「目を覚ませっ! 佐祐理っ!!」
俺の叫びにも佐祐理は虚ろな視線を俺に返すだけだった
「無駄だ。我らの技術の高さ、知らぬはずはあるまい?」
勝ち誇った怪人の声が響く
「くっ・・・一人で出歩かせるんじゃなかった・・」
今さら後悔しても遅い
佐祐理が買い物に行くときについていけば良かった
「遅いな・・・ん?」
迎えに外へと出た俺の前に舞い降りてきた一通の手紙
『一人で来い』
それが意味するところは一つだったのだ
行きついた先は敵の支部の一つ
「せめてもの情けだ・・・愛する妹によってその命、刈り取られるがいい」
ぱちんと怪人が指を鳴らす音が響くと同時にたい焼き団によって操られたままの佐祐理がゆっくりと顔を近づけ・・
「んっ・・・むむっ」
手足だけでなく、頭部さえも半ば固定された状態のため顔を動かせないまま・・佐祐理の唇と俺のが重なる
鼻も佐祐理自身の指によって封じられ、ゆっくりと息苦しさが増していく
操られ、虚ろなままの佐祐理の瞳から・・・雫が光る
・・どんな状態でも・・・大切な相手であることには違いはない
俺は薄れ行く意識の中でもそれを意識していた
佐祐理の悲しみが少しでも癒えるように祈る・・・
シスターパニック!?〜七人の妖精編〜
第十四話
〜降り注ぐ空の涙は…〜
・・・これは寝違えたか? まあそれも仕方がないのか
俺は佐祐理の腕によって首を固定されたまま本人を見る
どうやら寝ている間にぐわし、のようにつかまれたらしい
「さーゆーりー・・・」
小声でつぶやく
「・・・ふぇ?」
佐祐理がぼうっとした目をこちらに向ける
「・・・夢で・・・よかった・・」
「ちょっ・・」
佐祐理はその体勢のままでキスをしてきた
突然の事に振り払おうとした俺の動きをかすかに伝わる震えが封じた
少しの間、佐祐理から伝わってくる香りやぬくもりを感じていた
ぎゅっ
「むーーっ!?」
俺のうめきに佐祐理が驚いて離れる
「いや・・・ちょっとな・・・真琴、起きろーー」
なんつうかその・・・真琴が寝ぼけて俺の・・・をつかんだのだ
「あぅ?」
真琴が声をあげて起きた
俺が動いたのであゆたちも起きだした
「あっ、お兄ちゃん。おはよう♪」
『・・・・・・』
「うー・・・どうしてみんなで固まるの?」
「いや・・・珍しかったからだろうな」
名雪が朝からしっかり目を覚ましていた
「うー・・・」
名雪はすねたままだ
「ほら、そんなんじゃせっかくのかわいさが台無しだぞ。な?」
ぽんと頭に手を置く
「・・・うん・・・」
「お兄さん、早く起きましょう」
「そうだな・・・今日も早めに出ないとな」
外はしとしとと雨が降っている
「雨の日って・・・涼しいですよね」
「この時期はな」
美汐に答える
じめじめしてさらに熱かったら最悪なのだが、今の季節はまだそんなことは無い
「はえーー・・・道路が水浸しですね〜」
俺達がいつも通る道は雨によって水面となっていた
昨日事件があった橋からも音を立てて雨水が川へと流れ落ちている
ちょっと回り道をすることにした
「・・・カエルさん・・」
舞が足を止め、雨に歯を揺らす垣根を見ていた
「ん? おっ、アマガエルか・・小さいな」
どうしてこうアマガエルって小さいんだろうな・・
かといって・・・俺より大きいアマガエルとかがいたら・・・嫌過ぎるな
「小さいからかわいいですよね」
「じゃあ飼うか?」
「嫌だよ。ぬるぬるしてるもん」
名雪の言葉に全員がうなずく
「うぐぅ、ぴょんぴょんはねてるよ〜♪」
