毎日の風景は書けないです…

 

 

 

 

 

 

「雪ですね…」

「ああ…」

佐祐理と俺の声が冷たい空気へと消える

 

 

シスターパニック!?〜七人の妖精編〜


第四話

終わる年と始まる年と…Aパート

 

 

 

水瀬家に来てすでに数日、ずいぶんと打ち解けることが出来たようだ

今日は大晦日、そのために…

ばたばたばたばた、がちゃ

「祐一お兄ちゃ〜んっ、準備できたよっ」

「真琴もっ、早く行こうよっ」

「あゆ、真琴、あまり急がせてはだめですよ」

家族の中でも元気なあゆと真琴が飛び込んでくる。美汐も一緒だ

「今日の雪も積もるかな…」

「きっとそうですよ。名雪お姉ちゃん」

「そうしたら雪合戦…」

続いて名雪、栞、舞が入ってくる

「じゃあ秋子さんにあいさつしてから行こうか。佐祐理も下に降りよう」

「はい、お兄様」

佐祐理に言ってから開け放った寝室の窓を閉める

閉まる瞬間に部屋に滑りこんできた雪に妙におかしさを感じながら部屋を出る

 

 

「ではこれがおせちの…こっちが雑貨です」

「わかりました」

秋子さんから2つの財布を受け取る

中身は材料を買うための資金だ

「すいません毎年外せない仕事が入ってしまって
お正月の準備はなかなか出来なかったんですよ…」

「あるうちは良いじゃないですか。こっちは任せてください」

心配そうな秋子さんに胸を張って答える

「本当にすいません。今年は祐一さんが来るって職場で話したら
手が足りないから泊まりこみで来てくれと頼まれてしまって…」

「真琴もいるんだから心配しなくても大丈夫よっ」

「うぐぅ、ボクもいるもんね」

二人の声を聞いて唐突に不安が増大したのは俺だけだろうか?

「それでは行ってきますね」

「はい、行ってらっしゃい」

『いってきま〜す』 「行ってきます…」

七人全員を引き連れて家を出る

とりあえず目標は商店街だ

 

 

 

さすがに七人もいると商店街に行くだけで騒がしい

 

「あっ、猫さんだ…ねこ〜、ねこ〜っ」

とある家の縁側に寝そべる猫をみて暴走しかかった名雪を確認すると
すばやくリュックから取り出した青中心の猫耳を名雪につける

「名雪っ、ほら猫さんだぞ」

「にゅ?…本当だ〜♪」

差し出した手鏡に映る自分を見て暴走は収まったようだ

名雪はそのまま笑顔で歩き出す

「…お兄さん…趣味ですか?」

「いろいろとな…」

悟った口調で言う美汐に答える

俺が背負ったままの大きなリュックの謎が解けたようだ

 

 

 

「うぐぅっ!?」

ずべしっ

「どうして女の子は何もないところで滑るんだろうな…」

雪が積もってるのだから仕方がないといえば仕方がないのかもしれない

あきれながらもあゆに手を差し出す

「ありがとうお兄ちゃん…手…暖かいね」

あゆがはにかんで答える

ふと見れば真琴がこちらを歩きながら静かに眺めていたが…

「あぅっ!?」

ずべしゃっ

「あぅ〜〜〜…冷たい」

当然よそ見をしていればこうなりやすいわけで…

「真琴もか…ほら」

空いていた左手で持ち上げる

「ありがとう…つないでても良い?」

冷たい目にあったが思わぬところで望みがかなって真琴は複雑そうだ

「ボクも…」

「別に…後で他と交代だぞ」

残り五人がかならず言い出すと踏んだ俺は先に言っておく

納得した二人を引き連れて前を行くみんなに追いつく

 

 

 

 

 

 

 

