カノン大戦α

〜戦場を駆ける奇跡〜


第三十二話

〜姉妹の輪舞(ロンド)〜中編

戦闘は終わった・・・だが

「ふぅ・・・」

ヘルメットを取り、その拍子に汗が落ちていくのを感じながら傍らの浩平を見る

そう、同じ恐怖が迫る戦友を・・・

たくましささえ漂う顔を俺もしていると信じたい

その後、唐突に現れた(まあ自在に動けるのだから当然だが)
キャニーに驚きながらも皆の元に行く

 

 

 

(死地から生還したかと思えば・・・く・・・)

「戦闘後の糖分補給はパイロットにはお勧めよ、浩平」

「そうですね、正しい判断だと思いますよマスター」

・・・由起子さん、キャニーまで・・・

キャニーがまたマスターとたまに呼ぶのはまあ置いておいて・・・

視界に入るのは例のワッフルと美汐の用意したと思われる羊羹に抹茶・・・

恐らく浩平は羊羹、つまり美汐のことは知るまい・・・ならば

 

そして、俺の作戦は成功した

 

「ぐ…はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」

浩平が荒い息をあげてテーブルに倒れ付す

・・・すまんな、浩平

これでどさくさにまぎれて俺は食べなくてすむ

仕上げだ・・・

「閉ざされた密室!!」

大げさにばっと腕を振りかざし、壁を指す

「そりゃあ宇宙ですからね」

「そして被害者のそばに置かれた抹茶と羊羹」

コツコツとわざと足音を立てながらテーブルのそばを歩く
軽く腕を組み、思考する振りを忘れない

「被害者って………」

「これらから推理できることはただ一つ」

閉じていた目をカッと見開く。これも演出だ

「なんの物まねですか?」

「何も知らない我が親友を毒殺したのは…」

溜めを入れ、皆を見渡す

「…毒?」

ふ、あくまで邪魔をするかキャニー・・・だがっ!

「犯人はおまむぐぅっ!!」

負けずに美汐を指差した瞬間、 何かが口に放り込まれた

「あほなことやってんじゃねぇ」

そんな浩平の声を聞きつつ、ダウンする俺であった

 

「これ、どうしましょう?」

「そうねえ・・・あ、ちょっと、悪いけどこれ片しといてくれる?」

キャニーの後ろにたまたま通りかかったスタッフの一人に声をかける由紀子

「わかりました。あれ? 手付かずものありますけど・・・」

「? ああ、別に食べちゃってもいいわよ」

そういい残し、キャニーと由紀子はその場を去った

 

そして・・・

「もったいないし、食べましょうか。ね、メイプル」

「うん♪」

メイプルと呼ばれた少女(先ほどのスタッフ)の同僚が先に一口・・・そしてうずくまる

「あ・・・甘いわ・・・」

「ん? おいしいと思うけど?………もったいないなぁ……」

一方、メイプルは平然としていた

プロミス・リレーション、シャインシーズン両エースを撃沈した甘味は
そうして一人の少女の胃袋に消えていったのであった

 

 

 

 

 

〜数日後、グレイファントム訓練室〜

 

「ふっ・・・くっ・・・」

「・・・あと20回・・・」

マットに汗が落ちてしみを作る

場所はラビアンローズ内部の一角である

低重力とはいえ、それならそれ相応の訓練方法がある

舞に背中に乗ってもらい、腕立て伏せの真っ最中である

「・・・ある程度出来てるから、底上げ・・・」

・・・? てことは、名雪とのマラソンもどきは一応の効果はあったんだな・・・

「・・・終わり」

手早く汗をふき取り、伸びをする

「ふぅ、あゆはドジしてないだろうか心配だな・・・」

「あゆちゃんが一人ついて行っちゃうなんてね〜」

名雪からタオルを受け取り、汗をふく

そう、異常が検出された宙域調査に向かうという浩平達に、唯一先にオーバーホールが
終わっていたあゆがついてしまっていたのだ

一方の俺たちはオーバーホールを終え、秋子さん経由を含めた情報を受け取るまで待機の予定だった

 

 

〜三時間後〜

 

 

