シスターパニック!?〜七人の妖精編〜


「うぐぅ、おはようございます〜…」

「あゆ、パジャマのボタンが外れてるぞ」

寝ぼけ眼で降りてきたあゆにとりあえず言っておく

「うぐぅっ!?」

あゆは慌てて服装を整える

「はいはい、あゆ、朝ご飯だから席につきなさい」

「は〜い」

秋子さんの声に笑顔で答えて席につくあゆ

パジャマ姿の美少女七人が目の前にいるというのはやはり良いものである

…それが自らの罪を自覚させてくれるものだとしても…

 

「うぐぅ、祐一お兄ちゃんまた悩んでるよ」

「あぅ? じゃあまた塗っちゃおうよ?」

二人が微笑み?合い祐一の持つトーストにジャムを塗ろうと手を伸ばしたが

さっ

「あれっ」

祐一は何気なくトーストの位置を動かした

「う〜ん…」

視線はどこかを見据えたままだ

「今度は真琴がっ」

勢い込んで真琴が手を伸ばすものの、

さっ、さささっ

祐一は視線を泳がせたまま手を動かす

 

「あぅーっ…」

「うぐぅ…」

「ん? どうした二人とも…」

『なんでもない…』

疲れた様子でつぶやく二人

祐一は本能レベルで回避する能力を身につけたようだ

 

「そうだお兄ちゃん、今日も訓練しようよ」

「それは良いとして、何の訓練だ?」

「えっとね…変身の訓練だよっ。速く変身できるようにするのも大切だよね」

「うっ…」

名雪の言葉に声が漏れる

俺も一応そうなのだが、彼女達が変身するとき一度服が分解、
本人の周りに拡散し、収束して戦いの時の服になるのだ

秋子さん曰く『変身する女の子の服はこうでなくては…』だそうである
何でもあのアンプルで加わる能力のほかにデフォルトでついてくる能力だとか…

それは良い、賛成だ

だが、拡散した服が問題である

この分解した状態のものは着ていた本人の意思で
その中が見れないようにすることも出来るのだ

つまりは下着姿を見ることが出来ないようにすることが出来るのである

それは当たり前なのだが、この機能、同じ能力を持った人間には効かないのである

本題に入ろう。結局のところ、俺には彼女達のあられもない姿が見れるのである

本人達は納得し、気にしていないようだがそうもいかない

身体的に成長した佐祐理や美汐は当然として、
あゆや栞もまた、十分魅力的なのは事実である

かといって変身するシーンを目を閉じていたり余所見をすると
みんな『しっかりチェックしてくれ』と怒るのだ

そんなわけで毎回意識を冷静に保つのが大変なのである

『魔法少女の変身シーンは時間をある程度取らなくてはいけない』

栞のそんな一言から彼女達は変身にずいぶんとこっているのである

俺はさっさと変身するんだがなあ…

そして変身の訓練を一通り済ます

「そう言えば前の怪人さんあんまり強くなかったね?」

「あいつらにさん、はどうかとして確かにあまり強くは無かったな」

名雪の言葉に答える

「じゃあ佐祐理たちが勝てる日もすぐ来ますね」

佐祐理がのほほんと言う

「わからんぞ…敵は兄妹、いや強大だ。いつかはピンチに陥ってつかまってしまうかもしれない」

そうなったら…

俺の脳裏に展開する風景

 

 

『いやっ…こないでくださいっ…』

恐怖におびえ、涙ぐむ栞

『うぐぅ…助けて…』

同じように手足を拘束され、身動きが取れないあゆ

そんな二人に近づく影

影から大量の粘液が吹き出す

『きゃっ』

『うぐぅっ』

そのねっとりとした感触に顔をそむける二人

体が痛いとかそういったものは無い

だが…

『服がっ!?』

『うぐぅっ!?』

影が吐き出した粘液は二人の服をじわじわと溶かして行く

『そんなっ、お兄ちゃんっ!』

『やだよっ…やだよぉ…』

すでに二人の体には服はほとんど残っていなかった

かろうじて残るのはわずかなふくらみと必死に閉じる足に引っかかるものを残すのみである

そんな二人に影は無言で近づき…

 

ぽかっ

「うぉっ!?…って舞?」

「兄様、二人が真っ赤になってる」

舞のチョップで我に帰った俺が見渡すとあゆと栞が真っ赤になってうつむいていた

いかんいかん…思いっきり暴走してしまった…

「えっと…帰るか?」

俺の言葉に全員がうなずき帰路につく

 

「祐一お兄ちゃん、肉まん買ってよっ」

「またか? 昼ご飯はちゃんと食べろよ」

「わーいっ♪」

「ボクはたい焼き♪」

「私はアイスです♪」

「今日はイチゴサンデーアイスにしようかなっ」

「…秋子さん、感謝です…」

一緒に生活することが決まってから大量に渡されたお金の意味がわかった今日この頃であった

「早く行こうよっ」

「わかったからひっぱるな、真琴」

腕に真琴のぬくもりを感じながら走り出す

 

 

 

 

 

 

 

シスターパニック!?〜七人の妖精編〜


第九話

〜春の日差しの中で〜

 

