二日目が短くなったのでまとめました

カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




第二十二話

〜終焉か始まりか〜後編

 

 

 

―次の日―

「コーティングシールドが装備されるんですか?」

「ああ、この先はビームに対する耐性がないときついだろうからな。
既に手配してある。今から案内しよう」

往人さんの心使いに感謝した

「そうそう、シールドや機体にはわかりやすいようにマークをつけて良いそうだ」

案内された作業場で往人さんは言った

「うぐぅ、好きなのでいいんだ?…じゃあやっぱり…」

やはりというかなんというか、みんな戦闘用の機体とは思えないマークになった

舞は盾を使わないらしく、シーラ様からもらったライフルをサーバインに合わせて白く塗装してもらっていた

昼過ぎにみんなで起動チェックをかねた訓練をすることになった…

 

 

 

 

 

「舞、良いな?」

「…いつでも良い」

コックピットのモニタに映る舞の顔が真剣みを帯びる

「キャニーっ、T−LINKソード起動っ!!」

「はいっ」

腰から抜きざまに舞へと斬りつける

「はっ!」

舞も剣にオーラ力を纏わせてそれを受け止める

生まれる光が両者を照らす

「ちぃっ」

叫んで刃を幾度も繰り出す

合間合間に舞が繰り出す攻撃を必死にさばきながら間合いを取る

「さすが舞っ…ならっ」

後ろに飛び去るとフォトンライフルを撃ち込んだ

「バリアにはじかれています」

キャニーの報告が届く。まあ予想通りだが…

そうでなくては打ち上げを控えた状態で実践訓練など出来るわけが無い

舞のオーラソードライフルもゼロのシールドに阻まれる

二人のすばやい攻防は続く

 

 

 

 

 

 

 

往人は北川と対峙しながらも頭にうごめく不快さにうめいていた

(きついぞ…これは…だがそうも言っていられないか…)

往人は覚悟を決める

「北川、遠慮せずにどんどん来いっ!」

「行きますっ!!」

往人さんの声に叫ぶ北川

迷っていてはいけないと、一気に加速する

「うぉぉぉっっ!!」

小細工無しで北川は零式に弐式の体当たりをぶつける

それも前面に展開されたシールドにぶつかった

北川はすぐに間合いを取って対峙する

「良い威力だ。これを…防いで見ろっ! ブレイククロスっ!」

「ならっ、アイソリッドレーザーっ!!」

迫る攻撃に弐式から幾条もの光が伸び、迎撃する

「はぁ、はぁ。そうだ…それで良い。来いっ!!」

二日酔いの影響できつさが増すために息が荒い往人

「はいっ!」

『マキシブラスターっ!!』

二機同時に胸元から光が伸びる

両者の中間でそれはぶつかり合い、拮抗する

 

しばらくして両者からの光が消えた

「ふぅぅぅ…ファイナル…ビームっっ!!」

すぐさま北川は弐式の全身からエネルギーを発射する

「アブソリュートシールド…展開っ!!」

零式の前にシールドがいくつもの階層を形成する

一つ二つと破られるものの、その先にはたどり着けない

「くっ、次で今回の訓練は終わるぞ。何かつかめたか?」

往人は早めに終わらせるべくそう言い放つ

「…だいぶ勉強になりました…最後のきっかけをもらいますっ!! 計都瞬殺剣っ!!」

「はぁ、はぁ…この状態で出せるか!?…計都煉獄剣っ!!」

黒と蒼の双剣が輝き出す

『はぁぁぁぁっっっ!!』

二機のグルンガストがぶつかり合う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予定通りならデータ収集は順調か…帰還後、各機体の特徴を分析する…」

暗いコックピットにはモニターの発光による光が満ちていた

「規定の収集時間を終了した。これより帰還する」

男は手もとのコンソールに指を滑らせる

 

 

 

 

 

 

「あっ、鳥さんだ…」

「うぐぅ、本当だっ」

名雪とあゆの目には空を舞う鳥の集団が映っていた

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

 

 

「ペガサス級って単体で大気圏離脱も可能じゃなかったっけか?」

いまさらといえばいまさらな疑問が口から出る

「可能ですけど、その後の補給の問題もありますよ」

「…そうか…」

キャニーの指摘に納得する

今グレイファントムは打ち上げのための最終段階にある

俺達パイロットは万が一のために各自の機体で待機中だ

多分名雪は睡魔と必死で戦っているのだろう…圧倒的に不利だろうが…

打ち上げ予定時間まで後10分…

「暇だな…っ!?…この感じ…来るっ!」

ゼロのT−LINKから伝わる意識

爆音が耳に届く

「美汐、何があった!?」

『何者かが施設に攻撃をしてきましたっ!』

あせった美汐の声が響く

「わかった。迎撃する。ヒュッケバインゼロ、出るっ!!」

デッキの近くにいた俺はすばやく出撃する

 

「キャニーっ、敵勢力の反応は?」

「今のところ…五機です。敵方向よりエネルギー反応確認っ!!」

「ちっ!」

回避したゼロの脇をビームマシンガンが通りすぎる

敵は…ゲルググ!?

