カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




第十八話

〜異世界からの帰還〜

 

 

頭がふらつく感触の後、俺は都会の上空にいた

「これはっ!? キャニーっ、現在位置は?」

「…照合完了。東京上空ですっ」

気がそれていたために落下していたゼロを浮かせながらそれを聞く

「グレイファントムおよび各機体、舞さんのサーバインも確認しました。
…っ!? 舞さんと直前まで戦っていたABが接触しますっ!」

「なんだって!?」

俺の視線の先でサーバインと一機のABが剣を合わせる

 

 

 

「っ!…ここは…どこ?」

舞は自分の視界に入った状況から都市だとはわかった

「…アレは…ガラリア?」

前方に浮く一機のABを見つけると通信をつなぐ

「あなた、これからどうするの? ここは地上、あなたの世界じゃない」

『地上だとっ!? 幻術で惑わそうなどとっ!』

ガラリアは舞の言葉に納得せず、剣を構えて再び接近してきた

混乱したままのその攻撃をさばき続ける

「うそは言わない。ここはバイストンウェルじゃない…あなたが戦う理由はあるの?」

舞は表情を引き締めるとガラリアの繰り出した一撃をその剣で受け止め、
組み合ったまま自らのオーラ力を高めて行く

『何をする気…なにっ!?』

「言葉が信じられないなら…感じて…私の心を…」

剣と剣の間に光が生まれる

舞は自分の思いをガラリアに伝えるべく念じる

『ふふっ、心でうそはつけない…か…、だが…はいそうですかと
自分を否定することも出来ないのだ…』

「だったら…っ!? 避けてっ!」

舞はガラリアのバストールを蹴り飛ばすようにしてその場から離れる

その瞬間、二機のいた場所をライフルが通りすぎる

「なに?…機械獣!?」

舞の視線の先には二機のグールと機械獣軍団が映っていた

 

 

 

〜グレイファントムサイド〜

「おまえらの母艦はないんだよっ! どうして…」

取り残されたにもかかわらずこちらに襲い掛かってくる一緒に地上に出たドラムロ達を迎撃する

地上に出た影響か機体が重い

「キャニーっ!」

「だめですっ! 出力上昇しませんっ!」

「ぐはっ、やばいっ」

反応が遅れた瞬間、目の前に一機のドラムロが接近する

が、次の瞬間それは視界から消えていた

『祐一かっ!?』

「往人さんっ!?」

ドラムロを吹き飛ばしたのは零式のブーストナックルだった

良く見れば資料で見せてもらったR−2とか言う機体やマジンガー達も一緒だ

『祐一、おまえ達はいったいどこに…っ!?』

「感じましたか…何か来ますっ!」

往人さんと俺が何かを感じた次の瞬間、町の一角が爆発に包まれた

「なんだ!?」

『あれは…グール! 二機いるということはあしゅら男爵とブロッケン伯爵かっ!』

町の中に機械獣軍団が侵入してくる

「祐一さん」

「美汐? みんなはどうしてる?」

「はい、佐祐理少尉以下、全機迎撃に移ります。祐一さんもお願いします」

「わかった。機械獣なら今のゼロでも十分だろうからな…
往人さん、そういうわけで共同戦線お願いしますっ」

『わかった。無理はするなよっ』

「はいっ…っと舞は…」

俺は舞の方に視線を向ける

二機がはじかれるように離れた後、敵の方がどこかへといってしまった

 

「舞?」

「大丈夫。きっとわかってくれたから…」

「そうか…行くぞっ!」

「…(コクッ)」

うなずき返した舞に微笑んでゼロを加速させる

 

「現在の状況ではT−LINKソード、チャクラム、セラフィックダイブは使えません」

「わかった…市街地への被害が少ないように敵を撃破する個所を検索してくれっ!」

「了解っ」

市街地へと向かおうとした俺の前に四機の飛行する物体が迫る

「落ちろっ」

拡散状態のフォトンライフルを撃ち込み、
四機をまとめて撃つものの、動きを止めることしか出来なかった

「ここは任せろっ」

「北川!? 頼んだっ」

四機をすり抜けるようにして市街地に向かう

「ふっ、せいっ!」

すれ違いざまに舞はオーラ力をまとわせた剣で一機を切り裂き、俺に続く

 

 

 

「左方向の敵母艦に向けてミサイル1番から4番まで発射用意っ!
町に落とさないようにしっかり狙ってくださいっ!…発射っ!」

グレイファントムからのミサイル発射と同時に
カタパルトから応急修理をすませたあゆと真琴、香里と栞が飛び出す

名雪と佐祐理はすでに発進し、市街地へと向かっている

「私と栞が手近なやつらを叩くわ。二人は先に行って頂戴」

「うんっ、わかったよっ」

「あぅーっ、了解っ。あゆ、ついてきなさいよっ」

「うぐぅ、待ってよ〜」

ウェイブライダー形態に変形した真琴に必死にあゆがついていく

 