「謎の襲撃、ですか」

俺たちの教官代わり、ということでいっしょに行動することになった
由起子さんから資料を受け取り、言う

というのは表向きだが、単にどこかに動くのが面倒なんじゃないかと思う・・・まあいいか

配られた資料によるとここ数週間、連邦、ジオンなどどれかの陣営に限定せず
各陣営の補給路や、施設が襲撃を受けているというのだ

これでどこか一つの陣営が攻撃を受けているとなれば対策も立てられようが、
的確ともいえる襲撃は確実に各陣営の動きを鈍くしているらしい

「どこの所属部隊かも不明、部隊の数もまったく不明・・・
唯一わかっているのは機体のパーソナルカラーが漆黒だということだけよ」

護衛MSのカメラが捕らえたものだろうか、かなり荒い画像だ・・・

「どの陣営の方々も十分な抵抗ができていないようですね」

「・・・電撃的に制圧されてる・・・」

佐祐理さんや舞の言うように、交戦開始からの施設、もしくは
護衛と、輸送部隊の壊滅までの時間は目に見えて短い

「おかしいな。輸送物資や資材の残骸が無い…?」

まるで、と言いかけて言葉が切れる

その先は言いたくなかった

「あ・・・」

結論を同じくしたのか、資料を支えていた名雪が声を漏らす

「あぅ? 本当だ・・・ねえ美汐、どういうことなの?」

「どこかに持ち去られている、ということですよ」

「パーツやその他、整備や補給のために奪ったと仮定して、全体で整備可能な数はそう多くないはずですね」

「やっかいだな…」

「それだけの物資で整備できる戦力でこれだけの行動力、ってことだよね」

それだけの腕の持ち主が遊撃、か

「それに伴い、私たちはいまから護衛に移るわ」

用意されたスクリーンにラビアンローズと、それを中心とした宙域図が写る

「ここ、ラビアンローズに向けて実験機と、それに伴う物資がアナハイム他、
数社から私たち、まあ、正規連邦軍には機密で受け渡しがされることになってるわ」

「機密? なんでまた?」

「深く考えないでいいわ。わかりやすく言えばこちらのほうがより前線、つまりデータ収集ができると判断されたのよ
裏を考えてたら悲しいけど、やっていけないのが世の中よ。さて、意味するところはわかるわね?」

無言でその場の全員が頷いた

 

 

 

 

「索敵範囲内異常無し」

補給や修理を完璧に終え、 艦は目立つので輸送シャトルと同型の シャトルへと美汐は乗り込み、護衛にあたっている

今回はそのシャトルにも増設したセンサー群が索敵に使われている

なにしろ、まったく未知の相手だ

どんな反応があるかすら、そもそもステルス機体という可能性もある

「・・・T−LINKなら・・・ひょっとしたら・・」

「うまく捕らえられるといいですね」

パラボラアンテナを手に持ち周囲をクルクル見渡す、
そんな格好をするミニキャニーが少し可笑しかった

『全員輸送シャトルのエンジン部分を狙えない位置に機体を展開しなさい。
足を止められるのが一番つらいのよ。戦闘が起きた際もそれを考えて動くこと。
後、当然ながらコンテナは奪われないようにね。破壊は無いわ。何せ
パーツ類とは違って機体そのものだから、中身は知られてないとしても襲撃があったなら、狙って捕獲してくるわ 』

「了解。それにしてもコンテナの数が多いですね」

下手をすれば二桁の機体数がありそうだ・・・

『下手な護衛のまま何回も輸送するより一回で終わらせるつもりみたいね。
信用されてると思いなさい。それがあなたたちの実力にもなるわ』

散会し、定期的に連絡をとることにする

「? これは…以前襲撃された輸送部隊か?」

近くの金属反応を確認すると連邦系列のMSらしき残骸が漂っていた

「全部動力部へのパイプラインやコックピットを一撃ですね」

キャニーの手早いサーチの結果が敵の腕をさらに証明する

「ここが最適のルートである以上、ここを通るしかないわ。まるで大航海時代の海賊のようにね・・・」

「隊長、救難信号をキャッチしました」

「・・・どういうこと? このルートには他に部隊は通らないはずよ」

美汐の報告に首をかしげる由起子さん

「どうやら運良く襲撃から逃れた別ルートの輸送部隊が救助を求めているようです。
信号も正規のものです。ですが、周囲に追撃の敵と思われる反応もキャッチしています」

「・・・見捨てるわけにはいかないわね。倉田少尉および美坂、水瀬両軍曹はこの場の警戒を継続。
他は私を先頭に救助に向かうわ。輸送部隊に進路の変更を通達しなさい。戦力が離れなくてもいいようにね」

少しでもそばにいさせるということか・・・

信号の位置はここからそう遠くない・・・これなら!