「形状はゲルググマリーネ、ですが…」

「ぐはっ、速いっ!?」

白い残像を引き連れてゼロの速度に追いつくゲルググを見てうめく

『そんなものですか?』

「なっ!? お前…久瀬かっ!?」

モニターに映ったのは纏う雰囲気や痩せた背格好こそ前と違うものの、久瀬に違いなかった

『呼び捨てにされる覚えは無いですが…まあ良いでしょう』

久瀬の乗ったゲルググが腕を上げると背後から四機の機体が飛び出てきた

『あなた方の力、見させてもらいますよ。…行くぞ』

「敵はジムスナイパーUにケンプファー…、バイアランにガンダムタイプ一機ですっ!!」

『祐一っ! スナイパーは任せて』

『あぅーっ、じゃあ私はケンプファーにする』

『バイアランは私が…』

『ボクは真琴ちゃんの手伝いをするよっ』

『北川君、手伝ってね。行くわよ、栞』

『わかった』

『わかりました』

『祐一さん、佐祐理がお手伝いしますね』

遅れて出てきたみんなの分担が決まる

 

 

 

 

 

 

 

「まさか…また出会うなんてな…」

北川はモニターに映る機体、そう…空よりも蒼い機体をにらみつける

「北川君、知り合い?」

「お姉ちゃん、『知り合い』は言葉が変ですよ。前にお話を聞いたじゃないですか…」

『こいつを知っているか…だが元とは違うぞっ!! ブルーブレイカー、行くぜっ!!』

栞の突込みをさえぎって相手からの通信が入る

「来るっ!? 美坂っ、栞ちゃんっ、援護を頼むっ!!」

ビームサーベルを構えたブルーと二人との間に割って入る北川

「一気に決めるっ! 計都瞬殺剣っ!!」

最大加速で突進しながら剣を生み出し繰り出す北川

『甘い、見えるぞっ!!』

「避けられたっ!?」

ブルーはサーベルで流すように瞬殺剣をさばきながらその身を移動させる

『言っただろう、元とは違うと…っ!』

横を取ってマシンガンを構えたブルーが後退する

「北川さんっ!! 相手は北川さんの動きをかなり読んで動いていますっ!!」

ブルーにビームガンを撃ちこんで栞が叫ぶ

「読まれてる?…まさかっ!?」

北川の脳裏によみがえる記憶…

『まさかと思うなら確かめるんだなっ!』

「くそっ、アイソリッドレーザーっ!!」

弐式から伸びる光をブルーは余裕で後退し、回避する

「お姉ちゃんっ、北川さんの援護は私に任せて名雪さんの援護にっ!
北川さん、行きますよ…本当のニュータイプの力…見せてあげますっ!!」

「わかったわっ!」

その隙をついて栞が叫び、香里はその場を離れる

 

 

 

 

 

 

 

