カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜




第二十四話

〜未知なる空間〜後編

 

 

「先頭の接触まで後二分、既に索敵範囲内です」

「わかりました…各パイロットに伝達。三十秒後に艦隊による一斉射撃を行います。
射線上および、効果範囲からの離脱をするよう伝えてください」

今は嵐の前の静けさ、一分もすればここは命の光が飛び交う戦場になる

『リガミリティアからグレイファントムへ。艦隊の展開は完了。射撃用意も完了した』

グレイファントムを陣の中心に抱き、作戦が展開される

 

 

 

 

 

 

 

「敵さんは佐祐理達よりかなり多いです。…ですから殲滅は考えず、目的であるマスドライバー射出による
隕石およびそれを援護する機体の破壊が目標です。前面は北川さんと舞にお願いします」

「了解。燃えて来たぜ…相沢にどやされないようにしないとな」

「…討ちもらしは任せたから…」

「比較的武装の少ない栞さんのメタスを中心に陣を組みます。 左側は沢渡さん、
右側はあゆさんがお願いします。 名雪さんも同じく左、佐祐理は右に行きます」

『了解っ』

視界には他の艦隊から出てきたMS達も見える

「うぐぅ、艦隊の援護射撃まで十秒を切ったよっ!」

「各機は下方へ降下、敵を下から急襲しますっ!
モニターの輝度を下げるのを忘れないでくださいね 」

佐祐理の号令とともに全員が一気に降下する

あらかじめ暗くしておいたモニターすらまばゆく輝くほどのメガ粒子砲が絨毯のように放たれる

「作戦開始っ! 生きて帰りますよっ!!」

「うんっ! 行くよ〜〜っ!!」

名雪はすばやく前面にいたゲルググをメガビームライフルの射線に入れる

「うぐぅ、ヴェスバー発射準備完了っ。撃つよっ」

同様にあゆもヴェスバーを発射する

二機のゲルググが宇宙に散る

「…索敵情報確認。栞、頼むわよ」

「…来たっ。ロック開始…」

メタスのコックピットに無数のロックマークが表示されていく

今回の作戦に備えて用意された使い捨ての多弾ミサイルポットである

その大きささはメタスの数倍を軽く越えており、一回きりだということを主張している

「ロック完了っ! 発射しますっ!!」

自身を発射による白煙で包みながら、メタスから大量のミサイルが発射される

それは向かってきているMS達に次々と襲い掛かっていく

「佐祐理たちは敵陣に切り込みます。味方の作戦進行を援護しますよ」

自分に向かってきたビームをシールドではじきながら佐祐理は言う

『了解っ』

あわせて七条の煌きが敵陣に突進していく

 

 

 

 

 

 

 

 

「少尉たちの場所は常に確認していますね? 他艦隊の様子はどうですか?」

「戦力比はおよそ1対30。絶対的に不利です」

戦艦の数からして絶望的なのだから仕方があるまい

「後は私達がどこまで敵をかく乱できるか・・ですか……艦内に伝達っ! 
メガ粒子砲の発射能力の維持に努めるよう連絡してください。 一機でも、少しでも多く破壊しますよっ! 
メインサブ両メガ粒子砲発射用意っ! MSはかまわないで戦艦を狙ってください。・・・発射っ!!」

ブリッジが閃光に染まる

「祐一さん…早く…早く…」

美汐は小さくつぶやく

いつだって祐一がいれば何とかなるのだと確信しているからだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャニー、まだか!?」

「まだですっ! 後三分以内には宙域に着くはずです」

モニターに光が走る

「戦闘が始まったようですっ!」

「ちっ…待ってろよっ!!」

歯がゆさに耐えながらその先を見据える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いのか? 久瀬?」

「ああ、今の状態ではまともに戦えないだろうからな」

「そうだねっ、そんなのに勝ってもしょうがないよ」

「それじゃ、どこかでのんびりますか?」

「大丈夫だ。すぐに何かが起こる」

久瀬の言葉に全員が驚く

「なぜです?」

「勘だ…おかしいか?」

「いや、信じよう。なあカイン?」

「だな」

ガイに頷くカイン

そのまま五人はゼロの光筋を眺める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友軍三番艦大破っ! っ!? マスドライバーの発射行動を確認っ!!」

「メガ粒子砲はっ?」

「だめですっ! 友軍が射線上に多くいますっ!!」

「任せるしかありませんか…援護射撃を続けてお願いしますっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「? 名雪さんっ! 来ますっ!!」

栞が叫ぶ

「わかったよっ。…見えたっ!!」

名雪のスコープ内に、加速され今にも飛び立とうとする隕石が入る

「オーバーハングキャノン…いっけーーーっっっ!!」

打ち砕かれた隕石の破片がそのまま敵を幾機も巻き込み、破壊する

「っ!? シールドビット、GOっ!!」

敵の行動を見た佐祐理が追加された防御用の装備を打ち出す

それは七機の入った区画をさえぎるように広がり、一枚のビームシールドとなる

十数機のシールド発生装置が互いに干渉しあい、堅固な壁となった

シールドの中心は佐祐理の機体のシールドである

名雪の行動を見て、こちらに来るであろう攻撃を防ぐためである

案の定、敵の艦隊からの砲撃が集中する

「うぐぅっ! 真琴ちゃんっ! 行くよっ!!」

「良いから早く乗るっ!」

「うぐぅ…うわわっ」

あゆのクラスターガンダムを乗せた真琴のZガンダムが急加速で敵に向かう

「このっ」

Zからのビームカノンがドムの頭部を貫く

「うぐぅ、ミサイルが来たよっ」

「わかってるわよっ」

Zを降下させ、距離を取る真琴

「ガトリングならっ」

あゆはその間にガトリングでミサイルを撃破していく

その直後二機を衝撃が襲う

「うぐぅーーっ!?」

「あぅーっ!?」

あゆはその衝撃のせいで真琴のZから吹き飛ばされる

とっさにバーニアを吹かし、体勢を整える

「そこっ!」

ミサイルの爆風の向こうから狙撃してきたケンプファーにビームランスを投げつける

狙いたがわず、それはケンプファーを串刺しにした

「ごめんねっ」

爆発する前に槍を抜き、真琴を探すあゆ

「いたっ!」

 

