カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




第二十話

〜再会と叫び〜

 

「…やるか…」

俺はある格納区画の扉を前につぶやいた

「これをほうっておいたら世界…いや、銀河の危機だ」

すばやくパスコードを入力し、扉を開ける

「…これは…まさかっ!?…くっ、…抹消は無理か…」

俺はうなだれてその場から立ち去った

 

 

部屋にはオレンジ色をした何かに周りを固められた使徒のサンプルが静かにたたずむだけだった

 

 

 

 

 

 

 

「祐一…君…」

絶望にも似た物に蝕まれながら通路を歩いているとあゆが近づいてきた

「あゆか…どうした?」

全身を襲う何かに耐えるように自らの肩をつかむあゆ

「もう…どうにもならないの?」

「ああ…ブツはアレに覆われている…
秋子さんに先の先を越されたよ…」

「うぐぅ…そう…なんだ…」

二人してうなだれたまま談話室に向かった

 

 

 

 

「ふはは…そうだよな…ゼロがあれば…なあ、北川? お前もそう思わないか?」

自覚できるほどの黒い感情に心が満たされていく…

「相沢…無茶は止めておけ。その瞬間は良くても、…後で後悔するぞ」

談話室にいた全員が同じ感覚に身を震わせる

「そうか…そうだな…何も俺達が食べさせられるわけでもないしな・・」

少しだけ…そう、ほんの少しだけ希望が見えた気がした

俺は気分を切り替えようとブリッジに向かう

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、祐一さん、異常はありませんよ」

「そうか…海ばっかりだよな…」

「ええ…」

諸島に沿って動いているために島々は見えるがそれだけだ

ブライト艦長達は直接南アタリア島に向かっている

 

俺が空の蒼さに眼を細めたとき、

「艦長っ! 前方で戦闘反応確認っ!!」

「交戦者と距離を正確に把握してくださいっ!
先発は機動性の高い名雪さん、舞さん、祐一さん、お願いします」

「わかった」

ダッシュでブリッジを出、デッキに向かう

 

 

 

「いつでも行けます」

「よしっ、相沢祐一、ヒュッケバインゼロ、出るぞっ!」

一足先に飛び出る

 

「グレイファントムからのデータによると一機に対して複数で交戦が行われているようです」

そうか…って前にもあったな…こんなの…

「まさか…」

「そうみたいですね」

青白い空に溶けこむ青い機体、あれは…

「マサキっ!!」

『なんだぁっ!? っと…祐一かっ!』

やっぱり…

「どうしてここに…とは聞かないほうが良いみたいだな。損傷は?」

『長旅の疲れで動きが鈍い…援護を頼む』

「わかった」

長旅って…目的地にたどり着いていなかったのか?

ゼロを加速させて一気にサイバスターのそばに向かう

敵は…オーラバトラー!?

あいつらも地上に出ていたのか!?

『新手か? 面白い、ダー、ニェット、トリプラーをかけるぞっ!』

敵の中で緑色をした三機が息の合った行動で接近してきた

「3人同時!? 黒い三連星じゃあるまいしっ!!」

一機目を避け、二機目を見据えた瞬間、

『もらったっ!!』

「上っ!?」

二機目を飛び越えて一機が上からかぶさるようにして襲ってきた

前と上の同時攻撃…くっ、かわせないっ

 

 

 

『なんだとっ!?』

三機目の男は呆然と自分の機体の右腕を見る

何も無い空間を…

「助かった、舞」

剣をかみ合わせたまま言う

間合いを取ったその敵に舞は向かう

「油断した…借り一つ…」

 

「わかった…一機づつなら…
チャクラムソード、GOっ!!」

呼びかけに答えて二つのチャクラムが飛び出す

だが、はじくようにして敵は俺から離れ、チャクラムを切り裂いた

「ぐはっ…強いっ!」

この動き、確実に敵のエースだ…ここは…仕方が無い

手加減できる相手じゃなさそうだ…

敵の剣に光が集まるのを見とめるとゼロに構えさせ…

「だめです…現在T−LINKソードは使えません…」

そうか…調整が済んでなかったな…

「わかった…なら避けてやるっ!!」

残像を残して突進してくる相手を見据える

「アブソリュートシールドっ!!」

斜めにシールドを張り、攻撃を受け流す。そして

「すまんっ」

シールドに攻撃を流され、がら空きになった敵の横から
圧縮フォトンライフルを連続で撃ちこむ

それらは敵のオーラバリアを貫いて突き刺さった

「他の二機はっ!?」

周りを見る

 

 

