*警告

本文章は原作至上主義、主人公達の性格が何かずれているものが嫌いな方、
青い果実に嫌悪感がある方、キャラが暴走するのが嫌いな方などにはお薦めしません。
また、ネタがわからない、古いなどと後でそのように文句を言われてもこちらは応対しかねます。

今回から作品の方向性がかなり変わってるはずです。
まともな(まともなというのも言葉がアレですが)ラブコメ期待している方は
ショックを受けないようにお読みくださいませ。


 

 

「恭ちゃん・・・骨は拾って砕いてあげるからね」

「言葉としての使い方が違うぞ、妹よ」

それは平凡な一日で終わるはずだった日のことである。

そう・・・日常は些細な事から異常なものへと変貌してしまうのだと・・・
俺はそのとき心から感じたのだ。

事の発端は未だにわからない。

騒動が起きたのは・・・朝目覚めてからのような気がしないでもない。

 

 

 

〜射止めた王子は朴念仁〜第四話

-無駄撃ちされる技の結晶

 

 

 

 

〜その日の早朝〜

日常の繰り返しは体へとその時間を覚えさせる事になる。

その日の朝も彼、高町恭也は普段どおりに鍛錬のため、起床するところであった。

 

(朝か・・・人の気配っ!?)

近く、というより至近距離に気配を感じて意識が覚醒する。

目を見開き右手で小太刀を掴もうと・・・した。

「うぐっ」

情けなく声をあげると同時に伸ばした体ごともう一度布団に伏す事になった。

「・・・?」

仮に命を狙われていたのならこの時点で殺されている。
まあ至近距離によられた時点で俺も未熟という事だが・・・。

特に襲われる様子も無いので落ち着いて状況を把握してみる。

部屋は・・・いつもどおりだ。時計ももうすぐ鍛錬の時間であることを示している。

布団・・・これが異常だ。

何が異常かといえば・・・。

「う・・ん・・」

アリサがいる。

「その一言で終える気なのか?」

さすがの俺もそう自問しつつ、布団をめくる。

アリサは仰向けに寝ていた俺の左脇におり、
動く前は俺が腕枕をする形であったようだ。

よくよく考えれば昨日も夜は一緒に、と夜中当りに半ば泣きつかれた記憶がある。

「ふぁ? おはようございます〜」

「ああ、おはよう」

動いた結果俺の腹部に伏す状態だったアリサが寝ぼけた様子で挨拶をしてくる。

もぞもぞと起き上がるアリサがぼんやりとこちらを見る。

俺はその間に布団を抜け、軽く首を廻す。

「こんなに朝早くからどうしたんですか〜?」

寝ぼけているアリサは前同じような時間に
自分が起こしに来た事にたどり着いていないようだった。

子供は朝が早…いや、やめておこう。

「鍛錬の時間だ、寝ていても問題無いぞ」

装備は問題無い。・・・さて

「恭ちゃ〜ん?」

「今行く。待ってろ」

やはりアリサへの応対に何時もより時間がかかったようで、美由希が障子の前に立っているのが影でわかる。

俺は立ち上がり障子へと1歩を踏み出す。

「まだ眠たいです〜、きゃぅっ」

明らかに口調の違うアリサが悲鳴をあげたかと思うと俺の足に捕まってきた。

「っと。まずいな」

なんとかこらえようと思ったものの、音を立てて障子を破ってしまった。

「何が不味いのかな?」

「ああ、すまないが母さんに障子を破いたと伝え・・・どうした?」

頭の上からかかった声が普段の美由希とは違ったので顔を上げる。
破れたことに驚いて美由希があけたらしい障子の向こう側で殺気立っていた。

ふむ・・・普段からこれぐらい本気だと上達も早いだろうに・・・。

「恭ちゃん、それはどういうこと?」

「それ?・・・アリサだが?」

まったく何がどうしたというのだ。

後ろにはパジャマが下がっていたのかつまずいてこけてしまったアリサがいるだけだ。

「…ああ。起きるのに手を貸せというのだな?」

最近の俺は少し学習をして美由希らの怒る事を減らそうと努力しているので
不機嫌の理由をそう考え、アリサに手を伸ばす。

「あ、ありがとうございます」

どうやら目は覚めたようで、口調の戻ったアリサが手を俺に伸ばす。

「きゃっ」

が、すぐに引っ込めて近くの布団をくるむように引き寄せた。

「む?」

「そうじゃないでしょっ!」

叫ぶ美由希に赤くなるアリサ、よくわからない事ばかりだ。

「どうしてアリサちゃんが恭ちゃんの部屋にいて、
しかも、その・・・下半身が下着だけなの!?」

半ば涙交じりで叫ぶ美由希はますますヒートアップしている様子だ。