「朝か…」

俺は誰にでもなくつぶやく

横を見れば真琴とあゆ…

ぷにっ

何気に真琴のほっぺたをつついてみる

良い気持ちだ

さらにぷにぷにしてみる

「あぅーっ…」

くすぐったいのか真琴がうめき、顔を動かす

その動いた先は俺の頭のほうだった

触れ合う頬と頬、すべすべとした感触が心地よい

すりすりと何気なく顔を動かしてほお擦りしてみる

癖になりそうな感触である

「あぅ?…おはよう…」

「おはよう」

挨拶をした後もさらにぷにぷにしたりすりすりしてみる

「あぅ、あぅ…くすぐったい…」

恥ずかしそうに顔を赤くする真琴

だが俺は真琴が腕枕にしていた右手を使って頭をこちらにくっつけて逃がさないようにする

困ったような、それでいて嬉しそうになすがままにされる真琴

結局それは他のみんなが起きるまで続いた

あゆ…起きろよ…

春の朝は眠い…名雪は運命のごとく当然として、あゆや栞達年少組もずいぶんと眠たいようだ

俺も気を抜けばすぐに眠くなるだろう…

「朝食の時間ですよ?」

階下から秋子さんの声がして全員で動き出す

 

 

 

 

今日はオムレツメインのようだ

ふっくらと焼きあがったオムレツが目の前にある

「あぅっ!?」

「真琴、これで拭きなさい」

オムレツのケチャップをパジャマに少しこぼしてしまった真琴に美汐が濡れたタオルを差し出す

もともとが赤めのパジャマだったために目立つしみにはならなかったようだ

「熱いよ〜っ…」

猫舌なあゆが涙目で舌を口から出す

うっ…いかん危うくかわいさにうめくところだった

俺は頭を振って前をむく…なにぃっ!?

「名雪…それで食べるのか?」

「え? うんっ、意外とおいしいよ? 食べる?」

「いや、良い…」

差し出された瓶を返す

イチゴジャムでは食べたくないぞ

まあジャム塗ったトーストを一緒に食べていれば変わらないような気もするがな…

手もとのトーストを見て思う…

舞は名雪に進められたジャム塗りのオムレツを食べていた…マジか?

そして平和な朝が過ぎて行く

「祐一さん、この後は何か予定がありますか?」

「いえ、無いですけど?」

秋子さんに答える

「じゃあみんなでピクニックでも行ってみたらどうですか?」

その場の全員が賛成した

 

 

 

 

 

 

『ぴくにっく♪ ぴくにっく♪』

あゆと栞、真琴と名雪の声が響く

街中を抜け、山道を連れ立って歩いていた

時折吹く風が心地よい

風はすっかり春のものになっていた

「春の足音が…聞こえそうですね」

風にあおられる髪を押さえて佐祐理が言う

「水の匂い…明日は雨ですかね」

「流石だな」

遠くの空を見た美汐の言葉を聞いて言う

「良い匂い…」

舞は静かに目を閉じて全身でそれを感じようとしている

 

 

「よしっ、着いたな」

あゆたちが走り出したのを見ながら俺は両手に抱えた荷物をおろす

中身は秋子さんが作ってくれたお弁当だ

風がほてった体に気持ち良い

美汐と舞はあゆ達の方に走って行った

俺はそっと腰を下ろして空を見上げる

青い空がどこまでも広がっていた

体を横にして寝転がるとまるで空に浮いているような感覚になる

「お兄様、膝枕をしましょうか?」

「頼む…」

そっとそえられた手に合わせて頭を動かす

顔を横に動かすとあゆたちが花を摘んでいるのが見えた

もう花が咲く頃なんだな…

反対側を見るために動かす

そっちでは美汐と栞、舞が同じように花を摘んだりお喋りをしている

「お兄様、くすぐったいですよ」

佐祐理が覗きこむようにして言う

「そっか…」

ごそごそごそごそ

「あっ…だめですよっ」

しょうがないですね〜といった顔で言う佐祐理

がしっと顔がつかまれる

「お?」

俺が見上げると…目の前に佐祐理の顔があった

「んっ…」

触れ合う唇

さわさわと風が佐祐理の髪の毛を動かして俺の顔をくすぐる

そっと佐祐理の頬を撫でる

不意に顔が離れた

「あはは…びっくりしちゃいました?」

顔を真っ赤にして言う佐祐理

自分のしたことに照れている様子だ

「当たり前だろ。でも…」

横になったままで言う俺

「でも?…」

「嬉しかったぞ」

さかさまだけど頭を撫でてやる

目を細めて嬉しそうに微笑む佐祐理

「おにいちゃ〜〜んっ」

「おっ、呼ばれてるな。起きるか」

「はいっ」

むくっと体を起こして立ちあがる

「おっとと」

急に立ったので足元が揺らいだ

ぽすっと佐祐理に支えられる

「すまん」

俺は思う…佐祐理には一番負担をかけている…
でも佐祐理は絶対に弱音を吐こうとしないともわかっていた

だから…

「じゃあ行くか」

「そうですね」

ぎゅっと佐祐理の手を握って走り出す

つまりはかけた負担以上の幸せを与えれば良いのだと思う…

 

暖かさを帯びた光の中、妖精達の笑顔が光る

 

 

 

 

春はもう目の前…

 

続く

 


後書き

ユウ「なんか1話1話が短くなって来てますね…時期がずれたら意味無い後書きですが、
   α外伝も出ますんでのんびり充電しますね」

ユウ「それでは学校が始まる頃に…」