「さて、おせちには何を入れる?」

商店街に入った俺は全員に聞く

「イチゴはだめ?」

「却下…おせちだぞ?」

「う〜…じゃあ猫さん」

うなだれて揺れる耳をいじりながら名雪

「食えるかっ!」

ボケまくる名雪に突っ込んでおく

「たい焼きが良いなっ♪」 「勿論肉まんよっ♪」 「バニラアイスですっ♪」 「…牛丼が良い」

「どんなおせちだよ…」

俺は頭を抱える

その後、何とか説得に成功しておせちが売っている店に入る

 

「黒豆はどうする?」

かごを持って隣の佐祐理に聞く

「そうですね〜、どうせ甘いなら栗きんとんで良いんじゃないですか?」

甘いかどうかって問題ではないのだが…

「え? お兄ちゃん、クリ○トンさんって甘かったんですか?」

「んなわけないっ! 栞…べた過ぎ…」

聞き違えたことに恥ずかしがる栞を撫でておいて次を選ぶ

「…これ」

舞が示したのは伊達巻きだ

「好きなのか?」

「…(コクッ)」

「そうか、じゃあ4本ぐらい買っておくか」

頷いた舞を見て籠に入れる

「…ぐるぐる」

舞は伊達巻きの渦を見ている…もしかしてなるとも好きかな?

そう思うほどの真剣さであった

「うぐぅ、ボクはこれが好きなんだよっ♪」

あゆが持ってきたのはカタクチイワシの田作りだった

「ほう…あゆは共食いをするのか?」

「…これって鮎だったんだ…知らなかったよ…」

あゆはショックを受けたようだ

「違いますよ。これはイワシです」

ちっ…やるな美汐…

二人の間に火花が散った気がした

美汐は俺がわざとボケていることに気がついているようだ

「私はこれが良いな」

名雪は昆布巻きを持ってきた

「海藻類は体や髪の毛に良いですからね」

「そうだな…名雪の髪の毛もさらさらだ」

美汐の声を受けて名雪の髪の毛を手ですくようにしてなでる

「お兄ちゃん…私の髪の毛さらさらかな?」

「ああ、触っていて気持ちが良いぞ」

俺がそう言うと少し顔を赤くしながらもされるがままになった

「あぅ? あっ、塩抜き数の子だっ…お兄ちゃん、これってすぐに食べられるんでしょ?」

「そうだろうな、『塩抜き数の子』だし…」

普通の数の子は塩抜きをしなければ塩辛い物である

これに限らず塩抜きのときは真水を使わず、
食塩で塩水を作った方が良いのだ

「佐祐理も数の子は大好きなんですよ〜♪」

「そうか、どれくらい欲しいんだ?」

好物なら沢山食べるんだろうな…

「ふぇ?…お兄様ったらこんな街中で…でもお兄様だったら3人ぐらいは…」

「…は?」

一瞬固まるがすぐに数の子のいわれを思い出す

「違うぞ。どれぐらい食べたいか、だ」

「ふぇぇぇぇぇ…恥ずかしいですぅぅ…」

周囲の視線から逃れるようにぽふっと俺の背中に顔をうずめる佐祐理

「…ふっ」(←頼られて嬉しいらしい)

なんだかんだで次に向う

 

 

 