「マサキさん、大丈夫?」

「ああ、一応…」

「強がりはよくないニャ」

「そうそう、ここは任せて艦に収容してもらいましょ」

自分も疲れていたのか、シロとクロが顔を出す

「あっ…」

「…出るなよ…お前ら…」

マサキが頭を抱える

『ニャっ!? しまったニャっ!!』

ハモって叫ぶシロとクロ

「ねこさんだよぉ〜…」

すでに名雪の眼は尋常ではなかった

そんな二人に祐一にやり過ごされた一機が迫る

「ねこさん…見ていたいんだよっ!!」

「げっ」

感情のままに放った名雪のオーバーハングキャノンは
その一機を正確に貫き、蒸発させていた

サイバスターのコックピットにマサキのうめきが響く…

「ねこ〜、ねこ〜」

「こらっ! そのまま飛びついてくるなっ!!」

「ゆれるニャ〜…」

「しくしくしくしく…」

名雪はV´ガンダムのままでサイバスターにとりつき、機体を揺らす

 

後から追いついてきた北川と香里にはがされるまで名雪はサイバスターを揺らしていたらしい…

 

 

 

 

 

 

 

「左手だけで?…逃げないの…」

敵が左手で剣を構えるのを見ると舞は静かに正面へ剣を持ってくる

「正面から戦う必要は無いから…はっ!」

サーバインの左手で予備の剣をすばやく投げつける

なんなくそれをはじく敵

「こっち…せいっ!!」

敵が上を振り仰ぐが舞は太陽を背にしてその視界を封じる

動きの無いまま、敵は上に構えた剣ごと二つに分断される

 

 

 

 

 

 







「んっ?」

「どうしたんですか往人さん?」

「いや…祐一、今お前俺のこと呼ばなかったか?」

「呼んでませんけど」

「そっか…」

「そうしたんです?」

「いや、頭に誰かが呼ぶ声がしたような気が…」

困惑する往人さん

「もしかして…南アタリア島になにかあったんじゃありませんか!?」

俺はそう言った

今までにもその感覚のときは何かがあった

「そうかもしれないが戦っている最中だろう?」

「大丈夫ですよ。なっ、みんな?」

俺は全員に呼びかける

「大丈夫だよ」

「うぐぅ、ボクもっ」

「問題無いわね」

「はい、大丈夫です」

「俺もやれるぜ」

「あぅーっ、負けないからっ」

「平気…」

「あははーっ、余裕ですよ〜」

散らばって各自ABを殲滅していた全員から返事が来る

「往人さん、先に行ってくださいっ」

「祐一!?」

「このぐらい…任せてくださいよっ!」

「すまない」

 

 

「みんなっ、往人さんが敵陣を抜けるまでの援護を頼むっ!!」

『了解っ』

俺も前に見える敵に集中する

グレイファントムや俺達の援護射撃の中、
往人さんのウィンガストが抜けて行く

 

 

 

 

 

「邪魔をするなっ! スパイラル・アタックっ!!」

近づいてきたABに向かって体当たりをする往人

バリアごとはじかれて行くAB

往人は零式にそのままアブソリュートシールドを張り、敵陣を抜けていく

(観鈴…みんな…待ってろよっ!!)

往人は心のうちで叫び、さらにスピードを上げて行く

 

 

「栞っ、やってくれっ」

「わかりましたっ、ハイメガキャノン、発射っ!!」

往人さんを追って敵のABが敵母艦らしき戦艦から離れたのを見ると俺は叫ぶ

栞はうなずき、香里に支えられて変形をする

轟音、白光に満ちる視界

光の奔流が敵戦艦を巻き込む

迎撃は出来なかったものの、敵戦艦の動きが止まる

 

 

そして敵のABが戦艦に後退してきた

 

「祐一さん、敵が撤退していきます」

「…損害を恐れたのか?…丁度良いんだが…」

味方のいない地上では修理や補給もままならないからな…

大事を取ったのだろうか?

「っ!? レーダーに巨大な反応が二つっ!!」

キャニーの報告にレーダーを見ると…確かに…

ってあれは!?

「グラン・ガランじゃないのか?」

片方は見覚えが無いが、もう片方はグラン・ガランに間違い無い

「もう一機の巨大な反応を確認っ!…ウィル・ウィスプですっ!」

どうやら地上に出てもドレイクは変わらないらしい

 

「美汐」

『はい、各自援護に向かってください。お願いします』

「了解っ」

 

 

 

 

 

「ウィル・ウィスプをけん制しますっ! メインメガ粒子砲…発射っ!!」

グレイファントムから太い光が次々と伸び、巨体に突き刺さる

「あれだけ大きいとバリアも硬いですね…衝撃のみでも与えて行きましょう。
間をおかずにサブ、メイン双方を連続発射します。各パイロットには
予定射線軸を知らせてください」