触るとぬるぬるしているカエルも、見ている分には好きなようだ
真琴がしゃがんでカエルの飛び込んだ先を見る。が・・
「あぅーーーーーっっ!?」
「っと、何があった!?」
真琴が突然後ろに倒れてきたので濡れてしまわないようにとっさに支える
「あぅーーっっ!!」
真琴が震えながら指差す先には・・・
「ゲコッ」
「うぉっ!?」
俺も思わず声をあげてしまった
バレーボールぐらいの大きさのウシガエルがでんっと鎮座していたのだ
「・・・大きいですね・・・」
「うぐぅ・・・ボクの頭ぐらいありそうだよ・・・」
「ゲコッ」
ウシガエルは一鳴きすると垣根の向こうに去っていった
「でかかったな・・・」
「あっ、お兄ちゃん。時間時間」
名雪の指摘に時計を見る
「ちょっとやばいな・・・行くぞ〜」
こけないように気を使いながらも足を速めていった
「へえ・・・・私はバスケットボールぐらいに大きいのを見たこともあるわよ。
ただ・・・息を吸って膨らんでただけみたいだから、元は同じぐらいかもね」
「ああ、あれだろ? 美坂が叫んだと思ったらおもいっきり蹴飛ばした時だろ?」
北川の発言に固まる香里
「・・・まあそんなこともあったわねえ・・・」
「この辺大学って良いよな」
「そうね・・・ちょっと遅くなるときもあるけど、お昼からだったり
お昼で終わったり・・・ね。ところで毎日朝は一緒なの?」
「そうだよな、いつも一時間目が始まる前には大学にいるよな?」
「まあな、どうせ一人でいてもしょうがないからな」
寝る時間も規則正しいのだからそうそう遅くまで寝ていることもできない
学食は湿気で蒸しているので、適当に買って比較的すいている場所で昼にすることになった
「ねえ、今度栞たちも一緒に遊びに行かない?」
「今か? となると室内か」
俺は言いながら窓を見た
静かに雨は大地に水を恵んでいる
「だな。カラオケとか良いんじゃないか?」
「そういえば最近行ってないな・・・そうするか」
「じゃあ次の土曜日で良いかしら。あの子達の学校も休みでしょう?」
俺はそれにうなずく
「じゃあ適当に良い場所を見繕っておくわ。行きましょ」
「おう、じゃあな」
「またな」
午後の講義を終え、二人に手を振って別れる
「しとしとぴっちゃんってか」
「時代劇ですか?」
「ぐはっ! いつの間に」
美汐が後ろからいきなり突っ込みを入れてきた
「お兄さんが歩いているのが見えたので・・・そおっと近づきました」
「何のために?」
「・・突っ込みをいれる為です」
どうやら美汐なりのギャグらしい
「・・・やはり下手ですか・・・残念です」
自分のギャグが通じなかったのを見て、声を漏らす美汐
「がんばれよ。佐祐理は?」
「先に妹達を迎えに行ってますよ」
そう言って歩き出した
「照る照る坊主・・・増えますね」
「そうだな・・・」
玄関や居間に増え始めた白い人形を思い出して苦笑する
「あっ、お兄ちゃんっ」
「あぅ、美汐も一緒だ」
あゆと真琴が俺達を見るなり叫んだ
佐祐理と名雪、舞もその後ろにいる
「あれ?」
栞がいない・・・
「お兄〜ちゃんっ!」
「ぐはぁっ!」
突然後ろから栞が腰のあたりにぶつかってきた
「わ〜いっ♪ 成功しました〜」
どうやら校門の裏側に隠れていたらしい
表からは見えなかったからな・・・
「うーむ、一本とられたな。そんな栞には良いお知らせだ」
「え? なんですか?」
どきどきっといった感じで俺を見上げる栞