次はしめ縄等のお正月用の雑貨だ

話を聞く限りちゃんとしたお正月の飾りつけはやったことがないらしい

今年からは俺がいるから大丈夫だろう

「ねえ祐一お兄ちゃん…なんで雑貨屋さんにイワシさんがあるのかな?」

名雪が魔よけとも言われているそれをさして言う
地方によってわら飾りだけだったり、形が馬の蹄鉄だったりするようだ

「あれか、ほらお正月はみんな面倒で動きたくないだろう?」

「うん…そうだね」

「その間に猫さんがお腹をすかしたときに食べる非常食なんだ」

俺は真面目な顔をして言う

「えっ、そうだったんだ…猫さんのためにあったんだ…」

名雪はすっかり信じたようだ…誘拐されていまわないか心配だな…

「…はぁ…お兄さんだめですよそんな嘘を言っては…」

「お? 知ってたか?」

突っ込んできた美汐に答える

「常識ですよ。早く買って帰りましょう」

「そうだな」

とりあえず玄関に飾るしめ縄を…

後、鏡餅用の台も必要なために二手に分かれてそろえることになった

俺の方は舞、真琴、あゆである

しめ縄の区画に着く

「…兄様、これは何に使うの?」

舞がお徳用の長いしめ縄を持って言う

うむ知っている美汐はいないな…

「それはだな、舞達みたいなかわいい女の子を逃げられないように
縛って自分の物にするために使うんだ」

もちろん大嘘である

「…そう…(ぽぽっ)」

「あぅ…祐一お兄ちゃんは…」

「そうしたいの?」

舞は照れ、真琴のセリフをあゆが続ける

縛られる自分を想像したのか顔が真っ赤である

「そうだな…そうしても良いか?」

わざと暗い笑みを浮かべて3人ににじり寄る

手にはもちろんしめ縄である

あゆ達はじりじりと後退するものの、後はすぐに壁である

どん…

3人が壁にぶつかった音が響く

「さあ始めるか」

俺がそう言うと3人はきゅっと目を閉じる

かすかに震える姿がそれまでなかった被虐心を誘う

『祐一君妄想中』

……

ぶはっ!…俺って…

いたいけな彼女達をだしに妄想した自分を恥じて正気に返る

 

 

 

(さてそろそろ冗談だって言うか)

そう思い、『冗談だ』と肩に手を置こうとしたが

『祐一お兄ちゃん…きつくしないでね?』

「…(コクッ)」

ずべしっ

3人の反応にその場にこける

「あれ? どうしたのお兄ちゃん?」

「いや…こう来るとは思っていなかったからな…」

にじんでいた涙はどこへやら、あゆが聞いてくる

「ちなみに冗談だ」

「あぅーっ…びっくりした…」

信じきっていた3人が息を吐く

*教訓

正直な子を嘘でだますのはやめよう

 

繰り返せば嫌われるからな…

3人に謝ってレジに向う

ちょうどよく美汐達と合流し、水瀬家に帰る

 

 

 

 

 

「名雪、正月飾りは今からはだめだぞ」

大晦日に飾ると悪霊が取りつきやすいと言う。
全部信じるわけではないが、妹達に何かあっては大変だからな…

量が量だからか、終わったのは日が暮れたところだった

「みんなはどうするんだ? 新年は起きて迎えるのか?」

一応聞いてみる

「えっと…名雪お姉ちゃんはもう寝てるし…どうしようお兄ちゃん?」

「名雪姉さんは私と真琴でお風呂に入れてもう寝ることにします…
私も眠いですから…真琴もでしょう?」

「…うん…眠い…」

「うぐぅ…ボクも…」

規則正しい生活の美汐とはしゃいで疲れた真琴とあゆは寝ることにしたようだ

「俺達はとりあえず布団を準備してくるか?」

「そうですね」

佐祐理を引きつれて2階に向う

 

 

「何にせよ冷えないように風呂に入ってから暖房をつけて過すか?」

「そうしましょう。もう4人先に入ってますから
…佐祐理と舞と栞とで4人ですね。一緒に入りましょう」

…ん?

「佐祐理はどんな格好でお風呂に入るんだ?」

「はえ? お兄様はお風呂にはだか以外で入るんですか?」

俺は入ったことはないな…

「いや恥ずかしくないのか?」

「バスタオルを持って入りますから…」

佐祐理はうつむいて言う

やはり恥ずかしいらしい

「そっか…とにかく下に降りるか」

 

 

 

「お? もう良いのか?」

「姉さんが寝たまま沈んじゃいますから早めに上がったんです」

確かにこの様子では…

俺は苦笑して名雪を代わりに担ぐ

「佐祐理は二人を準備させておいてくれ」

「はい、お兄様」

後ろに3人を引き連れて寝室に向う

そっと名雪をベッドにおいて布団をかぶせる

妹達曰く、『大晦日は起きてる子は傍』らしく、
美汐達は少し離れて寝るそうだ

起きてなくて良いのか?と言う俺の問いに

「これからいくらでも一緒に寝ますから…」

とは美汐の弁である

 