補給を終えたあゆ、名雪、真琴の機体を見ながら言う

 

 

 

 

 

 

「舞、北川、T−LINKソードが使えない。敵のエースは任せた」

「任せろっ」

「わかった」

二機を左右に従えてウィル・ウィスプに向かう

 

 

 

 

 

「何時もすいませんね〜…」

「良いのよ、その代わりしっかり当ててよっ」

「はいっ、任せてくださいっ」

ウィル・ウィスプから新たに出てきたAB,レプラカーンにむけて
ショルダービームキャノンを立て続けに撃ちこむ

一撃目が当たり、動きの止まった相手にほぼ同じ場所へと連続して突き刺さった

「…っ、甘いですっ!」

後方から切りかかろうと接近してきたバストールの剣をシールドで防ぐ

真琴の動きを信頼しきった行動だった

「真琴さんっ!」

「あぅーっ! この距離ならっ!」

ほぼゼロ距離から放たれたビームスマートガンはバストールに大穴を開ける

「敵は…ドラムロが多いですね…」

「佐祐理っ、一気に片付けない?」

「やってみましょうか…準備は良いですよっ」

「じゃあ…行くわよっ!」

真琴はウェィブライダーを最大加速に持っていく

「…そこですっ! シールドアタックっ!!」

敵の密集した場所に突進する中、巨大なサーベルのようにシールドを展開し、
加速が乗った巨力な斬撃で駆け抜けるままに敵を切り裂いた

 

 

 

 

 

 

「こっちだって接近戦は弱くないんだよっ」

「あゆちゃんっ、右っ」

あゆは名雪の攻撃にひるんだバストールにビームランスを突き立てる

「うぐぅ…やっぱり硬いよ…ならっ」

あゆはクラスターガンダムの脇に抱えさせた武器の照準を合わせる

「うぐぅっ! ヴェスバー発射っ!!」

一条の光が近づいてきていたバストールに突き刺さる

「やったね、あゆちゃん」

「うんっ」

そこに一機のレプラカーンが接近してきた

「やらせないよっ…うぐぅっ!?」

「あゆちゃんっ!!」

レプラカーンはすばやく分身をしてあゆのヴェスバーを避けた

『はんっ、この私にそんなものが当たるかいっ!』

あゆと名雪のモニターに挑戦的な顔をした女性が映る

『せっかくドレイクのところまでやってきたんだ。
手柄の一つでも持って帰らないとねえ…覚悟しな…落とすよっ!』

あゆはビームランスを構えるものの、簡単に切り払われた

「やられちゃうっ!?」

「落とさせないわよっ!」

香里のスーパーガンダムが間に割って入るとレプラカーンの剣とビームサーベルとが組み合う

「出力が足りないわね…ならっ!」

香里はサーベルのリミッターを一時的にはずすと相手をはじく

「あゆちゃん、名雪っ、私が押さえるから二人は左右から相手を狙ってっ!」

「でもそれじゃ…」

「うぐぅ…そっかっ! コーティングがあるからなんとか…行けるのかな」

「その通りよ。でも直撃はさせないでよ…くるわっ!」

再び迫るレプラカーンに香里は向かう

『剣で勝とうなんて甘いねえ…なにっ!?』

「今っ!」

「当てるよっ」

「うぐぅっ!」

香里は組み合ったままで二人の発射を確認するとブースターの向きを逆にして急降下をする

体勢がずれたために本体への直撃はなかったが、二人の攻撃は両手を消し去った

『くっ…なんてことだい…』

レプラカーンはすばやく撤退して行った

 

 

 

「舞っ、艦にとりついているヤツラを頼むっ! 北川、行くぞっ!」

俺はグラン・ガランに迫るAB達を見て叫んだ

 

 

『その機体、聖戦士殿ですね?』

「あなた…シーラ・ナパーナ?」

『はい、私の記憶が確かならばその機体は格闘専門でしたはずですね?』

「当たってる…はっ!」

艦に近づくドラムロを切り裂きながら答える舞

『そうですか…カワッセ、ビルバインの予備のライフルを彼女の方向に射出。急いでください』

グラン・ガランから射出されたそれを舞は受け取る

「ライフル?」

『そうです。通常はオーラビームソードとして使用可能です』

「…(コクッ)。使ってみる」

『ゴラオンに援護要請っ! 聖戦士殿の攻撃に合わせてウィル・ウィスプへ総攻撃をかけますっ!』

 

 

 

 