「今度の土曜日に香里達とカラオケに行こう」
「本当ですか? 嬉しいです〜♪」
「うぐぅ、ボク達は?」
「みんな一緒だぞ」
『わ〜い♪』
「じゃあ帰りましょうか?」
「危ないから気をつけろよ〜」
先頭は俺、最後尾は美汐となって歩く
「あぅ、車」
車が来たかって言うかダンプだろ・・・
「脇に避けろっ!」
「きゃっ」
佐祐理が慌てたためか足を滑らせた
「くっ」
とりあえず抱きかかえて塀にもたれる
バシャァァァァッッッ
「濡れてしまったな・・・」
「はい・・・」
俺の腕の中で佐祐理が答える
他は傘の展開も間に合ったようで、濡れていない
「お姉ちゃん、怪我はない?」
「あははーっ、大丈夫ですよー」
心配した名雪に答える佐祐理
「ぐふっ・・・」
俺は静かにもだえた
佐祐理は気がついていないようだが・・・
思いっきり濡れてしまった佐祐理の服は完全に透けてしまい、下着がくっきり浮かんでしまっているのだ
「佐祐理・・・服」
「ふぇ? きゃっ・・・お兄様〜」
どうしましょう?という風にこちらを見る佐祐理
どうしましょうって聞かれてもな・・・
「どうせ俺も完全に濡れてるし・・・目立たないようにおんぶしてやろうか?」
「・・・私が後ろにいて傘を差す。そうすれば後ろも完璧」
「うむ」
提案する舞を撫でて同意する
「・・・じゃあお願いしますね」
ぽふっと佐祐理が背中に乗ってくる
・・・これは・・・
なんというか、湿った服と服はぴったりくっついて、密着度が違う
幸い力はあるほうだし、佐祐理自身もそう重くないので苦労することなく家路につく
途中
「お兄様の背中ってやっぱり温かいです」
とか
「なんだか濡れた水と一緒に蒸発してしまいそうです」
とか言われて思わず意識してしまったりしたが他は問題がなかった
今日もぬらしてしまったことを秋子さんに報告して着替える
「カラオケですか? 了承」
とりあえず許可はもらわねば…杞憂だったが
秋子さんの許可ももらったので次の土曜はカラオケだ
何事もなく過ぎる夜・・・
どごおおおぉぉんんんっっ!!
「ぷはっ! 何だ!?」
突然起きた爆風に佐祐理はよろめき、息ができるようになった
キキンッ!
「舞!?」
「兄様、助けに来た」
俺の枷を切り去った舞がつぶやく
「助けに来たって・・」
「光よ、今一刻ここに力をっ! 『ライト』っ!!」
美汐の叫びに続いて部屋がまばゆい光に包まれる
「今だよっ! お兄ちゃんっ!」
名雪の声がしたほうへと動かない佐祐理を抱えてダッシュする
「うぐぅ…ムーンカチューシャアクションっ!!」
つうかアイスラッガーだろ…
そんな俺の突っ込みをよそに、あゆの放った光り輝くカチューシャが怪人にヒットする
どすっ!
「ぐはっ!」
どうやら打撃武器のようで、あたった衝撃で怪人が吹っ飛ぶ
その隙に脱出することにした
「仕掛けをしておいたんだよっ」
名雪が壁に手を置くと仕掛けが発動したのか轟音が響き、建物が崩れ始めた
そして…支部は壊滅した
「秋子さん…」
俺はベッドに眠る佐祐理を見てつぶやく
「大丈夫ですよ」
秋子さんがひょいっと取り出したのは…
「俺は休んでます」
すまん…佐祐理…お兄ちゃんも命が惜しいのだ
「ふぇ〜〜〜〜〜っっ!?」
佐祐理の叫びが家に響いたのはそれからすぐだった
続く
後書き
ユウ「何気にUP。14話です」
ユウ「透ける服。そして見えてしまう中身っ!! これぞ雨ゆえに可能な萌えっ!!!(ぉぃ」
ユウ「ではでは…」