 

「ほら、ちゃんとたたんでおくんだ」

「はい」 「わかった…」

脱ぎ散らかしたままの二人に注意して俺も服を脱ぐ

二人、特に栞はこの前の意見を一部採用して舞と同じくタオルを巻いている

がらっ

湯気の舞う浴室は寒くはない

それだけ湯船が広く、タイル張りではないせいである

その分滑りやすかったりするのだが…

「おっと」

さっそく滑るところだった

落ちないように腰のタオルをしっかり締めてから二人の手を取って湯船に向わせる

「かけ湯は忘れずにな」

そういってからかけ湯をしてから湯船に沈む

「…ふぅ…温泉気分だな」

檜の湯船は単純ながらもそう連想させる

「お兄様、湯加減はどうですか?」

「おう、ちょうど良いぞ」

佐祐理がタオルを巻いて入ってくる

さすがに佐祐理の年になれば女の子らしくなるわけで…

「ふぇ? どうしたんですか?」

顔を赤くした俺を問い詰めようと湯船に入るべくかけ湯をして…ぶっ!?

タオルなんて物は濡れれば体にはりつくわけで…

そうするとラインや何やらが…

「…佐祐理、湯船に入る」

「???…きゃっ」

ようやく気がついたようで慌てて湯船につかる

すでにのぼせてるわけでもないのに顔は赤い

静かなときが過ぎる

ぽこっ

「あっ、泡が出ました」

栞のタオルの隙間から空気が出る

「タオルで出てなかった空気が出てきたんだな」

俺は言うと

「面白いですぅ〜」

栞はタオルを体からはぎとって沢山の空気を包むようにして湯船に静める

ぶくぶくぶくぶく

「わ〜〜〜っ」

栞ははしゃぎ出した

「…私も…」

「お?」

舞もタオルを…って

恥ずかしいからタオルをまいたんだろうに…意味なし…

いくらお湯で見にくいとは言え、欲望との戦いが始まる

舞…よく育ったな…

ぴとっ

「うぉっ!?」

とりっぷしかかった俺の肩に佐祐理が寄り添ってくる

「お湯よりもお兄様の方が暖かいって本当ですね」

実感するとますますぎゅっと抱きしめてくる…

「佐祐理は…どうしてなんだ?」

「…お兄様が好きだからですよ」

「そうか…」

多くは語らず佐祐理は答える

佐祐理の純粋な信頼がまぶしくもあり嬉しくもある

幸せなのを実感する瞬間である

「あっ、ずるいですっ。私もお兄ちゃんにくっつきますっ」

「…私も」

「ちょっ…わわっ」

ざぶっ

3人同時はさすがに無理である

俺は湯船に沈み…気を失った

 

 

Bパートに続く

 


後書き

ユウ「実は妄想シーンも書いたんだがなあ…」

秋子「…そうですか…」

ユウ「うっ…何時の間に…」

秋子「あんなバリケードが通用すると?」

ユウ「どうやって回避を?…踏んで?」

秋子「一枚一枚回収しました」

ユウ「はりつけておけばよかったか…」

秋子「そうしたらあなたは後であのカノンTCG達を回収できませんよ?」

ユウ「そうですね〜〜…所で…」

秋子「来た理由は、ですか?」

ユウ「そうそう…なんですか?」

秋子「お知らせを忘れていないかですよ」

ユウ「そうでした…私、ユウは2001年2月12日に家の引越しを行います。
   そのために前後数日はまったくの音信不通になる恐れがあります。
   工事の都合によりますが不通になるのは11日正午から13日までです」

秋子「それまでにUPは?」

ユウ「さあ…うまくいけばAir観鈴編を一個…」

秋子「そうですか…終わりますか?」

ユウ「ええ…」

二人『でわでわ〜っ♪』