*警告

本文章は原作至上主義、主人公達の性格が何かずれているものが嫌いな方、
青い果実に嫌悪感がある方、キャラが暴走するのが嫌いな方などにはお薦めしません。
また、ネタがわからない、古いなどと後でそのように文句を言われてもこちらは応対しかねます。


 

 

「おはようございますぅ…恭也お兄様ぁ…」

「なっ!?」

混乱、動揺というものは想定しない出来事に遭遇するために起こるものである

と、先日読んだ歴史小説の1節を頭で考えながら考えをまとめる

目の前にいる少女、これはいい

何しろここにつれてきたのは俺本人なのだから

とはいえ…この状況で少しは人並みに動揺しても責められるものではないと…思いたい

 

 

〜射止めた王子は朴念仁〜第二話

恭ちゃんと一緒前編

 

 

 

俺は慌てず(表向きだけだとしても!)アリサをわきにどかす

「さて、今日も鍛錬を…ふごふっ!?」

毎日欠かさない鍛錬によるこの体とはいえ、
起き上がりかけたところに全体重をかけられては倒れこむしかないだろう

我ながら情けない声をあげつつ再び布団に沈んだ

「無視はいけないとおもいまーす」

「…なんというか、性格が違うと思うだが?」

改めてなのはのパジャマに身を包んだアリサを見る
元気な様子だ。昨日の影響は表向きには無いようだ

と、冷静に分析している場合ではない

「気のせいです。きっと」

きっぱりと言われては言い返す言葉も無い

何よりも時間だ…

「…すまないが、鍛錬に遅れてしまう」

「鍛錬…?」

不思議そうな顔をするアリサを尻目に手早く準備を整える

上着を着替えたときにアリサが声をあげた気がするが…

「では行ってくる。二度寝は目覚ましを忘れないように」

短く言い、ふすまをいつもどおりに閉める

 

後にはアリサ一人がパジャマ姿でぽつんと布団の上にたたずむのみであった

 

 

 

−アリサ視点

(え? え?)

一人残される私

そう、ぽつーんと一人…

「って、恭也お兄様のケチ…」

朝起きたら頭を撫でてくれるぐらいしてくれてもいいのに、と
座りながら考えるだけの私ではなかったのだけれども…

着替えが無いのは哀しいけれど、手早く追いかけるべく駆け出すことにする

気合よ、アリサ…

「朝から気合たっぷりね、アリサちゃん」

びくっと声の方をむけばいつのまにか…えーと

「桃子よ、好きなように呼んで頂戴♪」

「え…あ、はい。桃子さんっ、動きやすい服お願いしますっ!」

 

その後事情説明と着替えまで5分足らず

高町家の女性陣がその行動力に驚愕するのはいま少し後である

 

 

 

 

 

「恭ちゃん、あの子ついてきてるよ?」

美由希の声にちらっと視線を向けるといつの間に着替えたのか私服姿のアリサが垣間見える

「…物事がわからない子ではない。その内あきらめるだろう」

短く言い、普段鍛錬を行う山道を行く

「…やっぱり恭ちゃんは優しいよ」

「…何がだ?」

唐突な事をいう妹に聞き返す

どうも我が家の女性陣は言葉がよくわからない事が多い

「…ううん。なんでもない」

「ふむ。それはそうと、こけるぞ」

直後石につまずく美由希に内心頭を抱える

「イタタ…鍛錬のおかげで無事だったよ…」

「その前にこけないようになるものだ、本来はな」

振り向かずに声だけかける

「う”…」

そんな美由希の背後にちらちらとアリサが目に入る

ふむ…

「今日は場所を変えて行うとしよう」

足を止め、息を吐く

瞬間、合図無しに美由希へと振り抜く

実戦に始まりの声などありはしないのだから…

空気が、二人の緊張をまとって張り詰める

美由希は…強くなった

「はっ!」

俺は無言で、美由希の一刀一刀を見切っていく

だがまだ…綺麗過ぎる

時折見せるとっさの判断以外は教わった事をまだ繰り返すだけの攻撃だからだ…

それでも、常にそれを受ける俺が相手でないのならば十分通用するだろう攻撃だ

「ラスト一分…」

一言だけを言葉にし、一段と加速をあげて打ち込みを続ける

乱撃の後に美由希の放つ飛針、いい射線だ

回避した後でその結果を俺は驚きで見ることになる

徐々に移動する形になっていたためか、
避けた先にあった木へと飛針は当たり、 軌道を変えたのだった

「ひっ…」

行き先を認めた俺は神速を意識する事もなく発動させる。
半ばあきらめていた境地へも那美さんらの治療により光明も見えてきている。
一日数度までなら問題無いようにまで膝を回復できたのだ。