「さあ、ここは」

「私達が守りますっ!」

「行くわよ栞っ」

「はいっ!」

二機はすばやく機械獣へと迫る

頭部に鎌を備えた、ガダラK7が鎌を飛ばす

「甘いですよっ…当てますっ」

栞はメタス改の左手に構えさせたサーベルでそれをはじくとお返しとばかりに
アームビームガンをガラダK7の頭部に向けて撃つ

それは正確に頭部に穴をあける

「まだ生きてるっ!?」

頭部を撃ちぬかれたガラダK7からいくつものミサイルが香里に向かってくる

「街中じゃ迎撃も出来ないわね…ならっ」

香里はスーパーガンダムを急上昇させる

ミサイルも香里を追ってその軌道を変える

「拡散バズーカ…ショットっ!」

ミサイルをかいくぐり、その下に回りこんだ香里は上空に拡散バズーカを放ち、迎撃する

地上の栞はその間にガラダK7を完全に破壊する

「お姉ちゃんっ!」

「っ!? きゃぁっ」

上空の香里を青いレーザーが狙う

栞の叫びにとっさに回避行動をとったものの、バズーカが消し飛ぶ

「痛いことしてくれたわねっ!」

上空からロングライフルを構え、狙いを定める

「大方あの二つの頭部からでしょっ!」

ピンポイントで放たれたライフルは、上を向いていたダブラスM2の頭部を直撃する

「隙ありですっ」

栞はサーベルでダブラスM2を上下に切り裂いた

二人は残った機械獣の迎撃に移る

 

 

 

 

「俺だってパイロットだっ…はぁっ!」

下に叩きつけるわけにはいかないので逆に上へと相手を蹴り上げる北川

『おおっ、ジェノサイダーF9がっ』

グールからの叫びが通信にのって響く

「ジェノサイダー? 皆殺しなんてさせるかっ。マキシブラスターっ!」

弐式から飛び出たエネルギーは相手のほとんどを蒸発させる

「っ! 来たっ」

右手から突進してきた一機をかわし、横手からそれを蹴り、もう一機へと直撃させる

「グラビティウォールっ!」

墜落していく二機を下から支え、ブーストナックルでそれぞれを上空へと押し上げる

「行くぜっ! ファイナル・ビームっ!」

弐式の全身が赤く染まり、膨大な量のエネルギーが射出される

二機はその身を蒸発させた

 

 

 

「名雪さんっ、援護お願いしますっ」

「了解っ」

先行した二機はグールの一機と戦いを繰り広げていた

佐祐理は落下する爆弾から町を守り、名雪は周囲に徘徊する機械獣を瞬く間に狙い撃ちして行く

追いついてきた真琴とあゆも迎撃に参加する

街中のために下手にダメージを与えてこの巨体を落下させるわけにはいかない

打開策を考える佐祐理とそれを援護する三人、そのとき

「ここはマジンガーに任せろっ! ブレスト…」

「待ちなさいよっ!」

「なっ、なんだっ!?」

真琴がマジンガーに通信をつないで叫ぶ

「あんたっ、こんな街中でそんな高熱ばらまいてどうすんのよっ!
避けられたら町が溶けちゃうじゃないっ! 少しは頭使いなさいよねっ」

「うっ…」

「そうですね〜、ならここは」

佐祐理はそこで接近してくる零式を見ると通信をつなぐ

「往人さん…でしたよね? 佐祐理がシールドで爆発を防御しますから迎撃をお願いします」

「わかった。ライっ、援護頼むっ」

「了解」

「うぐぅ、ボクもがんばるよっ」

高度をとる零式を援護するべく、名雪たちからの射撃がグールに飛ぶ

『ぬぅぅ…なんということだっ』

その攻撃にグールの動きが止まる
その隙に往人がグールの下に回りこむ

「不浄なるもの…裁きをその身に刻めっ! 計都煉獄剣っ!!」

空に溶けこみそうなほどの蒼さを伴って零式の手に刃が現れ、
往人の念動力の増大とともにそれは巨大化しグールを一刀のもとに縦に切り裂く

「アブソリュートシールド全開っ!」

往人は零式をバリアで包み込む

瞬間、爆発

 

「あゆさん、ミノフスキー粒子をシールド用にばら撒いてくださいっ」

「わかったよっ」

あゆはクラスターガンダムに装備させたミサイルランチャーから
ミノフスキー粒子の詰まった弾をいくつも撃ち出し、爆発させる

「ミノフスキーシールド最大出力っ! 町は…守りますっ!」

一時的に高濃度になったミノフスキー粒子がシールドに反応し、
街の上空を巨大なシールドが覆う

町がシールドのピンク色の光に染まる

 

 

