*警告

本文章は原作至上主義、主人公達の性格が何かずれているものが嫌いな方、
青い果実に嫌悪感がある方、キャラが暴走するのが嫌いな方などにはお薦めしません。
また、ネタがわからない、古いなどと後でそのように文句を言われてもこちらは応対しかねます。

長くなりましたが後編をどうぞ。


 

 

知る術はなかったのだ…。

こんなことが登校先で起こっているとは…誰も。

 

 

 

〜射止めた王子は朴念仁〜第三話

恭ちゃんと一緒後編

 

「あ、犯罪者」

登校した俺を待っていたのはそんな月村の声だった。

「朝っぱらから妙な言いがかりとは、どうした月村」

いぶしがんで視線を向けるが、月村の視線も何かをとがめるようなものだった。

「どうしたって…高町君誘拐犯なんでしょ?」

「…は?」

さすがにその意味を一瞬で理解できるほどの無難な言葉では無かった。

「だって…この前の夜、高町君が小さな女の子を外套をかぶせつつ抱えて、
人目を忍ぶようにして歩いていたってもう女子の間じゃ噂よ? 
幸いかどうかは知らないけど、男子には広まってないみたいね」

…なんということだ。

状況からしてどうやら先日の場面を誰かに目撃されたらしい。

というかそれ以外に噂の理由が無いな…。

「なるほど、俺がその時そこにいて、そのような状況であった事は事実だ」

「え、ここにいるってことは誘拐した上にどこかに監禁!?」

慌てた様子でさらに失礼なセリフを吐いてくれる月村。

「…それは違う。たまたまその子が乱暴されそうになったのを助けてな、
悩んだ挙句に家に連れて帰り、母さんらに紹介をした。ということだ」

「ふーん…なるほど。 わかった、後は任せておいてよ」

そう言ってウィンク一つ、月村は微笑んだ。

「? まさか噂をどうにかしようというんじゃないだろうな?」

下手に口を出されてこじれても困るのだが…。

「心配しない。女の子の噂の回りは速いけど、上書きも速いんだよ」

そしてそれから月村は放課のたびにどこかに消え、
満足そうな表情で帰ってくることを繰り返した。

放課後には『もう大丈夫だよ。ちゃんと事実を伝えたから』とお墨付きを頂く事となった。

結局俺自身は噂があったかどうかも、それが消えたのかも確認する事は出来なかった。

 

 

寄るところも無いので静かに帰路につく。

通いなれた道を黙々と歩くが、見覚えのある二人を見かけた。

なのはとレンと…アリサだ…アリサは朝の私服のままだ。

「連れ立ってどうした」

「あ、おにーちゃん」

「おししょ、お帰りですか?」

「こんにちは。恭也お兄様♪」

…?

「…お兄様?」

「はい、今日から高町家の養子同然ということで、
相応の呼び方をするべきじゃないかなと…迷惑ですか?」

不安そうにこちらを見上げる(背丈の都合がある)アリサの目が潤む。

「…名前でもどちらでも構わない。アリサが
呼びたいように呼べばいい。レンや晶もそうなのだからな…」

「そですねー…ウチはおししょですし…お?」

次の瞬間、飛びついてきたアリサに驚きながらも、その場で耐える。

「で、どうしてここにいるんだ?」

「アリサちゃんを連れてお買い物なんだよ〜。洋服とか」

ふむ…どうやら母さんから予算は受け取っているらしい。

まあ店のこともあるしな、二人に任せたというところか。

「服のことはわからんが、何かと物騒だ。ついていこう」

なのはたちの後ろに立ち、歩調を合わせて歩き出す。

どうやら向かう先はデパートらしい。

…以前晶の女の子らしい服を買った記憶がある。

…いや、思い出すまい。

ずいぶん恥ずかしそうだったからな…。

 

三人が恐らくは年頃らしい(俺にはよくわからんが)会話をしてるうちに目的地に着く。

 

「じゃあ俺はここで待って・・」

「ダメだよおにーちゃん。ボディーガードならちゃんとついてこなきゃっ!」

俺が言いかけたところへ、なのはが珍しく語気を強めて俺に言い放った。

顔はどちらかというと笑顔だ。

…?

「…それもそうか…了解した」

しかしながらその通りではあるので、ついていくことにする。

とは言え、結局売り場のそばの柱に背を預ける形で待つ事になったのだが…。

声から推測するにどうやらレンもなのはもずいぶんと楽しいらしい。

何度も試着室のカーテンが少し開かれ、服が出入りする。

じっと見るのも無粋に思い、ただ視界に入っている、という程度だが…。

その内、どうやら決まったらしく目立った動きが無くなった。

二人は試着室の中を覗いたり動いたり…。

「終わったのか?」

とりあえず声をかける。

「うん、いよいよとーじょーだよ♪」

「さあ、おししょ。心の準備はえーですか?」

…む?

妙に二人とも顔がにやけている。

珍しい事だ…。

そんなに変な服でも選んだのだろうか?