モノクロの世界の中、ぎりぎりのところで上方へとはじかれた飛針が枝に勢い良く突き刺さる

ぱらぱらと葉の落ちる音が思ったよりも耳に響いた

「あ…ごめんっ! 大丈夫、アリサちゃん?」

ようやく事態を把握した美由希の声を背中に受けながら
俺はぺたんと地面に座り込んだアリサを見る

「…怪我は?」

立ち上がらせ、おもむろに泥のついた辺りをぱんぱんと手で叩いてやる

「っ!! …え…あ…無いっ…です」

なぜか勢いよく離れたアリサの服はどこか見覚えのあるものだった
またなのはの物を借りてきたのだろう

「見ての通りだ。危険だから次からはついてこないほうがいい」

「あ…はい」

言って手をアリサの肩にかける

「ほえ?」

そんな妙な声をあげるアリサをひょいと俺は持ち上げるのだった

「ちょ、恭ちゃん!?」

なぜか慌てた様子の美由希の声

「帰るぞ。朝飯が近い」

そして真っ赤になぜかなるアリサを抱えつつ、俺は坂道を降り始める

「そのまま歩かせては余計に服が泥まみれだとは思わないか?」

未だに慌てた様子の背後に声を投げかける。
今通っているのは普段使う素人には向かない道だ

「あ、そ、そうだね…」

ふむ…

「本当に怪我はないな?」

「な、無いですっ」

山道を抜けたあたりでアリサは腕の中から飛びのくようにして降りた

「…慌てると危ないぞ」

「大丈夫ですっ」

とたとたといった様子でアリサは走り出してしまった

「…調子でも悪いのだろうか?」

「…恭ちゃん…」

頭を抱える美由希を不思議そうに見、自分も家路につくことにした

 

 

玄関をくぐった俺を待っていたのはなぜかもじもじと隅から様子をうかがうアリサであった

起きてくる家族達と、そして自分とが集まるのは朝食の場

 

 

「あら、恭也丁度いいところに来たわね」

だが途中、廊下で呼び止められた。
母さんはなぜか今日はまだ店に出ていないようだった

「一体…?」

「一応聞いておこうと思ったから…アリサちゃんのことなんだけど…。
ここで引き取るって言ったら賛成する? 反対する?」

「は…?」

話を聞き出すと、どうやらアリサが一人暮らしをしていることがわかったようで、
母さんは相手に「ならウチで!」とそのまま言い放ってしまったらしい

「で、その話はアリサには?」

「それが…もちろんまだよ…」

少し表情が硬いのはどうやらそのせいのようだった

「とにかく本人に聞かなくては何も出来ないと思うが…」

勤めて冷静に言い、母さんとともにキッチンへと向かう事にした

 

 

 

キッチンは静まり返っている

まあ…当の本人が黙っているのだから当然なのかもしれない…

「…ご迷惑です」

一言、静かにそれが響いた

「迷惑だなんて…」

俺はそんな母さんの言葉を手でさえぎった

母さんも、アリサが考え無しにそう言ってるわけではないことがわかっているのだろう

「理由を…聞かせてもらえるか?」

「…お金ありませんから…」

…む?

「あのー、おししょ?」

「うむ。レンもそう思うか」

「???」

困惑するアリサの顔を見、ゆっくりと言う

「泊まって行け、ではなく。ここの養子になるか?ということだ」

もっともしばらくは単純に居候、なのだろうが…

「…」

どうやら状況を飲み込めていないらしい

こうして呆けてるときは歳相応の感じなのだがな・・・

「ちなみにもうあちらとは話がつけてあるっぽいぞ」

「…」

ギギィと音を立てるかのように母さんを向くアリサ

「ごめんね〜、つい…嫌?」

謝り倒す母さんにぷるぷるとアリサは首を振った

「…あ、あの…お、お世話になります」

おずおずと下げた頭にそっと手を乗せてやってみる

「というわけで妹五号だな」

「ご、五号?」

俺の言葉にきょろきょろと周りを見たアリサだったが、
どうやら納得してくれたようだ

 

「うう…おさる〜、どっちが妹三号やろな〜」

「泣くな…俺だって泣きたい…」

「ほらほら、恭ちゃんだし…ね?」

聞こえない場所で嘆く三人の声が恭也に届く事はなかった…

 

 

 

「恭也、今日は帰ったら買い物よ」

玄関を出る前、呼び止められる

「…何か重いものでも?」

そうとなれば俺の出番だが…

「違うわよ。アリサちゃんの洋服なんかを買いに行くけど、
話の連中がまた来ないとも限らないでしょう?」

なるほど…

「…承知」

 

 

 

 

帰宅までにどれだけの騒動が待っているか、それを知る術はそのときの俺にはなかった

 

 

 

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あとがき

「原作において日常の描写は数少ないため、
脱線しないように注意しつつ、自分の味を入れれるようにがんばります」

「感想その他はBBSなりメールで」