シスターパニック!?〜七人の妖精編〜
第五話
体をはったVアタック!?
「はぇ〜…こんなにたくさんのチョコレートをどうするんですか? 三人とも…」
佐祐理は目の前に鎮座された大量のチョコレートを目にしていった
「えっと…お母さんに『チョコレートを祐一お兄ちゃんにあげたいんです』
て言ったら『最初は板チョコを溶かして作るほうが良いわね』って…こんなに…」
冷や汗を流しながら栞
実の母親ながらいまだにそこが見えないのを熟知してる分、
佐祐理はその答えで納得したようだ
「私たちは改めて材料を買わなくてもよさそうですね」
いくつもの銘柄があることを確認した美汐が言う
ちゃっかり自分の分をすでに選んでいるあたり動きがすばやい
「あぅーっ…どうするのよこんなに…あゆ、塗ってみる?」
「うぐぅ?…ぬるって…ええっ!?」
真琴のつぶやきにあゆはさすがに声をあげる
「だってあゆや栞なら塗りやすそうだし…」
「そんなこと言う人嫌いですっ!」
「うぐぅ…それはどうしようもないよ…」
この幼さでは仕方があるまい
そのころ佐祐理は…
(全身にチョコを塗ってお兄様にプレゼント…)
見た目はしっかりしているが内面では想像が拡大していた
『佐祐理っ!?』
『お兄様、佐祐理がチョコレートです。なめちゃってください♪』
『佐祐理〜〜〜〜っっ!!』
がばぁっ!
『きゃ〜〜〜っ♪♪』
『そんなとこだめですよ〜』
『入って行っちゃったからな全部食べないと…』
『お兄様〜〜っ!』
そして二人はそのまま…
「きゃ〜っ♪ 佐祐理まだ心の準備が…でもお兄様になら…(ぽっ)」
一人チョコの山から外れて身悶える佐祐理
ヴァレンタインというイベントに思った以上にどきどきする自分を
自覚しながらも止めることはできないようである
「塗るのはやめましょうか…」
「うぐぅ…そうだね…」
「真琴も普通にしようっと…」
姉の意外な一面を見て普通に作ることにした三人
ようやく起きてきた名雪も交えての作業となっていった
「ったくなんで大学は休みじゃないんだ?」
昼休みの学食は人も多く、祐一の声は響くことなく消えて行く
「さあな…あるもんはあるんだし、しょうがないだろ?」
体全体で文句を言う祐一に答える北川
今日は大雪のために交通機関が軒並み不通となり、
高校以下の学校は臨時休校となっている
予定外では休みにならないのが校風らしく、今日は講義があるとのこともあり、
祐一は雪の中必死に出てきたのだ
「そうよね…必修はなかったんだから来なくてもよかったのに、どうしてかしら?」
「いや…佐祐理たちが今日は外に行って来て下さいっていうから休むに休めなくて・・・」
香里はそれでぴんときたようだ
「そう…お返しは三倍が基本だそうよ」
「? 何のことだ?」
よくわかっていないようである
「こう言うことよ」
香里は言うと北川に包みを差し出す
「おっ、今年もか…悪いな」
北川はなれた手つきで受け取り、かばんにしまう
「ああっ! そう言うことか…むぅ…」
祐一は冷静に預金の残高を考え出した
少ないわけではないが、節約が必要なのも確かである
「…後で考えよう」
問題を後回しにすることにしたようだ
「それにしても二人は慣れてるな?」
二人の間に緊張は少ない
「まあかなり長いからな」
「そうね…もう十年はこうかしら?」
去年出会って以来、二人と祐一は親友として付き合ってきた
妹たちがつなげたといっても過言ではあるまい
そして二人が小学校時代からの付き合いだと聞いていた
「じゃあ…毎年三倍なのか?…」
引きつった祐一の声を北川の冷や汗のたれる顔が肯定していた
「当然のことよ」
香里はきっぱりといった
「それはそうと…あの課題はできたか?」
「ああ、原稿用紙50枚でひとつ話を書けって言う? できたぞ」
祐一たち三人が偶然いっしょになった授業は文系の授業であり、
編入の祐一に対し、講師は課題を冬休み中に終わらせれば単位を認定するとのことだった
今日は本来昼からきてこれを提出する予定だったのだ
「すごいな…で? タイトルは?」
「ずばり『義妹との愛欲の日々』だ」
寒さ以外で凍った音が響く
三人だけでなく、偶然耳に入った周囲も凍り付いている
「水瀬君…本気?」
香里は動揺を隠さずに聞く
「冗談に決まってるだろう? 何を引きつった顔をしてるんだ?」
「当たり前でしょうがっ!!」
香里が怒るのも無理はない
「そうか?」
「はぁ…もう良いわ…本当のタイトルは?」
「ふっ…妹とあわせてより萌える浪…っと」
上半身の動きだけで繰り出された香里の一撃をイスごと避ける
攻撃の先にいた関係のない人物が巻き込まれたのはお約束である
「ボケの基本は繰り返しだろ?」
「漫才やってるんじゃないわよっ」
「それもそうだな…『幸せの定義』がタイトルだ」
「中身はどんなのなんだ?」
短い間ながらも二人の力に免疫のできた北川は先を促す
「ああ、幸福とは何を定義に言うのか? 大切な人を失い、その結果起きた奇跡の中、
主人公は生き続ける。彼は思う。大切な人を犠牲にした状況で幸せになれるのか?