「ジムスナイパーU…私の機体と同じコンセプト…ならっ!」

名雪はすばやくその場から離れる

その瞬間に名雪が今までいた場所に二条のビームが突き刺さる

「当たったよっ、反撃される前に一撃必殺…基本だよね…」

お返しとばかりにスナイパーにビームライフルを連続で撃ちこむ

「…ビームコーティング…うーっ…厳しいね…」

はじかれたのを確認して名雪はうめく

「でもっ、こっちだってっ!」

出力の高いメガビームライフルを使って攻撃を続ける名雪

『良い腕ですね…私達に協力しませんか?』

「怪しい人には付いて行っちゃいけないって教わってるもんっ」

名雪はモニタに映った青年の顔を見ながら言う

『…怪しい…確かにそうですね…ははは、正直な方だ。でもあなたは私には勝てない』

青年の瞳の鋭さが増す

「え!? きゃあっ!!」

とっさに構えたシールドに衝撃が響く

スウナイパーから放たれた攻撃が正確にシールドだけを直撃しているのだ

『笑顔の猫…戦場で戦う機体につける絵ではないですね…』

やんだ砲撃の向こうから響く声に名雪は盾を見る

「ネコ…さん…」

シールドにあったネコマークはそこだけを狙った攻撃の前に消失していた

「許さないよっ!」

逆上した名雪は思うままにライフルを連射する

『わからないのですか?…しょうがない人だ…』

スナイパーが一気に加速する

「っ!? 回りこまれたっ!?」

『痛い目にあってもらいましょう』

ガンダムの背中に照準が合う

「名雪っ!!」

香里が叫びとともに放ったロングライフルはとっさに後退したスナイパーのライフルを蒸発させる

『援軍ですか…』

落ち着いて予備のライフルを構えるスナイパー

「香里!? どうして!?」

「栞に言われてね…名雪、落ち着きなさい。マークだけを狙えたということは
あなたをさっきの攻撃で破壊することもできたのよ。一点に集中した攻撃でね…」

名雪と敵の間に立つ香里

『状態を把握できる人もいるようですね…ですが援軍がきたところで変わりませんよ』

「そうでしょうね…でも勝てなくても時間は稼げるわ」

相手の一挙一動に気を配る香里

打ち上げまであと少し…

香里はそれまで時間が稼げれば良いと確信していた

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕の相手は君達?』

「え!?…子供?」

コックピットに響いた声に真琴は思わず声を出す

『僕はこれでも12歳だよ。まあ子供は子供だけど、そっちだってまだ子供じゃないの?』

「うぐぅ…そうかも…」

「あぅーっ、あゆっ! 胸元を見て納得しないっ!! しょうがないでしょっ!!」

「うぐぅ、真琴ちゃん…声が大きいよ…」

『くすくす…面白いね。でも、遊びはここまでだよ…』

「っ!? あゆ、飛んでっ!!」

相手の声の質が変わったのを感じ、自分もジャンプしながら叫ぶ真琴

二人がいた場所をチェーンマインが風を切って飛ぶ

それは海面に水着した

『良い勘してるね』

「一応ニュータイプみたいだから…自覚無いけど」

地面に降り立った真琴が答える

『NT?…へえ…一回戦ってみたかったんだ。本物、とね…行くよっ!』

「真琴ちゃんっ!」

真琴の目が捕らえられない速度で放たれたショットガンの弾が真琴を襲うが
敵の言葉にいやな予感のしたあゆがとっさに張ったビームシールドに阻まれる

「うぐぅっ!?」

だが、ただのショットガンではなく、着弾と同時に爆発が起こり、あゆの機体は吹き飛ばされた

「大丈夫っ!?」

「うぐぅ、大丈夫だよっ、こっちからお返ししなくちゃっ」

「あぅーっ、負けないんだからっ!!」

『良いよ。相手になってあげる』

二対一にもかかわらず、余裕の口調だった

その視線の先には減りつづけるカウント…

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えろ久瀬っ!! なんで俺達と戦うんだっ?」

俺の放つライフルをすべて避けきった久瀬に叫ぶ

『ふっ…戦いたいから…他に理由があるとでも?』

「なっ…おまえ…」

動きの止まった俺にビームマシンガンが襲い掛かる

「やらせませんよっ! 久瀬さん、あなたはどこの所属なんですか?」

俺の前に割って入り、防御した佐祐理さんが問う

『倉田さんか…相変わらずですか…どうして一緒にいるのか私には理解できませんね』

「仲間…いえ、大切な人たちですから…それより質問に答えてください」

佐祐理さんの声に迷いは無かった。久瀬を強い視線で見返しながら再び問う

『所属…そうですね…私に勝てたらお教えしますよ』

「望むところだっ!!」

叫んでマイクロミサイルを次々と放つ

『単調な…それで戦っているんですか?』

そのすべてがバルカンやマシンガンに撃墜される

『今度はこちらから行きますよ…』

久瀬の機体の瞳が輝きを増す

『ふっ…』

一瞬後、目の前にやつはいた

とっさに繰り出したプラズマブレードとゲルググのサーベルがスパークを巻き起こす

「くっ…」

ゼロが押されている…

「祐一さんっ」

佐祐理さんからの援護射撃が久瀬に迫る

『遅いですよ…』

久瀬はそれを余裕で避けると上空に舞い上がる

「逃がすかっ!!」

それを追って空中へと機体を躍らせる

 

 

 

 

 

 