 

 

「映像キャッチ。写します。これは!?」

「黒い・・・襲撃しているのはこいつらか!?」

キャニーが拡大した映像に写るのは黒い系統のカラーリングのMS部隊
輸送機を包囲し、抵抗を封じている状況のようだ

「でも、ジオニック系のMSだけ?」

「・・・別部隊」

真琴の指摘に舞がうなずく

「ともあれ助けに行かないとなっ」

フォトンライフルのサイトを輸送機を襲う一機に・・・何!?

「敵MS、目標をこちらに変更した模様です」

敵はこちらに気がつくやいなや、周囲に散乱する残骸やすでに襲われた後のMSたちを盾に散開した

今までに見えた機体はギラドーガとザクV・・・

「敵は障害物を盾に包囲を敷いているわ。各自死角からの攻撃に注意しなさい!
相沢少尉は被害状況の確認っ!」

叫んで由起子さんが包囲の一角に突進する

「おい、無事か?」

真琴や舞も各自攻撃を開始している。俺は輸送機へと近づき、生存者の確認をしようとしていた

敵を警戒し、背を輸送機に見せる状態である

「ああ。無事だ」

輸送機からはずいぶんと落ち着いた男の声がした・・・何か・・・

「避けてください!」

「何!? くぁぁぁっっ!!」

衝撃とともにカノンが後方へと吹き飛ばされていくのが実感できる

輸送機の壁が爆発したかのように吹き飛んだかと思うと中から新たにMS達が出てきたのだ

疑問を感じ、とっさに張ったシールドがかろうじて衝撃の直撃を防いでいた

『あっさり近づくとは、子供だなっ!』

衝撃から復帰するひまを与えるつもりはないのか、
一機がまっすぐ突っ込んでくるのがわかる

「く、なめるなぁっ!」

揺らぐ視界の中、感じる意識だけを頼りにブレードを振るう

『そういう行動が子供だというのだ!』

かろうじて視界に入ったモニターの中で敵MS、漆黒のギラ・ドーガが掻き消える

「敵MSの攻撃によりブレードが弾き飛ばされました!」

キャニーの叫びがコックピットを満たす

なんとか体勢を整えたものの、ビームソードアックスを構えるギラ・ドーガのモノアイが光る

あれで柄をはじかれたのか・・・

『性能はよくとも子供では話にならんな』

一言、そして奴は迫ってきた

「正面っ!? ならっ」

殺気とも覇気とも言える意識に飲まれないように気を保ちながら
ライフルの照準を合わせたかと思うと、カノンを衝撃が襲った

「くぅっ」

「上方からビーム兵器の攻撃!」

シールドが防ぎはしたものの、衝撃に狙いがそれる

(目の前の意識が強すぎて周囲の意識が感じ取れなかった!?)

『戦場において目の前の敵しか見ないとはなっ!』

『フリード大尉、援護しますっ!!』

モニターに少なくとも4機以上の敵が狙いを俺に定めていることを示す警告が並ぶ

このままではっ!