主人公は何人もの関係者と付き合いながらその答えを探すんだ」
「それで?」
「そんな中、大切な人が一時的に戻ってくる。『絆を再びつむぐか自分以外に大切な人を
作ってほしい』って…しかも偶然その人の面影のある子と出会うんだ」
「主人公の困惑が当然起こるわけね」
「ああ、結局主人公は自分の気持ちを確かめ、大切な人と再び絆をつむぐことに成功し、
その人は戻ってくる…とまあこんな感じか?」
「へえ…読んでみたいな」
北川が食器を持って立ち上がる
「昔から少しずつ考えてたからな」
祐一と香里もそれに続く
そして講義も終わり帰ろうと三人で昇降口を出る
「ん? 人が多いような…」
校門付近に人が集まっている
「あれは…会長?」
「会長って?」
「この学校には卒業生や学生から選出された人員で学祭やなんかも含めた
学校全般の行事やその他を決める組織があるの。あそこにいるのは
久瀬会長。昨年の卒業生ね。学生だったころからいろいろやっていたわ」
びしっといかにも堅そうなやつだ
誰かたちと向かい合っている…ってあれはっ!
「彼女たち…って水瀬君っ」
香里の声に答えずに駆け出す
祐一の後に激しく雪が舞い上がっていたのは事実である
「はぇ〜…お兄様はどこでしょうか?」
「…さあ?」
「うにゅぅ・・眠い」
「わわっ、ここで眠ったら危ないですよ。お姉ちゃんっ」
「あぅーっ、寒いよぅ」
「じゃあ一緒にくっついていましょう」
「うぐぅ…お兄ちゃ〜んっ!」
言うまでもなく…佐祐理たちであった
校門でおろおろする彼女たちに近づいてきた人物がいた
「お嬢さんたち、学生じゃないだろう? むやみに立ち入らないほうが良い」
久瀬会長であった
その視線はにらむように七人を見る
「祐一お兄様を探してるんです」
その視線におびえて背後に隠れた妹をかばうように手を後ろに回す佐祐理
後ろではあゆと栞がおびえた表情で佐祐理の服をつかんでいる
「祐一?…さあ知らないな。出て行きたまえ」
「必ずいるんだからっ! 邪魔しないでよ、おじさんっ!」
一瞬の間、そして失笑の嵐
久瀬は年上に見られることが多かったのだ
「おっ、おじさん? 君には教育が必要なようだね。来てもらおうか」
「離しなさいよっ」
すばやく真琴の手をとって久瀬は言う
真琴は突然のことに涙目だ
びゅっ
「!?」
風を切る音ともに久瀬は頬に痛みを感じて手を離す
「貴様…何を」
思わず本音が出る
視線の先では舞が右手を構えていた
「真琴を…私の大切な人を泣かせる相手は許さないから…」
「ふざけるなっ!」
久瀬が思わず手を上げる
「…っ!」
来るであろう衝撃に恐怖して目を閉じて縮こまる舞、しかし
「何っ!?」
久瀬の声とともに雪に埋もれる音がする
祐一が後ろから久瀬の足を払い、埋もれさせたのだ
「俺の妹に手を上げようなんて…二度としないでもらおうか?」
『お兄ちゃんっ』 「お兄様っ」 「兄さん…」 「遅い…」
「すまん…帰るか?」
『うんっ』「・・(コクッ)」
抱き着いてきた妹たちをなでながら動き出す
背後では埋もれた久瀬を数人が助け出そうとしていた
香里たちは同じく校門を出て自分たちの家に向かっていた
「迎えに着てくれたのか?」
「はい、後…どうぞ」
佐祐理はそっときれいにラッピングされた包みを渡す
美汐も続く
「チョコか?」
改めて聞かれ、顔を赤くする二人