アリサはお笑いを求める感じではなかった気もするが…。

 

などと考えていると、視界の先にあるカーテンが開かれた。

 

同時に俺の思考は数秒、以前の晶とは別の意味で固まったのであった。

 

−アリサ視点

「ほら、アリサちゃん、これどうかな?」

「なのちゃん、こっちも」

「ちょ、まだ着てないですっ」

慌ててカーテンを引き戻す。

二人が選んでくれる服を着、鏡を見る。

万一着替え途中を恭也さんに見られでもしたら…。

考えるだけで顔が赤くなりそう…もしかしたらもうなってるかも…。

ちらっと鏡を見ると、やっぱり赤かった。

「どう?」

「あ、うん」

なのはちゃんの声に正気に戻る。

着せ替え人形の気分だけど、二人は真剣に選んでくれているみたいで、
着替えるのは大変だけどとても嬉しい。

恭也さんは…どう思ってくれるだろうか。

考えるほど、着替える手にも力が入る。

「ほー…これはええんとちゃうかな?」

「そうだね〜」

レンさんと、なのはちゃんの声が着替え終えた私に届く。

…うん。

「きれいだね〜。これならさすがのおにーちゃんも…」

「これで何も思わなかったらおししょは男失格やっ」

…なにやら二人も力が入っているようだった。

そうかな…恭也さん誉めてくれるかな…?

振り返り鏡を見る。

小さな私…。

目を閉じて、きゅっと両手を胸元で握る。

どきどきしてる…怖いの? 

ううん…自信がないんだ…。

私は年下だし…。

何より…未遂とは言え…。

触られた感触は今も唐突に襲ってきたりする…。

「終わったのか?」

ふっと聞こえた恭也さんの声。

…なんでだろう。

もやもやや…怯えも…全部どこかに行ってしまった。

…よし、行こう。

私はなのはちゃんやレンさんに手を振る。

そしてカーテンが開き、視界の先には微笑む二人と、
なぜか硬直する恭也さんがいた。

 

 

−恭也視点

 

「あ…あの、変でしょうか?」

…はっ。

「そんなことは…無い、無いが」

なぜか言葉がしどろもどろになってしまっていた。
それが不安を与える態度だと気がついてフォローしようとするが言葉が出ない。

「ふむ…背伸びして着飾った妹が想像を越えて可愛くなっていたから
思わず嬉しいやら心配やら複雑な気分のおにーさん…ってとこでしょうか」

「妙に具体的だね〜、レンちゃん」

レンとなのはの声も上手く届いていないような気さえする。

ぽんぽんと袖を叩かれる。

「ほら、何か言ってあげなよおにーちゃん」

優しく、なのはがぽそっと伝えてくれる。

…むむ、そうか。

言われてアリサを再び見る。

化粧やそう言ったものは無いが、
軽く直された髪型…そして

光の加減で白にも乳白色にも光って見るドレスタイプの一着。

頬をほんのり赤くして、こちらを見つめるアリサは俺の言葉を全て吸い込むかのような瞳だった。

「…似合っている」

かろうじて、これをいうのが精一杯であった。

「…はい」

だがアリサにはこれで十分だったらしい。

その後は『レディはエスコートされるものだ』という
レンらの進言により家に向けて俺はアリサと並び歩く事になった。

「一応、普段着もちゃんと買ってきました」

「そうか…」

その普段着分を持ったであろうなのはとレンは先に帰っていた。

「明日はどうする」

「明日は…学校に行きます」

一旦なのはの服に戻ったアリサはそう答えた。
今見るとやはり少し窮屈そうだ 。

「うむ。ならば早く寝ねばな」

とことこと音を立てて歩くアリサは時折声を出しそうにし、
そしてそれを飲み込むという動作を繰り返していた。

「あの…」

「ん?」

先ほどの一着の入った袋を胸元に抱え、アリサが口を開く。

「今…お付き合いしている特定の方はいますか?」

「特にはいない。大切な人はいるがな」

アリサに振り向いて言う。

「え…」

妙にショックを受けたような様子のアリサ。

「そう、母さんやなのはや…家族達。
レンや晶もそうだな…大切にしたい相手だ」

アリサの頭に手を置く事でアリサもそうだということを示してやる。

守る剣。それが自分なのだから…。

「…私、がんばります。…貴方の横に立てるように…」

「まあ、よくわからんががんばるのはいいことだ」

後半はよく聞こえなかったが、アリサの顔が明るくなったのでよしとしよう。

明日は…出迎えぐらいは行ってみるのも良いだろう。

 

 

恭也にくっついたままのアリサを見て高町家の女性人の視線が変わったのはまた別のお話…。

 

 

続く?

 

あとがき

 

あああああああ、アリサ難しいぃぃぃ…。

なにぶんもとのテキストが少ないため、会話が安定しません。

基本的に普段はコケティッシュなちびっこ、
シリアス時にはIQ発揮(何)のしっとりモードを予定しております。

何かいい案ありましたらどうかぷりーず(==;

感想その他はBBSなりメールにて