「システム起動。包囲の薄い方へと加速する!」

ブースターの光を残し、移動する
包囲が薄いのは偽装輸送機であった

「なんとか・・・回避成功、ですね・・・。っ!? 輸送機内部にエネルギー反応増大! これはっ!」

何があった?と問いただす時間も無くモニターを光が満たし、地震にあったかのようにカノンがゆれる

「ぐぅぅぅっっ」

揺れる視界に爆発する輸送機が写る
今日何度目の衝撃だろうかとおぼろげに思った瞬間だった

「敵輸送機の自爆ですっ! 内部からですから、誰かが点火作業を行った模様です。
T−LINK出力低下。シールドの展開率30%を切りました」

「馬鹿なっ、自分で死んでいくなんて!?」

『それが戦争というものだ!! 小僧!!』

「だからってぇぇっっ!! T−LINKソードっ!!」

爆発の隙を利用し、目の前にきていた隊長機らしき
黒いギラ・ドーガへとソードが振るわれ、そのアックスを手首にあたる部位から切り落とす

『それで止めたつもりかっ!!』

だがそれにひるむことなく、切断の勢いすら利用して相手は迫ってきた

「ぐはぁっ!?」

専用の装備を施しているのであろう敵のショルダータックルに意識がゆれる

『さあ、共にあの世へ行ってもらおうか。少尉、撃てっ!』

「なっ! 自分ごと撃たせる気か!?」

背後から羽交い絞めにされた上、先ほどからの連続した衝撃に思うように出力が上がらず振り払えない

『我らが同朋が撃破されてきた貴様の機体の性能は認めよう。だからこそ・・・なのだよ』

「出力上昇しませんっ、このままではっ!!」

『これが戦士の生き様、戦い方というものだっ!! 魂に刻むがいい小僧っ!! ジーク・ジオンッッッ!!!』

叫びに答えるように相手の部下であろうギラ・ドーガの銃口がこちらを向く

『・・・できません!! 自分には戦士としての勝利より大尉を失わないほうが大事であります!!』

だが、攻撃は照明弾であった

『ぐぅぅっ、ばか者がぁっっ!!』

「くぁっ」

数秒後、ガクンと揺れが伝わり、隊長機がカノンから離れていくのを感じた

『勝負は預ける! 我ら闇の狩人は貴様らを獲物に定めたぞっ!!』

隊長機からの叫びが力強く響いていた・・・

「小坂機接近してきます」

視界が利かない中、キャニーの報告が嫌に大きく聞こえた気がした

 

「予想以上に熟練者が多い部隊ね。小隊ごとに各個撃破を目標としていたわ」

由起子さんの腕を持ってしても周囲の状況と敵の動きに、しとめそこなったという

「ともあれ、輸送部隊は無事でよかった・・・んですかね」

「いえ、まだね」

「え!?」

『さすが白銀の鷹、ですかね。感づかれるとは思いませんでしたよ』

「そっちこそ、全動力をカットして残骸にまぎれるなんてやるじゃない。
たまたま反射で装甲が光らなかったら危なかったわ」

宇宙の色だったはずの一角が再び黒という色を帯びる

「ゲルググマリーネ…久瀬か!」

『どうやら生きてはいたようですねえ。さすがにあがく能ぐらいはありましたか?』

「こいつっ!…」

熱くなりかけた頭が由起子さんのディジェが視界に入ったことで冷める

『あなたがいる限り挑発は無駄ですか…』

「右っ!?」

声の終わりに合わせてか、ビームライフルの光をすばやく回避する
攻撃としては余りにも意味の無い攻撃

つまりは戦線を切る行為

「しゃべってても仕方ないわね。やるんでしょう?」

『ええ』

そして…戦いが始まる

 

 

 

 

 

「…勝負っ!」

舞は様子見を行わずに最初からオーラソードに力をまとわせ
とある一機へと接近する。ビーム状の大剣を腰に構えるバイアランへと…

かみ合う剣同士のスパークが機体を照らす

「せいっ! せぁぁっ!!」

『まだまだ荒いっ!』

予想通りの声に舞の顔が真剣さを増す

ガイの一撃が上方へと舞のソードを切り上げた

「川澄流表技、天昇っ!」

切り上げられた勢いを逆に利用し、
回転しての下からのすくい上げを繰り出す舞

機動戦、というものに慣れ始めた舞はようやく生身での剣技を再現できるようになってきていた

間一髪回避された余波が先の残骸を切り裂く

『舞っ!』

「佐祐理!?」

新たに二機、連邦系列にはふさわしくない色のジムスナイパーU、
そして名とは違う漆黒になったブルーブレイカーが割り込むようにやってくる

「できる限り輸送機から引き離さないとね…行くよ!」

「ですね。行きましょうっ!」

「…了解」

 

 

 

 

 

「あぅーっ、にらみ合いをするって性にあわないのよね…」

多彩な武装と動きで輸送機を狙うケンプファーを迎撃するものの、
スラスターをフルに使った機動は真琴の攻撃のチャンスを減らしていた

「栞、観戦してないで索敵注意よ」

『は、はい』

(何かが…何かが見てる…?)

 

栞に警戒の声を出しながらも、どこか懐かしい意識を真琴は感じていた

 

 

(…何…この感じ…)

『栞、観戦してないで索敵注意よ』

「は、はい」

真琴さんの声に慌てて答える。けど…

「…そっち!?」

感じるままにアームビームガンを放ったその先には…ガンダムタイプ!?