そう言えばパジャマがずれ落ちたアリサはそんな格好だったな。

「パジャマにつまずいただけだと思うが? お前も悲鳴を聞いただろうに・・・」

「そんな言い逃れが通用すると思う!? 恭ちゃん、表に出なさいっ!」

びしっと木刀を俺に突きつける美由希の顔が何気に本気なので俺も仕方なく答える事にした。

「よくわからんが、戦えば満足なのだな?」

俺は改めて装備を確認し、一歩を踏み出す。

「恭也お兄様・・・」

「すぐ済むだろう。寝れなくなったならキッチンにいってるといい。
そのうち誰かが起きてくるだろうからな」

パジャマを直した様子のアリサの頭に軽く手を置き、諭すように言う。

「はい。応援してます」

「恭ちゃんっ! 何のんきに目の前で笑ってるのっ!?」

涙交じりというよりすでに目が赤いぞ、美由希。

何に対しての応援なのかはわからないがそういってくれたアリサに
俺は無意識に微笑んでいたようで、なぜか怒る美由希にそう答える。

「わかったわかった」

障子をくぐり、普段鍛錬をする庭に出る。

「恭ちゃんの汚名は私が存在を消すよっ!!!」

何がどうなのかわからないが、美由希は今までで最高の速度で斬りこんで来る。

いつのまにか手には刃落とし済みの小太刀が握られていた。

こちらは木刀・・・ならっ。

「単調だな」

受けずに流す形で美由希の右の小太刀を捌くと同時に間合いを取る。

「小太刀が望みか? ならばそうしよう」

本人がそちらの闘いを望むならそれに答えねばな。

俺は手早く腰から二刀を抜き、美由希に相対した。

「私や晶やレンに対する態度からもしや・・・と思ってたけど
やっぱり恭ちゃんはそういう人だったんだっ!!」

泣きながら(それでも目が滲んでる様子は無い)美由希が突っ込んでくる。

− 御神流奥義之弐 虎乱

そして十字切りであるソレを思った以上の速度で放ってきた。

何か鬼気迫るものがあるな。

(ふむ・・・美由希の中で何かが変わっているようだ)

どこかでそんな思考をしながら俺は基本に忠実にただただ捌く。

「戦わないの? それはつまり弁護する気が無いってことかな恭ちゃん。
みんなに内緒で自分の布団に連れ込むなんて不潔だよっ」

「何を弁護するのかはわからんが、そこまで言うなら・・・。
大体連れ込むとはなんだ。……聞こえていないようだな」

俺としては美由希の強さをしばらく確かめたかったが仕方あるまい。

「ふっ!」

傷はそこそこ癒え、前よりは戦えるようになった俺の膝。
長年の古傷の感覚が未だに残るのが少々気になるがそれを断ち切るように踏み込む。

が、最初の一閃は美由希がなんとか防いだ。
ほう…今日はやはり気迫が素晴らしいじゃないか。

「犯罪者の兄を持ちたくは無いの、わかってよ恭ちゃんっ!!!」

「失礼な奴だな・・・?」

相変わらずわけのわからない事を叫ぶ美由希の構えが独特のものに変化する。来るっ!

「世間に漏れる前に私の中で終わらせるよっ!」

− 御神流奥義之参 射抜

「そうそう終わるわけにもいかんだろう、まだまだな」

− 御神流奥義之陸 薙旋

美由希の、恐らくは美沙斗さんに教わったのであろう高速の突きに対し
俺は自分が信頼を寄せる奥義で答える。

極めたもの同士ならどちらが勝つかはわからないのだが、
今の美由希は冷静ではない上にまだ射抜自体完全に習得はしていないはずだ。

甘い部分を薙旋の1,2撃目で弾くと寸止めで美由希に近接し、勝負を決める。

一瞬送れて風が俺と美由希の後からついてきた。

「速度そのものは速くなったが自己制御が普段より下手だな。どうした?」

俺は嘆息して構えを解き、美由希の不調を責めた。

「美由希?」

俺が顔を上げると美由希は小太刀を投げ捨て、なぜかわっと泣き出した。

しかも子供みたいに顔を上に向けてわんわんとだ…。

「おい?」

「あー、おにーちゃんがおねーちゃんを泣かしてるー」

「あらら、ダメよ恭也?」

俺が声をかけると、普段寝ぼすけのなのはを筆頭に
母さんとフィアッセが気がつけば縁側でこちらを見ていた。

「いや、これは鍛錬の一つでだな、その・・・」

「うわぁぁぁーーーーんっっ。恭ちゃんは妹にここまでして
アリサちゃんみたいな青々とした未成熟な幼女の体を貪りたいんだね!?
せっかく義理の妹っていうある意味最高のポジションでゲット大作戦を
実行中の私に対していつもいつも…でも今日のことでわかったよっ!
恭ちゃんは炉なんだね!? いや、むしろペなんだ・・へぎょっ!!」