「来たっ! 北川、頼んだっ!」

「おうっ!」

前方に以前出会った青紫のダンバインを認めると北川に叫んだ

『面白ぇっ! ショウの前にお前を血祭りにあげてやるぜっ!』

「ここは俺が相手だっ!! 計都瞬殺剣っ!!」

北川の構えた剣とダンバインのオーラソードがかみ合い、黒い光としか言いようのない発光が起こる

『その程度かっ!』

北川が反動に動きを止めた間にダンバインが後ろに回りこんでいた

「後ろっ!? グラヴィティ・ウォールっ!!」

とっさに張った壁を突き破ってダンバインの剣が弐式の左肩に食い込む

「くっ…だけどな…捕まえたぜっ! おらぁっ!!」

残った右手で至近距離から拳を次々と叩きこむ北川

剣を構えた右腕を残したまま、ダンバインは吹き飛ばされる

『ちぃっ、俺もヤキが回ったか!?』

ダンバインは旋回をして撤退して行った

 

 

 

「キャニー、ウィル・ウィスプの海面からの高度は?」

「…十分可能です。使える場所が限られますけどね」

イメージした映像を読みとってキャニーが答える

『地上人の方、お話が』

「あなたは…エレさん!?」

モニターに映ったのは湖で出会ったエレさんだった

『先を急ぎましょう。現在聖戦士殿の乗ったサーバインが敵のABを引きつけています。
私達、このゴラオンとグラン・ガランとで共同の総攻撃をかけます。援護をお願いします』

「了解っ! キャニー、両艦にさっきの作戦を伝達っ! タイミングを合わせるっ!!」

俺は言いきってから集中する

「ヒュッケバインゼロ高速機動モードっ! システム…起動っ!!」

夕焼けの瞳をしたゼロを上空へと一気に上昇させる

 

「ミノフスキードライブユニット出力最大へ…何時でも行けます」

「よしっ!…アブソリュートシールドの理想形への展開イメージを頼むっ!
やってやるっ! セラフィックダイブっ!!」

左右に光の粒子を翼にして海面へと急速降下を行う

見る見る迫る海面

「ここだっ! アブソリュートシールド展開っ!!」

空気抵抗が最大になる状態でシールドが展開される

まるで光を纏う天使のように翼をはためかせて…

同時にゼロを先ほどのように上昇させようと試みる

「…くぅっ!! 行ってくれっ!! スプラッシュウェイブっ!!!」

今まで体験したことのないGが俺に襲いかかる

「あのジャムを食べさせられると思えばこのぐらいっ!!」

俺の叫びに髪が揺れ、ゼロの瞳の輝きが増す

ゼロから伸びる翼が太さを増し、そしてゼロは再び急上昇する…周りの空気をつれて…

結果、巨大な圧力差が生じ、海面が巻き上げられた

自然では起き得ない大きさの津波がウィル・ウィスプを襲う

そして後方から二条の光が迫る

それは落ちて行く波を軽々と突き破り、ウィル・ウィスプに突き刺さる

後には甲板のABを流されきられ、煙を吹くウィル・ウィスプが残った

 

「撤退するっ!?」

ウィル・ウィスプの巨体が無数のABに囲まれて遠ざかる

『地上人の方、追う必要はありません』

「わかりました…エレさん、グラン・ガランとも連絡をとっていただけますか?
この世界であなた方を保護してくれる場所に案内します」

『助かります…』

無事だった全員と一緒にグレイファントムに戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら連邦極東支部所属、プロミスリレーション旗艦グレイファントムです。
南アタリア島応答願います。事情は追って話しますが、保護すべき人物達を同伴しています」

「了解。こちらSDF、入島を許可します」

 

そして南アタリア島へ…

 

 

 

 

 

続く

ジオン、アクシズとに制圧されかかっている宇宙への増援へと
南アタリア島の打ち上げ基地へと向かう祐一達

ついに打ち上げというときに敵襲が起こる

「お前…久瀬かっ!?」

邂逅する因縁の両者

南の地で踊るいくつもの光…

 

輝きを失った彼の求めるものとは?

「見せてもらいましょうか…君達の戦う意味を…」

 

次回カノン大戦α〜戦場を駆ける奇跡〜

第二十一話

〜終焉か始まりか〜

 


後書き

ユウ「…短かった…マジで」

祐一「本当だよな…でもなんとかなったな?」

ユウ「ああ…RX78さん、ありがとうございました。気がつかせてくれて…」

祐一「今回のは初の完全シンクロだよな? 二人の…」

ユウ「うん…IRCいれておいてよかったよ…」

祐一「そうだ、舞の機体に射撃武器がついたよな?」

ユウ「うむ、予備ぐらいあっても良いだろ…修理用の物資だってあるだろうし…」

祐一「こんなもんか?」

ユウ「だな…では」

二人『でわでわ〜っ♪』

 

ユウ「ますますアニメの次回予告みたいになってきたなあ…(苦笑)」