間髪いれずにやってくる強化されていると思われるビームライフルの光条が宇宙を裂く

「漆黒ということは久瀬さんたちの仲間ということですか…え…」

照らされた機体の推測を始めた思考が止まるのが冷静な部分でわかる

そう…黒いけれども相手は…スーパーガンダム…お姉ちゃんの搭乗機

「お姉ちゃんっ!!」

傍受なんて頭から抜け落ちたように私は叫んでいた…相手に向かって…

 

 

 

 

『どうして僕らが襲撃を分散させてるか知りたいかい?』

「結構よ。ジオンでも連邦でも、ましてやジュピトリアンでもない。
そんな部隊の所属先なんて案外予想がつくものよ。そうなればおのずと…ね」

「上かっ!」

手早く放った拡散状態のフォトンライフルが何かにはじかれる

Iフィールドではない…ビームではないのだ

「グラビティー系列のフィールド…」

「バルマー帝国!?」

キャニーの言葉の意味はそれを意味する

地球側にはHシリーズやGシリーズしか、しかも
一部しか装備されていない装備…

『お姉ちゃんっ!!』

「栞? お姉ちゃんって…」

突然の叫びに戦場の動きが一瞬止まるのがわかる

「美坂軍曹の方向に未確認機体を感知。どうしますか?」

『さて、謎解きは進めるほど謎が増えるものだね。
ここでジュピトリアンがあるポイントで戦力を集中させて、
しかもなんらかの作戦行動をしてるといったらどうするかい?』

キャニーの声をさえぎるように入ってきた言葉は衝撃的なものだった

「久瀬、一体何を!?」

「どういうつもり? あなたたちにメリットがあるとは思えないけど?」

『メリットデメリットはこちらで決めることですよ』

俺や由起子さんの声にも余裕の表情の久瀬が冷笑する

『さて、用はそれだけです。あなた方がそのうち護衛に出てくることは予想できてましたからね。
人類同士、せいぜい争って何が産まれるか実感してみることです』

「敵機の撤退行動を確認。小坂隊長、どうしますか?」

「全機撤退完了まで警戒を継続。その後ラビアンローズに戻るわ」

「了解。真琴、栞のほうを頼む」

本音を言えば追いかけていろいろ聞き出したいことはある

だが…俺たちはもう軍人の立場でもあるし、何より状況はそれを許してくれそうに無い

「何が…望みなんだ? 久瀬…」

ヘルメットを脱ぐと、ぐっしょりとかいた汗が空調によって冷え、嫌な感覚を覚えさせた・・・

 

 

 

「お姉ちゃん…」

「栞、本当なの?」

動揺を隠せない栞はメタスをオートで動かしている

「はい…わかります。私には…」

ニュータイプでも、念動力でもない。家族という血の絆

「真琴は信じる。栞が信じてるんだもん」

「…はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして輸送機と俺たちはラビアンローズに帰還し、
休む暇も無く浩平達と連絡をとり、
事実の確認に再び忙しさの中に身を投じていくのだった

 

 


 

 

 

〜闇の狩人母艦〜

「何故、あの時私を撃たなかった!?あの時貴様が撃っていれば、
奴等のエースを殲滅する事が出来たのだぞ!  私の教育を忘れたか」

「自分はまだ大尉に教わることがたくさんありますっ! フリード大尉の教育を忘れる筈ありません・・・しかし・・
自分には大尉を撃つ事など・・・出来る筈がありません。勿論、如何様な罰でも受ける覚悟はあります」

敬礼のまま、不動の体勢をとる部下の目はまっすぐと私を見つめる

「・・・よかろう。望むようにより厳しく戦士の戦い方を教えてやろう」

「・・・大尉っ!」

部下の顔が輝くのはいつのときでも気分がいいものだ・・・

そして艦長に移動を指示する

向かう先はジオン前線部隊の中でも戦績は双璧をなすと軍人内で評される部隊・・・

宇宙の闇の狩人、そして・・・地上の闇夜のフェンリル隊・・・

 

 

地上から宇宙へと、祐一たちの戦いは激しさと複雑さを移していた

 

 

 

続く

 

次回予告

 

久瀬の言葉は虚言ではなかった

集結するジュピトリアン・・・そして・・・

「俺がなんとかしてやるっ!」

地球を、そして大切な人達を守るために振るわれる力こそ本当の力・・・

 

次回カノン大戦α〜戦場を駆ける奇跡〜第三十三話

−姉妹の輪舞後編−


あとがき

・・・うーむ。どうにも・・・調子が・・・

 

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