祐一が開けてみると佐祐理のチョコは『お兄様LOVE』と
大きくホワイトチョコと書かれた巨大なハート型のチョコであった
美汐のは『I loving you so much』と丁寧なつくりで書かれていた
順番に口に含む
「うむ、甘すぎないところが良いな」
二人のチョコはともに多く食べる兄のことを考えたビターチョコであった
ほんのり漂う苦さが七年ほうっておいた自分への
非難のような気がして祐一は苦笑する
佐祐理の用意してきた袋にごみを入れる
「私のも食べてね、お兄ちゃん」
「あっ、私のもどうぞ」
名雪と栞から受け取る
名雪は猫とイチゴの包装で、栞は定番のハートマークが散りばめられた包装であった
中身は名雪はストロベリーチョコ、栞は…
「おっ、バニラエッセンスが入ってるのか?」
「はいっ…よくわかりましたね。すごいですっ」
口に含むと広がる風味に答える祐一と驚く栞
「名雪のもつぶしたイチゴが甘酸っぱくておいしいぞ」
誉められて照れてしまい、ぽふっと祐一の背中に顔を埋める名雪
手を後ろに回してその頭をなでてやる
「…自信が無いけど」
「うぐぅ…ボクも…」
「真琴は…まあ食べればわかるわっ」
舞から順に食べて行く
見た目は不恰好だったが味は問題無かった
「おいしいぞ。俺以外には味あわせたくないな」
びしっ
「兄様以外には作りたくない…」
舞はチョップの後うつむいてつぶやく
その顔は真っ赤である
「そうか嬉しいな…」
続いて真琴のに…
祐一の手が止まる
チョコは黒い、だがこげた色をしていただろうか?
意を決してこげているであろうそれを口にする
うめくような苦味の後、
「なんだ、中はちゃんとおいしいじゃないか」
中は無事だったようだ
真琴はその声を聞いて微笑む
「お兄ちゃんのためにがんばったんだからっ」
真琴に微笑み返してあゆのほうをむく
「あゆ? あゆのは無いのか?」
「あるよっ」
あゆはポケットからチョコを取り出す自分の口に含む
???
そしてあゆはんっとくちびるを突き出した
「あゆ…もしかして」
「お兄様の思ってるとおりだと思います」
佐祐理の声が響く
幸いここは並木道であり、雪も手伝ってほかに人はいない
ひょいっとあゆの体を持ち上げて口付ける
閉じた瞳とふるふる震える眉毛が対照的だ
おずおずとこちらをつついてくるあゆの舌を自分のそれと絡ませる
道をたどって流れてくるチョコ…
あゆの味と一緒になってすごく甘かった気がした
その後自分もと、残り六人が立候補したのは別のお話
続く
後書き
ユウ「あぅー…なんてこった」
秋子「本当は13日にUP予定でしたのにね?」
ユウ「まったく…大変だったな」
秋子「もう環境は良いんですか?」
ユウ「なんとか、後は新PCに慣れて行くだけ。まあどうにかなるだろ、数は書くほうだし」
秋子「そうですね」
ユウ「そうそう、祐一君たちは文系クラスです。香里は編集、北川と祐一は執筆です。
そんな講義や学校があるかって?…納得してください(爆)」
秋子「文中のお話はなんですか?」
ユウ「最初二つはもちろんボケ、最後のは製作予定の同人ゲームのイメージだ。
もちろん細かい点は変わるだろうけど…。決まったらSSをそれについて書く。
体験版みたいな感じで」
秋子「必死にやってくださいね?」
ユウ「はじめるとこっちは更新しにくくなるからねえ…やりますか」
秋子「了承」
二人『でわでわ〜っ♪』