「佐祐理が巨大なシールドを張ります。シールドの発動に合わせて迎撃をお願いします」

「わかった。舞っ、しとめるぞっ!」

「聞いてた。落とす…」

舞は息を整えて集中する

コックピットの空気が動き、舞の体が光に包まれる

『虫けらがぁっ』

動きの止まった舞を狙って敵から攻撃が来る

「させるかっ、キャニー、アブソリュートシールド収束っ」

「はいっ、アブソリュートシールド前方へ収束しますっ!」

まばゆい光の中、ゼロの前に形成されたバリアが敵の攻撃をはじく

そして町がピンクのシールドに覆われる

「舞っ、今だっ! 行けぇっ!」

ゼロの起動時間が迫っていることを確認しながら俺は叫ぶ

「この力なら…行けるっ。…斬っ!」

サーバインにオーラ力をまとわせた刃を構えさせ、下からすくい上げるようにしてグールを切り裂く

一撃では終わらず、機体を分身させ、幾方向から次々と斬りつける

「無抵抗な町の人を…許さないからっ! はぁっ!」

ひときわ鋭い一閃が叩きこまれる

グールがその身から煙を上げる

爆発の直前、舞はオーラバリアを展開する

衝撃に耐え、祐一もその身をバリアに包んでいることに安心する舞

 

爆発が収まり、美汐から通信が入る

「祐一さん、お疲れ様でした。往人さんと同じくアーガマ部隊所属の
ライディース少尉達を収容しました。帰還してください」

「わかった。舞、行こう」

舞の返事を聞いて帰還する

 

 

 

 

 

 

 

「異世界…か」

「信じられないかもしれませんが」

往人さんのつぶやきに美汐は言う

「すべてを納得するのは難しいが、現実に君たちが現れるところを目撃した以上、
証言を無視するようなことはしない。ただ…」

「ただ?…なんです?」

「ショウ君…他数名の少年達は見つけ次第こちらで保護したほうが良いと思う」

ライ少尉の言葉に俺はうなずく

「俺達よりもそちらのほうが彼らを保護しやすいですから…よろしくお願いします」

たとえどんなに戦果があるといっても、俺達が新参者には変わりがない

政治的にも力がないのだ

「了解した。悪いようにはしないつもりだから安心してくれ」

「話は済んだみたいだな? 祐一、俺達を第2新東京市まで運んでくれるか?」

「? 何かあるんですか?」

「ロンド・ベル隊がそこにいるんだ。俺達は別行動を取っていたんでな」

「美汐?」

「補給や修理も必要ですし、そうしましょう」

オペレーターが艦内に連絡をする

 

 

 

〜MSデッキ〜

「お前か? さっき俺に怒鳴ったのは」

「そうよ…何か用?」

マジンガーを降りた甲児はあゆと話している真琴の声を聞くとそう言った

「せっかくマジンガーの見せ場が出来たと思った」

ばしっ

「うぉっ!?」

「あんたがどんなやつかは知らないけど…そんな気持ちで何時も戦ってるの?」

真琴の表情は普段絶対に見られないほど真剣だ

「真琴は…いつも…次の瞬間大切な人が戦いに巻き込まれて泣いてしまう人がいるかもしれない、
そうでなくても真琴や祐一達が死んだりしたら絶対に悲しくなる…だから自分が目立たなくたって
悲しむ人がいなければそれで良いと思ってる。あなたは…目立つために戦ってるのっ?」

真琴の声に驚いて周囲が静寂に包まれる

「言い方が悪かったな…俺も地球を守るために戦ってるさ」

「あぅーっ、なら良いの…怒鳴ってごめんなさい…」

「気にしないでくれ。真剣に戦っている仲間がいて嬉しいからな。
俺は往人のところに行って来る」

甲児はそう言うとその場を去った

「真琴ちゃん」

「あぅーっ、なによぉ。そんなに真琴には似合わない?」

「うぐぅ、違うよっ。すごかったなって」

「ありがとうっ。じゃあ栞でも手伝いますかっ」

「うんっ」

 

 

 

今ここに、しばらくの間二つの光が集う。

だが、それは鈴が2個に増えただけだと気がついている者は多くなかった

 

続く

 

次回予告

特務機関ネルフからの指令により、
エヴァ弐号機を受け取りに行くことになった祐一達と往人達

途中ロンド・ベル部隊はリーンホースシJrとの合流に向かう

往人を迎え、弐号機の受け取りをする祐一たち

そこに新たなる使徒が現れる

単身出撃し、苦戦する弐号機に変わり迎撃に移る祐一たちと往人

鈴がおびき寄せるのは真実か新たなる謎か…

次回

〜鈴の二重奏〜

 


後書き

ユウ「な〜んか指が動いたのでいつもより早いぞ〜」

香里「今回は役に立てたし…」

栞「本当です〜。前回は足手まといもいいところでしたから…」

ユウ「まっ、補給が出来る地上ならなんとかするから任せてくれ」

香里「そう? 期待してるわよ」

栞「私も祐一さんを助けたいです〜」

ユウ「林原さんは気分がのるねえ…うむ、雛祭り書いたらまた書くかも、今日はこの辺で」

三人『でわでわ〜っ♪』