行くのがわかった

持った剣に力が凝縮されていく

「…来る」

『終わらせるっ!』

オーラ力を身にまとうバストールを相手にすべく舞のコックピットが黄金の光にあふれる

サーバインの白い機体が白刃となってバストールと組み合う

今までのように組み合う刃、だが

両者を中心として巨大なプレッシャーが広がった

 

 

『これは…オーラロードが開く!?』

見知らぬ女性の声、シーラと言う人だろうか?

舞と敵が組み合う瞬間を目撃した俺にその声が響く

戦闘を行っている場所…違うっ…これはこの世界すべてが…

俺はこの世界に飛ぶ直前に起こった発光現象がこの地域だけで起こってるわけではないことを悟った

「みんなっ、グレイファントムに近づけっ!」

返事を待たずに俺は舞のほうへ向かう

しかし…世界は光に包まれた

 

 

 

 

 

(これは…また祐一と離れるの?…それは…嫌っ!)

地上とバイストンウェルをつなぐオーラロード、
それをくぐる中、舞は心中で叫ぶ

舞の心に答えるように声が響く

「舞が望むならワタシはがんばるよ…願って…絆が導いてくれることを…」

「…うん…」

自分の体から伝わる懐かしい波動に舞は身を任せ、願う…

祐一と、佐祐理と…自分の大切な人と離れないよう…

「これで良いんだよ…ね?」

「…誰?」

自分の力が意識をむけたほうを向こうとするがその前に舞の意識が飛ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まったとき…彼らは地上にいた

 

続く

 

次回予告

突然現れた場所に戸惑いを隠せない祐一たち、
だが敵はそんな祐一達に容赦無く襲い掛かる

「祐一か!? おまえどこに行ってたっ!」

「往人さん? 話は後で、今はやつらを」

唐突な再開、往人との共同戦線

 

「幻術で惑わそうなどとっ」

パニックのままに戦いを続けるガラリアと相対する舞

説得に耳を貸そうとしないガラリアに舞は問う

「あなたは…戦いに何を望むの?」

組み合う刃、同質の力が結ぶ意識、

「私は…」

舞は自らの思いを乗せて剣を振るう。大切な人達を守るために…

 

次回

〜異世界からの帰還〜

 


後書き

ユウ「外伝でたらどうなるかねえ・・・遅くなりました。バイストンウェル編終了です」

あゆ「うぐぅ…オーラバリア…堅いよぉ・・・」

ユウ「あゆはまだ良いだろ。単体用の高出力兵器を持っていないあの姉妹はどうなる?」

あゆ「うぐっ」

ユウ「ん? がふっ」

ばたっ

香里「はぁ、はぁ…ふぅ、すっきりしたわ」

栞「…お姉ちゃんって…あっ、メモがありますよ…なになに、
  『なおグレイファントムは故障しなかったためにこうなりました』だって」

香里「ふぅん…でもどうするのかしらね? この先…」

あゆ「うぐぅ…わからないよ…」

ユウ(復活)「どっかで言ったような気がするけど、祐一たちはフォールドしませんので」

栞「わっ…びっくりしました」

ユウ「さて…衛星軌道上の使徒…戦わせてみたいけどスケジュールが合わない…残念」

あゆ「これで終わり?」

ユウ「ああ…さて」

四人『でわでわ〜っ♪』