「しばらく落ちてろ。騒がしい」

なにやらわめきだす美由希に手刀を決め、黙ってもらう。

まったく騒々しいことだ。しかもなにやら暴走しているようだし…。

 

「へー、恭也がねえ・・・どうりでアタックしても答えてくれないわけだよ・・・。
スクールの皆に相談しちゃおうかな?」

「キッチンの二人が知ったらやっぱりって頷くのかしら・・・」

「おにーちゃん・・・」

「そこの二人は何をそんなに哀れむようにしてこちらを見るのだ?
なのはも妙に嬉しそうな顔をするのははしたないからやめなさい」

俺はその異様な雰囲気にやや飲まれながらも辛うじてそう言った。

「それに美由希さんの一応誤解ですし」

「「「え?」」」

アリサの一言に三人は驚きの声を上げる。

・・・

・・

「なるほどねー。アリサちゃんは安心した?」

「はい♪ ずっと一人だったので・・・」

「確かに師匠って頼りがいありますもんね〜」

「うんうん。おにーちゃん大好き♪」

「そうか…そうなのか?」

俺のつぶやきは食卓に消え、アリサの説明に一部を除き高町家は平穏を取り戻していった。

そして美由希の原因不明の暴走は幕を閉じたかに見えた。

…終わって欲しかったのだがな…

 

 

 

〜数日後〜

その日の俺は静かな午後を過ごしていた。

アリサもなにやら俺に懐いたようになのはと一緒に毎日傍を離れない 。

「日向でまどろむのもいいものだな・・・」

「おにーちゃん、暑くない?」

なのはが俺の左脇にもたれ掛かりながら言う。

「いや、特には気にならんぞ。たまにはいいことだ」

美由希は刀の研ぎのためにでかけている。
たまには自分が行きたいということだったからな。

「お兄様がいいなら…いいんだけど」

なじんできたのか、口調も元々のものに戻ってきた様子のアリサが右脇にいる。

「アリサ、学校はどうだ?」

「んー、やっぱり授業は面白くないけどなのはとかと遊ぶのは楽しい♪」

そう言って微笑むアリサの笑顔は俺も釣られて微笑むのがわかる魅力があった。

…そのときである。

「ん? この殺気混じりの気配は美沙斗さん?」

「よく私のだとわかったね。さすがだよ」

ふっと視線を向けると庭先になぜか小太刀を構えた美沙斗さんがいた。

「どうしたんです? 小太刀を構えたままで・・・事件ですか?」

不安げな二人を部屋に退け、
慌てて小太刀を俺も構え、気配を探る。

もしや龍の襲撃とか・・・。

「いや何・・・君が幼女を囲っているというのは本当かね?」

ちらっとアリサやなのはを見てそんなことを美沙斗さんは言い放った。

「・・・は?」

わけもわからぬままに俺は辛うじてそう答える。

「…事実のようだ」

すうっと美沙斗さんの目が細められ、殺気が鋭利な刃物になって俺に注がれる。

…どうやら俺に襲い掛かる暴走は親に世代交代したようである。

その殺気の質は次元は違えど美由希のソレによく似ていたのでそう思った。

 

「はははは…おとなしく御神の名の中にうずもれるのが良策さ恭也君っ!!」

完璧な徹、さらには貫が俺を襲う。

「ちょっ、こんなところで本気ですかっ!?」

燈篭が斬れ(刃こぼれしない斬撃とは…さすがすぎる)
空気が悲鳴をあげて切れていく。

応酬される奥義の数々。

−御神流奥義之参 射抜

甘い美由希のソレとは決定的に違う美沙斗さんの本物の奥義…やばいっ。

「ちっ!」

−御神流奥義之歩法 神速

俺はとっさにモノクロの世界でそれを回避する。

「そうやってその幼女をさらったりしたのかい? まったく静馬さんといい兄さんといい・・・」

−御神流奥義之歩法 神速

激情が刃に輪をかけて威力を与え、その上技も感情の高ぶりに影響されずに冴え渡っている。

俺が追い詰められるのは時間の問題のような気がする暴走美沙斗さんの連撃が襲い、
空気を裂き。庭木をなぎ払い(ああ・・・盆栽が・・・)、俺の前髪を切り払う。

 

 

「いい加減幼女搾取は止めたまえ・・・」

「だからどこからそーなるんですか!?」

(後でフィリス先生に怒られるのを覚悟で治療を頼みに行こう…)

覚悟した俺は全力で目の前の脅威を制止することにした。

 

そして、今日も高町家の庭先に剣戟の音が響くのだった。

 

 

 

 

続く?

 


あとがき

さて、今回はぶっちゃけ美由希の落とされる前のセリフのためだけに書いたわけですが…

いかがだったでしょうか?

なんかシーンの割に長いのか短いのかよくわからなくなりましたが…

よろしかったら感想やら展開の希望等、お待ちしています