 

「あぅー…っ!? 後ろっ!?」

真琴のNTとしての勘が機体をその場から動かす

その瞬間、さっきまでいた場所を無数の光が襲う

「なにっ!? …ビット!?」

真琴は視界にわずかに認めた小さい物体をそう評した

真琴の回避を確認し、それらは向きを変えた

「あぅっ、避けられない!?」

「だめーーっ!!」

あゆが真琴とビットの間に割って入った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…きりが無い…」

舞は静かにつぶやく

既に10機ほどのMSを撃破している

「…来たっ」

サーバインが白い残像を残して回避する

その勢いのまま、ライフルがバウの腕を吹き飛ばす

「はっ!」

慌てるバウをそのまま切り裂く

サーバインをその向こう側からのビームが襲う

「…どこから?」

オーラバリアでそれを防いだ舞が現状を把握する

「有線?…なら…」

舞はその仕組みを確認するとあっりとその線を切り裂く

浮遊するそれをつかみ、もとの機体に投げつける

それは発射したばかりの敵のメガ粒子砲に反応、有爆し敵を巻き込んだ

周囲から何機かのドライセンがフォーメーションを組んで迫る

「…横一直線は油断…はぁぁぁっっ!!」

舞の髪が揺らぎ、サーバインの剣が光をまとう

振るわれた剣からオーラが衝撃となって放たれる

横に広げたそれはドライセンをまとめて切り裂いた

「…前に出すぎた…後退する」

味方から離れたことに気が付いた舞はサーバインを転進させた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…これはっ!?」

「うー…この大きさだと打ち抜いても破片が燃え尽きずに突入しちゃうよ…」

あの後いくつもの隕石を破壊した名雪達は他と比べ、あきらかに大きさの違う隕石が加速されていくのを確認した

「グレイファントムより入電っ! 祐一さんが間に合ったそうですっ!」

「わかりました。グレイファントムおよびゼロにデータ転送お願いしますっ!」

栞の報告に佐祐理が言う

 

 

 

 

 

 

 

「データ確認。アレで行きましょう」

「おう。G・イレイスキャノン発射準備っ!!」

「了解っ! グラビコンシステム起動…エネルギー充填開始…」

加速をつけたまま、ゼロの後部から伸びでたライフルを持たせる

「T−LINK必要レベルまでの駆動を確認…発射可能まで後5…4…3…」

モニターが狙うべき部分を次々と拡大していく

隕石は最終加速に入ったようだ

「射線上の味方退避を確認…1…発射準備完了っ!!」

隕石を包むロックが赤くなる

「よしっ! G・イレイスキャノン、発射っ!!」

ゼロの瞳が赤く輝き、ライフルから虚無の破壊力があふれる

通過する場所のすべてを飲み込んでそれは進む

そのまま発射されたばかりの隕石を消滅させ、その背後にあるマスドライバーをかすりながら虚空に消えた

かすっただけだが、状況から見る限り使用不能になったようだ

「…敵艦隊、撤退に移るようですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

「全艦隊に通達っ! 作戦成功っ、各人撤退作業に移行してくださいっ!!」

無理な深追いはしなくてもいいのだ

「こちらの各パイロットの状況は?」

「損傷はかなりあるものの、全員無事です」

「…よかった…」

美汐は胸をなでおろした

 

 

 

 

 

 

 

「祐一っ、無事だった?」

「うぐぅ、ボクがんばったよっ」

「あぅー…疲れた…」

「おう、帰ってきたぞ」

名雪、あゆ、真琴の機体をみつけ、近寄る

「うぐぅ、聞いてよ祐一君。あのね…うぐぅっ!?」

「あぅーっ、何っ!?」

「何だ!?」

「えっ、えっ!? どうしたの?」

三人は何かを感じ、恐怖する

「…何かが来る…」

「っ!? マクロスの軌道衛星上に大量のエネルギー反応っ!」

「なんだって!?」

「詳細は不明っ!…っ! 地表マクロスより高エネルギー反応確認っ! 発射されますっ!」

地球から太い光が伸び、突然反応が出た部分を貫く

「…どうやらマクロスの主砲が発射されたようです」

「往人さんたちに何かあったのか?」

俺は美汐に連絡を取る

 

 

「こちらでも確認しました。グレイファントムだけでも向かいましょう」

「ああ、急がなくっちゃな」

「っ!? えぅー…また何か…」

「くっ…今度は何だ!?」

再び襲う頭痛に意識をもっていかれそうになる

一瞬の間の後、何かが消えた

「そんなっ!? 地表からマクロスの反応が消えましたっ!!」

「なんだってっ! 撃墜されたのか?」

キャニーの報告に叫ぶ

「違います。存在そのものが地表から消失しました。マクロスに装備されているという
フォールドというワープ航法が働いたのではないでしょうか?」

美汐の報告が聞こえる

「…美汐、シャインシーズンと連絡を取ってくれ」

「わかりました」

 

 

 

 

 

「一体何が…」

 

 

 

 

続く

 

次回予告

浩平達と出会うべく月で補給を行う祐一達

月をたった祐一とあゆ達は何かの存在を感じる

それは目的が近づくまで眠りにつくことを決めた存在だった

 

次回カノン大戦α〜戦場を駆ける奇跡〜

―同じラインに存在するもの―