「…速い…強敵…」

『…やるな…』

口数の少ない戦いが続く

両者は上空に舞い上がった後、無限とも思える斬り合いを繰り返していた

正確に言えば舞がライフルを出す隙を与えられていないのだ

連続で繰り出される敵の斬撃を必死にさばくのが限界であった

「…こうなったら…」

舞の髪が揺れ、光を帯びる

『ふっ…』

バイアランのサーベルが色を変え、一気に太くなる

「せいっっ!!」

舞の繰り出した一撃とかみ合い、拮抗する

「…互角?」

『違うな』

瞬間、バイアランのサーベルの出力がさらに上がる

空気が切り裂かれる音とともに舞の残した分身が掻き消えた

『私のほうが上だ…』

陽光の元、漆黒に塗られた機体が輝く

(…このままじゃ勝てない?…でも…)

だからといって捨て身でぶつかるわけにも行かない

「祐一と…約束したから…」

舞は一言つぶやいて深呼吸をする

そして自分の中に呼びかけるように念じる

(祐一を守る力を…大切な人たちと一緒にいるためにっ!)

舞はどこかで覚えのある幼い声を聞いた気がした

サーバインが光を帯びる

『そうだ、そうこなくてはな…』

純白と漆黒が交差する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逆に聞きましょう。相沢君、君はなぜ戦っているんです?』

「守りたいから…自分が守れる人すべてをっ!」

久瀬の撃ち出すレールガンをシールドで受け流しながら言う

『そのためには人を殺すことがあっても良いと?』

久瀬の言葉に一瞬動きが止まりそうになる

「だからって死を甘受するほど人生悟ってないからなっ!!」

拡散モードにしたフォトンライフルを撃ちこむ

『世界にすら影響を与えるトリガー…あなたは自覚して引いていますか?』

余裕たっぷりでそれを回避する久瀬

「ある人が教えてくれたよ『忘れられなくても良い、けどそれにとらわれるのはいけない』って…
軍人だからって割り切るつもりは無いっ! 何もしなくて後悔するほうがもっと嫌だっ!」

ビームマシンガンを回避して叫ぶ

「世界に影響を与える? あたりまえだろっ! 今存在するすべてのものが確実に
影響を与えつづけながら存在するのがこの世界だろっ!」

俺の疑問に以前自分の答えをくれた浩平と往人さんの姿が浮かぶ

ゼロのコックピットに映るカウントが60をきる

『後悔するような結果を生み出すとしても?』

「そのための親友、そのための絆ですっ! 佐祐理は…私はみんなのことを信じてます…
立ち止まらないよう、癒しつづけます…それが、一弥の思いに答えることにもなるから…」

久瀬の放った高出力のビームカノンを防ぎながら佐祐理さんが答える

『…そろそろ時間か…』

急加速でゼロから離れたゲルググが発光弾を放つ

各方面に散っていた四つの光がそれに答えるようにその場から離脱する

「っ!? 遠距離より砲撃を確認っ!!」

「あゆさんっ!」

「うんっ」

キャニーの報告のすぐ後にピンク色の光がゼロを染め上げる

グレイファントムをかばうように佐祐理さんによって形成されたシールド、
あゆの撒いた粒子の増幅による巨大な壁がそこにあった

『今日はこれで去りましょう。次はもっと腕を磨いておくことですね…』

砲撃が防がれたのを確認すると久瀬はつぶやいた

止める間もなく、久瀬の機体はその場を去った

「逃げた?…いや、見逃してもらったのか?」

五つの光が飛び去る方向を呆然と眺める

『祐一さん、時間です。帰還してください』

「了解」

美汐に短く答える

…また…近いうちに出会う…

俺は漠然とそんな思いにとらわれていた

 

 

 

 

 

「固定に異常無し。カウント20を切りました。カウントを続けます」

「総員耐ショック用意。パイロットの皆さんは各機で待機をお願いします」

ジェットコースターのごとく上に向かう滑走路を見つめながら美汐は言う

増設された打ち上げ時用のブースターが点火される

「宇宙か…」

デッキにゼロを固定し、俺は誰にでもなくつぶやく

背後でキャニーが俺をさびしそうに見つめていることには気が付かずに…

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

次回予告

宇宙での現状を把握するために月軌道に向かう祐一達

移動しながらの北川の講習で宇宙での行動に徐々に慣れていく面々

「…何か来る!?」

漆黒の宇宙の向こうから迫る存在

 

次回カノン大戦α〜戦場を駆ける奇跡〜

未知なる空間


あとがき

ユウ「外伝はいいやねえ…といいつつこれを書き上げたときには全然進んでいません(汗)」

ユウ「そうそう、毎回ゲストを出すのはやめました…」

ユウ「単にめんどくさくなっただけです(爆)」

ユウ「次に書くのは久瀬視点です」